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【2021.1.21追記】自分とゲームの成長を感じるために新作を買う

他言語では実現できない喜びと楽しみ

 「人民の人民による人民のための政治」という言葉で有名な人と言えば、『りんかーん』であるのは、ある程度世界史を学んだ方なら、誰でも分かることであろう。では、「日本人の日本人による日本人のためのゲーム」といえば、皆さんは何を想像するだろうか?おそらく、その結果はわざわざ統計を取る必要もなく、『せんさばんべつ』、『じゆうにんといろ』な答えが返ってくると簡単に想像できる。

 では、私の答えが上記の問いに対する答えとして挙げるなら、「ことばのパズル もじぴったん」と迷うことなく答えるだろう。日本人、いや正確に言えば、日本という文化の特徴的な一つの言語である「日本語」、その独特な特徴を分かりやすく、誰でもとっくきやすいルールで遊べるようにした、まさに日本人の、日本人が作った、日本人(正確には日本語を扱える人だが)のためのゲームと言える。

 その日本人のためのゲームがNintendo Switchで今月4月2日に最新作、「ことばのパズル もじぴったん アンコール」というアンコールシリーズの第2弾として発売された。今回は、この作品に関する感想文という体で、この作品やシリーズ全般について、語っていこうと思う。

 ……なお、念のため、『もじぴったん』とはなんぞや?という方のためにここで概要を書こうとしたが、上記リンクの「もじぴったんとは?」や「あそびかた」を見れば『いちもくりようぜん』なので、ここでは割愛したい。

これをただのリメイクとナメてはいけない

 さて、本作、「もじぴったん アンコール」はその通り、現在バンダイナムコが休眠IP(過去のシリーズが何らかの理由で長期間新作が出ていないIPのこと)で展開している「アンコールシリーズ」という復刻シリーズの第2弾である、すでに第1弾である「塊魂 アンコール」が販売されており、第3弾として「ミスタードリラー アンコール」が今年の6月25日に発売予定となっている。なお、余談であるが、「ミスタードリラー アンコール」のアンコール元となっている作品は、ミスタードリラーの最高傑作と言えるニンテンドーゲームキューブ版の「ミスタードリラー ドリルランド」がベースとなっている。これもまた語りたい作品の一つのため、機会があれば、記事を書きたいものである。

 話が逸れてしまったが、上記で言いたかったのは「基本はリメイク作品」であるということである。本作、「もじぴったん アンコール」も2008年に作られた「ことばのパズル もじぴったん wii デラックス」という作品が元になっている。さらに言えば、この「もじぴったん wii デラックス」はニンテンドーWiiウェアとして発売された「もじぴったん wii」に追加コンテンツと新問題を収録したリメイク作品であるため、本作品はリメイクのリメイクという扱いになる。

 となると、こういう疑問が浮かんでしまう人もいるだろう。「つまり、Wii版のもじぴったんで遊んだ人には不要なものではないか?」と。だが答えはNOである。その最大の理由は、追加された問題数がとんでもない量だから、である。

 「もじぴったん アンコール」は、ベースとして「もじぴったん wii デラックス」が使用されており、その問題数がベースとしてあるのは間違いない。これでまず400問が存在する。まずこれに新モードと称して、「わくわくパズル」というモードが追加されているが、実はこいつの正体、初代アーケード版を制限時間の進み方等を今の基本ルールに合わせた、(ミニゲームやエクストラコースの行き方までしっかりと作り直された)フルリメイクである。これだけで1本のリメイクではなく、実は2本のリメイクとかいう離れ業をやってのけているのである。まずこれで324問が追加されている。そして当然のように従来の問題こと「とことんパズル」にも問題数が増えているのだが、なんとこちらにも「復刻ステージ」と称して、アーケード版の移植作品であるPS版とGBA版のステージを合計60問も加えている。こいつリメイクのリメイクに追加でリメイクとそのリメイクでの追加問題をリメイクしているのである。もう訳が分からない。

 もちろんリメイクだけではない。本作からの新問題も収録されている。まずはアンコールシリーズの兄貴分である塊魂とのコラボステージが30問、さらに弟分であるミスタードリラーから10問、さらに弟になるのではないかと噂されている風のクロノアから5問、アイドルマスターシリーズからは本家、モバマス、グリマス、Mマス、シャニマスから各代表1名の顔をパズル化した特別問題が5問と総計50問の新コラボステージが増えている。しかもこいつらはこのステージでしか使えない専用辞典ありというオマケ付き。ここに特別な問題2問と本作の目玉であるユーザーからマップを募集したステージが30問収録されている。なおこのユーザーステージ、あまりにも第1弾の反響が大きかったらしく、追加用語募集共々第2弾の募集を行っており、これらは後日無料アップデートで増えるため、さらに追加で問題(と用語)が増えることが確定している。これらが合計82問+αで、「とことんパズル」の合計問題数は542問+αとなっている。

 さらにさらに対戦専用のステージもあり、こちらがwiiベースの50問……で終わると思ったら大間違いで、こちらにも過去作のリメイクや新規問題を(告知等一切なく)しれっと加えており、合計が倍の100問に増えている。

 よって、問題のリメイクが様々なシリーズから行われているとはいえ、総問題数はベースとなった450問(一人用:400問、対戦用:50問)から2倍以上の966問(一人用:866問、対戦用:100問)が収録されているわけなのだ。なお、これに追加アップデートを加えると、ほぼ1000問になると思われる。とうとう4桁突入ですか。1問あたり約3.5円って過去問だらけとしても安すぎるでしょうよ!!!

