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東京国立近代美術館「MOMATコレクション 小特集 芹沢銈介と、新しい日々」

先日、東京国立近代美術館で開催されている所蔵作品展「MOMATコレクション(2024.
1.23-4.7)」に行ってきました。

今期のMOMATコレクションでは、普段は日本画を展示する第10室を使って、現在は国立工芸館(旧東京国立近代美術館工芸館)が所蔵する芹沢銈介の作品群を紹介する特集展示が行われており、今回はその感想を書きたいと思います。


はじめに

芹沢銈介とは

芹沢銈介(1895-1984)は、染色の分野でそれまでの伝統的な型染の技術を用いながら、「型絵染」と呼ばれる新たな世界を切り開いた人物で、1957年にはその功績により重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。

静岡市立芹沢銈介美術館HPより

型染と「型絵染」違い

型染は下絵、型彫り、染めの工程を分業で行うのに対して、「型絵染」はそれらを一貫して一人で行います。
それにより、作家は常にその時の感性の赴くままに作業を進められるため、とても創造性に富んだ作品が出来上がります。
それこそが、伝統的な型染との決定的な違いであり、「型絵染」が持つ大きな魅力になっています。

芹沢は、生前に雑誌のインタビューで「型絵染」について以下のように語っています。

その下絵を簡単に薄紙に書いて、型の紙に貼って、これを彫ってゆきますが、私の場合は、この下絵どおりに彫るのではなくて、彫りながら、さらに、いろいろにかえてゆきますから、私の仕事は、最初から染め上がりがどんなになってゆくか、わからないのです。

『暮らしの手帖』第2世紀17号1972年4月より

それでは、実際の作品を見てみましょう。

展示概要

東近美の第10室の奥半分には常設のガラスケースがあり、ここには比較的大きな作品が展示されています。

最初は、暖簾を中心とした作品です。

(右)《木綿地型絵染文字文のれん  天》1965年   
まさに布が空を舞っているかのような布文字の傑作です。

続いて、着物が並びます。

(左)《木綿地藍染いろは文着物》1961年
(右)《文字文地白麻部屋着》1971年
文字文を柄にしたもので、左は平仮名のいろは文、右は9つの漢字を使っています。

奥には、屏風のような大作もあります。

(中央)《ばんどり》1957年
実物はとても立体感のある描写がされており、まるで本物が掛かっているように見えます。

ガラスケースを離れると、今度は和紙を使った作品達が並びます。

今回の特集展示のキービジュアルにもなっている型染カレンダーは、終戦後まもなく制作が始まり、最晩年まで40年近く続きました。

型染カレンダー
10年分(120枚)のカレンダーが展示されていますが、どれ一つとして同じものがありません。

その他にも、扇面や絵本の挿し絵、本の装丁などが続きます。

《型染うちわ絵帖》1971年
右の文字文による月は、とても風情を感じます。
《絵本 どんきほうて》1937年
これは合羽摺に手彩色したものですが、後に型染で再制作されたものが新版として発刊されています。
様々な装丁作品
見終わったら、すぐそこの神保町に直行しようかなと思ってしまいます。

芹沢はいつもデッサンを欠かさなかったそうですが、最後は本人自筆の絵画になります。

自筆画の数々
右下は、屏風と同じばんどり(庄内地方の民具)を描いたものになります。

あとがき

今回、初めて土曜日の夜間開館の時間に行ったのですが、所蔵作品展は休日の昼間でも滅多に混んでいることはないので、夜間ともなれば閑散としているかと思いきや、以外と人がいて驚きました。

トップの写真は帰りがけに撮ったのですが、こんな落ち着いた時間に美術館を後にすると自分が少し大人になった気がしました。

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