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AM5:00 息をのむ

朝焼けを見ると
いつもあの詩を思う

カムチャッカの若者が

きりんの夢を見ているとき


メキシコの娘は

朝もやの中でバスを待っている


ニューヨークの少女が

ほほえみながら
寝がえりをうつとき


ローマの少年は

柱頭を染める朝陽に
ウインクする


この地球では
いつもどこかで
朝がはじまっている

谷川俊太郎「朝のリレー」



学生の時に教科書に載っていた


世界各地いろんな場所がある中で
なんでカムチャッカなんだろう…?
と思ったのを覚えている


リズムなのか
ことばなのか
わからないけど印象的で
今でも私の頭に浮かぶ




朝焼けの色はなんとも形容しがたい


黒が紺に 紺が青に 青が水色に
だんだんと薄くなった先で
オレンジの光が強く放たれる


ああ、夜明けだ
希望だな、と思う



あの神秘的なグラデーションは
とても人が及べる領域ではない


私は地球の上に立っていて
地球は本当に廻っている
夜はおわり 朝はくる


どんなに苦しく辛く悲しいことがあっても
そこは一切の感情が排除されていて


これまでもこれからも繰り返される事実を
普段は気がつけずにいる事実を
あの光が知らせる

それこそが救いとなる朝がある



ものすごい静寂の中
今この世でここで、たったひとり


私と同じものを見ている人なんて
誰もいない気がする
絶対に、いない


でもその絶対、の考えこそ
思いあがりであり
己の小ささな気がする


本当に、いない?
そんなことないかもしれない
世界のどこかには、もしかしたら、きっと、
その希望が
朝のリレーを思い起こすのかもしれない



あまりに美しいものを前に
見るのをやめるタイミングがわからない
だけど
ここに留まっていることはできないのだ

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