 つまり、アンコールシリーズだから「アンコール」というタイトルに収まっているが中身は「もじぴったん wii デラックス」を遥かに豪華にした「スーパーデラックス」という言葉ですら生ぬるい「ウルトラスーパーデラックス」級の大作なのである。

 なお、参考までに筆者のプレイ状況を下記に示しておく。この通り、まだ5分の1にも満たない172問しか終わっていない。にも関わらず総プレイ時間は早くも50時間を突破しており、全部クリアまでには単純計算で250時間も必要なのである。いや正確に言うと、これから中級者レベルの問題にとりかかるので、さらに時間がかかること間違いないのである。まさに1本で『いつしよう』遊べるというのを体現しているのである。

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自分もゲームも共に進化する、ということ

 ……とまぁ、長々と「もじぴったん アンコール」がただの移植ではないことを述べた訳だが、個人的には、「もじぴったんシリーズ」は幸運にも自分が持っているハードウェアで発売される機会があれば、積極的に買っておくべき作品だとは思っている。それはなぜかというと、このゲームは自分が成長したと実感できるゲームでもあり、製作陣の成長しているなと実感できるゲームだからだ。

 このゲームの最大の特徴は何か、といえばステージではなく、用語を判定する辞典である。アーケード版当時は「76,500語」からスタートした本作は、新作が出るたびに新しい用語が加えられ、現在では「13万語」を超えている。……なお、wii版と本作では上記の表記数は変わっていないが実際には大量の言葉が増えており、間違いなく「14万語」は超えていると思われる。

 例えば原子記号はwii版では『れんとげにうむ』までしかなかったが、本作では『おがねぞん』まで増えているし、流行語大賞の言葉も一部増えている。任天堂用語もwii版ではシリーズすら発生してなかった、『すぷらとうーん』の用語も下記引用のように増えている。ただし、政治には厳しくなったようで、歴代アメリカ大統領や歴代首相などはwii版から増えていない。

 ちょっとわき道にそれてしまったが、これは何を意味しているかというと、収録用語が増えるということは、解答のバリエーションは増えるが決して狭まることはないのため、もじぴったんは新作が出るたびに難易度は下がっているということである。

 こちらも例えをあげると、本作からユーザーからの募集で増えた『すこ』という2文字用語がある。これによって本作からは『す』と『こ』を回り道を経由することなく、直接結びつけることが可能になった。これは実は地味に結構重要な要素で、この結果、『すこーる』や『すこーぴおん』、『すこつとらんど』等を作る難易度も大きく下がっている。

 ただし、この難易度の低下を感じるには、当然のことながら、「それを”ことば”として知っている」ことが前提条件になる。そしてこれは当然ながら前作までには収録されていないので、リアル知識ないしは実際にプレイして偶発的に見つけたことで手に入れる知識となる。前者であれ後者であれ、結果的に普段のプレイで思いついて、扱えるようになれば、それは(日本)人としての知識の発展と同義になる。それを成長と言わず、何を成長というのだろうか。

 一方、初代から数えれば本作ではほぼ2倍のことばが収録されている。それはつまり、今の「もじぴったん」は昔の「もじぴったん」の2倍簡単になっているか、と言われるとそんなことはない。というか、間違いなく昔並み、あるいはそれ以上に難しく感じることすらある。それはなぜか?

 ひとつは収録用語が2倍になったからと言って、最小単位である2文字の単語の組み合わせが2倍に増えているわけではないからである。同音異義語とかも収録されているため、根本的なとっかかりはあんまり変わっていないのである。上記で『すこ』が重要な要素といったのは、それだけ2文字の単語の組み合わせのバリエーションが増える例が稀有なことでもあるからだ。

 だが、仮に2文字の単語の組み合わせがかなり増えてもやっぱり簡単に感じられるのは稀だと思う。そこらへんが難しいのは二つ目の理由があるからに他ならない。それは何かといえば、私たちプレーヤーが成長するのであれば、当然のようにゲームマスター、つまり開発者もまた成長しているのである。

 wii版から新規の追加は少ないながらもやはりあるし、復刻ステージの厳選やユーザーステージのパネルイラストから実際の問題を作っているのも、やはり彼ら開発者だ。なによりも、過去の問題をそのまま使っても問題ないという判断をするための作業だってしているハズだし、金の王冠の得点設定もかなり厳しくしているはずである。ゲームのリメイクは確かに1からゲームを作るよりかは楽かもしれない。しかし、やはり新規要素の追加等をする以上、ゲームバランスを整える彼ら製作者の成長が無ければ、面白さを維持できるわけがないのである。特に「もじぴったん」は追加のことばを増やすだけで難易度はどんどん落ちるので、いかにそれでも難しく感じさせるが、のめり込める面白さをキープするのは、他のリメイクを作るより遥かに大変なことだと思うのである。頭が下がる思いでいっぱいだ。

