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発達性協調運動症(DCD)児/者が道路を横断する生活行為の特徴

発達性協調運動症(DCD)児/者が道路を横断する生活行為の特徴

何となく気になったので読んでみました。

DCDに関わらず、ASD/ADHD等であっても日常生活における困り事の一つではないでしょうか?

The Lived Experience of Crossing the Road When You Have Developmental Coordination Disorder (DCD): The Perspectives of Parents of Children With DCD and Adults With DCD
Kate Wilmut and Catherine Purcell : Front. Psychol., 19 November 2020 | https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.587042

このグループの先行研究により、DCD児が「車両が接近していることを検知する能力」が低いことが示されています(実験室条件下)。しかしながら、DCD児の道路横断体験の記述においては、自己の道路横断能力とその自信についてはTD児と有意差がありませんでした。

DCD児における「perceptual-motor system」の脆弱性は示唆されていますが、実際の自己認識とは乖離があり、この乖離が道路横断時にリスクを伴う可能性があります。

そのため、この研究では…

1. DCD児を持つ保護者とDCD者のグループの生活経験を記述し、その要因を明らかにすること

次に、子どもは「事故の可能性」について非現実的であるため、リスクをリスクと認識していない、いわゆる「非現実的楽観主義」傾向があるため、どのように自己認識/リスク認識をしているかが重要になります。

2. 事故や非現実的な楽観主義傾向に関する一般的な認識を明らかにすること

3. DCDと他の神経発達障害(ASD/ADHD、LDなど)の併存グループとの比較

以上の3点となります。

で、簡単に結果など書いていきます。

対象

DCD者87例(年齢;M32 範囲17-73)、DCD児の保護者68例(年齢;M 11 範囲6-18)

DCD者の内、ADHDの併存:27/87例

DCD児の内、ADHDの併存:30/68例

評価

道路横断能力の認識(自分/自分の子どもと同年代との比較)

質問形式にて5段階のリッカート尺度を用いて回答されました。

具体的な道路横断時時の行動における頻度

4段階のリッカート尺度(全くしない、時々する、よくする、いつもする)にて以下のような質問項目に対し、回答しました。

「渡る前に見るのを忘れる」

「見ずに走って渡る」

「小さな隙間を見て渡る」

「青信号の前に渡る」

「車の間を渡る」

「渡るのに十分な時間があると思っていたがそうでなかった」

「渡る前に両側を見て渡る」

「渡るために歩く速度を落とす」

「半分まで渡ったところで走らなければならない」

「視界の悪いところで渡る際に、長い時間待ってから渡る」などです。

一般的な事故の可能性(DCD者のみ)の認識/判断

写真に示された事故が同年代に比べて自分に起こる可能性が高いと感じるかどうか。サイクリング中の事故、お風呂での事故、道路横断中の事故など。

道路横断時の状況など

道路を横断する頻度や同伴か非同伴か、過去に車や自転車に轢かれたことがあるか等。

結果です。

なかなか難しい統計分析していますので、間違っていたらすいません。

Exploratory Factor Analysis(探索的因子分析):多数の変数の背後にある少数の潜在因子を特定し、それら少数の因子をもちいてデータを説明しようとする分析手法。

注視行動や視認性に関する危険な項目として

「よく見ずに走って道路を横断する」、「横断中に見続けることはあまりない」、「対向車がよく見えない状態で横断する」が挙げられました。

道路横断時の渡るタイミングに関する危険な項目として

「十分な時間がないと思っている」、「横断時に歩く速度を減速させる」、「時間内に横断するために走らなければならない」が挙げられました。

道端での焦りに関する危険な項目として

「青信号になる前に渡る」、「小さな隙間を見て渡る」、「道端でほとんど待たずに渡ったりする」が挙げられました。

さらに回帰分析もしてます…英語+統計解釈は難しい(言い訳)

