アコギを弾けてこそギタリスト

ツインテールを結成して少しすると世の中はアコースティックギター弾き語りムーヴメントが起きた。

ライヴハウスにはメタルを演奏する枠はないが、連日のようにアコースティックイベントは行われてた。

大阪の戎橋(通称ひっかけ橋)には当時流行っていた19(ジューク)の紙飛行機を歌う奴らが常に5,6人いる状態。

1曲弾いてギターを置き、立ち止まる女の子とケータイ番号を交換しているのが余計に腹が立った。

今思えばただのひがみなのだが、とにかくアコギプレイヤーが嫌いだった。

アコギなんか死んでも弾かんわ!と思っていた。

ある日を境にその考えは変わるのだが。


音楽人生最大の敗北感

元メンバーのマナビッチの家に遊びに行った時、彼のバンドメンバーが2人いた。

我々よりも3つほど若い男女である。

そこにマナビッチが拾ってきたアコースティックギターが置いてあった。

女の子が、

「ヤスさん、何か弾いてくださいよ。」

と言ってきた。

僕も長いことギターを弾いてきた自負がある。

アコースティックギターは弾いたことがないが、要はエレキと同じギターである。

プロ(自称)としてリクエストされて答えないわけにはいかない。

よっしゃ、任せろ!と意気込んで弾いたのが、メタリカのMaster of Puppets

これが驚くほどウケなかった。

そもそもその女の子、メタリカはおろかメタルも知らない。


今だからわかることだが、人がいう「何か弾いて」とは、

『私が知っている曲、何か弾いて。』

なのである。

それが分かっていない僕はあまりの反応の薄さにショックだった。

集客はできないが、それなりにライヴを沸かせる自信があったので。

その時、

「僕も弾いていいですか?」という声が聞えた。

メンバーのもう1人の男の子である。

拙い運指で弾いた曲はGLAYのBELOVED。

右手のストローク、左手の運指、歌声、どれを取っても僕より劣っている。

聴いた瞬間、勝った!と思った。

ところが、女の子が恋する乙女の顔に変わったのだ。

学生時代の初恋の人に巡り合ったように。

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DIOもびっくりの完全敗北である。

自分の底の浅さが身に染みて分かった。

みんなが知っている曲のひとつは常に準備しておかねばならないのだ。

そしてギタリストと名乗るなら、アコースティックギターも弾けなければならないのだ。

それができないとプロではない。


次の日、復讐心を胸に秘めミナミにある三木楽器に行ってアコースティックギターを買った。

それがこちらです。

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今でも現役です。正確にはエレアコ。

アコースティックギターって、バンドと違って一人でやることが多いのでモロに技量がバレます。

あとその人の底がどれぐらいかも。

ごまかしが効きにくい分けっこう大変です。


昔はアコギ弾きは○○〇〇野郎と罵っていたが、訂正します。

1人でステージに上がり1人で演奏をこなすアコースティックギター使いこそ漢です。

電源いらない、アンプ無しでも音デカい、極論を言えばメンバーもいらない。

アコースティックギターは最強の楽器。

今ではその敗北を教えてくれた青年に感謝しています。

彼がいなかったら僕は今でもアンチアコースティックギターだったかも。


全国のバンドマン諸君、やっているジャンルも楽器パートも関係なくアコースティックギターは弾けるようになっておこう。

弾き語りができて損することは100%ないのだから。

そして気になっている女の子の前で、その子の知らない曲を演奏しないように。

経験者からの忠告です。


サポートいただければツインテールの活動がより円滑に動きます! それはつまりジャパニーズヘヴィメタルが動くということだ!