 以上のように、「もじぴったん」は新作を買って遊ぶことで、新しくリアル知識で覚えた”ことば”で以前より幅広いテクニックを使い攻略する自分の成長と、それらを手に入れてもなお、こちらに悩ませる問題を新たに作り出すゲームマスターたちの成長、両方を他のゲームより強く感じられるゲームなのである。昔の問題を、今の両方に蓄えられた知識を使えば解けるかもしれない。けど、それらを駆使しても、なお昔の問題に新たに追加された目標は超えられないかもしれない。シリーズを複数遊ぶことで強く感じることができる、そのドキドキ感を楽しむ時こそ、自分が「もじぴったん」で一番楽しんでいる瞬間だと思っている。

この嬉しさをいつもいつまでも

 願わくば、今回のアンコールシリーズを機に、もじぴったんが再評価され、再び新しい完全新作が、数年後に出ることを期待したい。この嬉しさを、昔から遊んでいる自分だけではなく、本作から初めて「もじぴったん」を遊んだ人にも伝わってほしいからだ。

 ただ、現状では初週の売上が、(じわ売れゲーとは言え)1万本以下という悲しい状況では今後新作が出るか怪しいかもしれない。だからこそ、もっと多くの人に「もじぴったん」の面白さ、それも複数作品やることで感じられる面白さがあることを、GBA版、DS版、そして本作と買ってきた自分が強く主張することで、変えられることを願いつつ、今回の題材として選んだ。

 幸いにも、本作をやり込み、感想文を推敲している間に、「名取さな」や「にじさんじ」など、比較的大手の『ぶいちゆーばー』が遊んだことで売上が増えていることから、その可能性が高くなってきたのが、救いではある。

 ゲームのなかの『もじくん』もこのゲームは『くそげー』でもなければ、『れとろげーむ』でもないとまだまだ頑張っている。けれど、前者はともかく、後者は今のままでは、もしかしたら、そういう扱いになってしまうかもしれない。そうならないためにも、一人でも多くの人が本作を買い、レトロゲーではなく、定番ゲームという形として、日本語という文明が消えてしまう最後の一瞬まで共に居続ける、そんな作品として、このゲームが自分よりも長く長く生き延びて、未来の日本語を扱う人たちに楽しんでもらいたい。そのような果てのない願望を持ちつつ、今回は筆をおこうと思う。

最後に

 ……おやおや、どうやら「もじくん」たちがこのnoteに遊びにきているようだね。少し不思議な『ひらがな』を本文で見つけたら、ぜひとも本作の「ワードサーチ」機能を使ってみるなり、実際にステージで使ってみてはいかがだろうか?

【2021.1.21追記】そして私の願いは成就した!

 この記事を書いてから年が改まった。実のところ、私の活動にも、この僅かな期間の間に色々あり、このnoteアカウントを今月限りで閉じようと思っていた……。

 だが、この一報を聞いた瞬間、その気持ちは一瞬で吹き飛んだ。というか、この記事はまだまだ残さなければならない新たな使命が生まれたのだった。

 そう、個人的に絶望視していた本作の移植版の発売が決定されたのだ!しかも、発売先はPS版はもちろん、多くの人の念願でもあったスマートフォン版、そして、何よりも、どんなパソコンでも遊べる、「Steam版の移植」が決定したのだった!これで「もじぴったん」は後継機問題から解消されたのだ!!!

 これ以上の喜びがないわけがない。この作品をいつまでも、どこまでも遊べるのだ。ありがとう移植に全力をかけてくれた、もじぴったんチーム!

 さらに、本作の移植に伴い、新たな「ことば」の収録と新ステージの収録が発表された。もちろん、現在発売中の本作でも無料アップデートの2回目が行われる。今度こそ(対戦マップ含め)総問題数は1000を突破できるのか?新たに収録されることばはどのくらい増えるのか?是非とも、期待したいところである。

 改めて最後に、実は皆に隠していたもう一つの「嬉しい出来事」がある。というのも、実は私、ゲーム上では使える文字の種類に合わせて、複数のハンドルネームで活動しており、家庭用やアーケードがメインの作品は「タイトユウ」という名義で活動をしているのだが、

第一弾アップデート後に名前が収録されているのである。おそらくユーザーステージ&ことばも移植されると思うので、是非『ちばにあん』という言葉を本作でも入れてくれると、採用者の一人として嬉しい。

 今後、このnoteで新しい記事を書くかは不明だが、いつかまた興が乗れば、書くかもしれない。では、また、いつか、どこかで……。

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