注視行動と視認性[F(2,151) = 18.5, p < 0.001, R2 = 0.20] と道端での焦り[F(2,151) = 4.28, p = 0.016, R2 = 0.05] で有意なモデルが見つかりましたが、タイミング能力では見つかりませんでした。

注視行動については、年齢と合併の両方が有意な予測因子でであり、年齢が高いほど、危険な注視行動(見ずに渡るなど)や視認性(車間を横切るなど)が減少することがわかりました。

さらに、DCD+ADHDは、DCDのみに比べ、この因子のスコアが高く、そのためより危険な注視行動を示してました。道端での焦りについては、年齢のみが有意であり、年齢が高いほど道端での焦りが増し、青信号を待たないなどの危険な行動が増加することがわかりました。

次に道路横断能力の認識について

DCD者の42.5%、DCD児の保護者の30.9%が、「自信がある、または非常に自信がある」と評価しています。さらに、DCD者の6.9%が道路を横断する際に「全くあるいはほとんど注意を払わなかった」と答えていますが、DCD児の保護者50%と非常に高い数値となっています。

道路横断での行動が「非常に危険である、または危険である」と回答したのはDCD 者 11%は、DCD児の保護者 19.8%でした。

個人的に興味深い結果はこちら↓↓

DCD(運動障害)があることで、「子どもの運動障害で他の人と違う道を渡ると思う」と回答したのは…

DCD者79.1%(DCD群80%、DCD+ADHD群75%)
DCD児の保護者92.6%(DCD群92%、DCD+ADHD群93%)

さらにその理由として、「知覚の困難さ:距離や速度の判断」、「Lowered awareness(気づき?の低さ):慎重になりすぎたり、完全に安全でないと渡らない」、特にDCD児の保護者からは「注意の低さ:駐車場で車の間を横切ったり、道路に出てしまう」などの回答がありました。

最後に、一般的な事故の可能性(DCD者のみ)の認識/判断について

「お風呂での事故」と「溺死事故」と比較し、「自転車、道路、ケトル、トランポリンの事故」は、より起こりやすいと認識していました。

その主な要因としては、「協調性の問題/難しさ」が挙げられました。また事故が「あまり起こりにくい」と回答した場合には、「事故から身を守るための知識を持つ」ことが重要であると回答していました。

考察です。

道路横断時の大事な行動として、3つ挙げられました。

1. 注視行動と視認性

2. タイミング能力

3. 焦り

1と3に関しては、年齢に伴いリスクが軽減することがわかりました。

DCD+ADHDの併存例に関しては、「注視行動と視認性」の行動とリスク要因に関連性があるため、より行動観察が必要と思われます。

道路横断能力の自己認識については、DCD者やDCD児の保護者は危険な認識を持っていることが示され、先行研究による子ども(当事者)の持っている認識とは乖離があることがわかりました。

大事なポイントは、

DCD者とDCD児の保護者共に「道路横断時の工夫をしている:他の人と違う道を渡る等」ことです。具体的な点は、記載されていませんが、「知覚の困難さ:距離や速度の判断」、「Lowered awareness(気づき?の低さ):慎重になりすぎたり、完全に安全でないと渡らない」等の問題に対して、過去の経験等から対応していることでしょうか。

最後に、「事故や非現実的な楽観主義傾向」について

いわゆる、「自分には起こらないだろう」と思う認識については、DCD者にそのような傾向はありませんでした。むしろ、同年代と比べて、何らかの事故を経験する可能性が高いと判断していました。「More cautious:慎重になりすぎたり、完全に安全でないと渡らない」という傾向からもその特徴が理解できます。DCD者のプロフィールからも事故の経験が21.8%あるため、過去の経験からリスク回避している可能性もあるかと思われます。

「メタ認知」できるってのが大事なんですかね。

大事な生活スキルだと思いますので、個人がどのように理解/認識し行動しているのか確認していく必要があるなぁと感じました。

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