ひろしま美術館「コレクション展示」
先日、ひろしま美術館で開催されている「コレクション展示」に行ってきました。
はじめに
ひろしま美術館について
ひろしま美術館は、1978年に広島銀行の100周年記念事業として開館しました。
当時の頭取で初代館長の井藤勲雄氏が、原爆投下後の広島のまちの惨状を自ら目にした経験から、原爆で亡くなった人々の鎮魂となり、残された人々のやすらぎの場となるものと、辿り着いた答えが「美術館」でした。
誰もが気軽に行けるようにと、広島市の中心部にあるこの美術館は、円筒形の本館建物とこれを包み込む回廊空間からなり、その本館建物は原爆ドームを、回廊空間は厳島神社の回廊を想起させるものとなっています。
この美術館が収蔵している作品は、誰もが気軽に楽しめるものとの想いから、日本人に人気の高いフランス印象派を中心に、バルビゾン派からエコール・ド・パリまでと時代を絞って収集が行われ、日本でも有数の印象派コレクションを有しています。
今回訪れた理由
今回は別の目的で広島を訪れたのですが、広島に行ってひろしま美術館に行かないわけにはいきません。
以前に一度行ったことがあるのですが、いつのことかと調べてみると2011年のゴールデンウィークだったようで、実に12年振りとなりました。
この美術館ですが、特別展が開催されている間はコレクション展示だけの料金設定がありません。
そのため、特別展の内容によっては3倍近い料金設定になることもあるため、今回はコレクション展示の期間を狙って行きました。
展覧会概要
今回のコレクション展示はフランス近代絵画だけで約90点が展示されていますが、普通の美術館であれば、これだけで特別展が組めるくらいの充実した内容です。
その中からいくつか印象に残った作品を取り上げてみます。
ブーダン《ボルドー風景》
ブーダンが行った戸外制作での外光表現は、その後に印象派が誕生するきっかけとなりました。
この作品はブーダンによくある構図で、船と人物の正確な描写には目を見張るばかりですが、海面や砂浜などうねりがあるものへの光の当たり方などは、写真では分かりづらいですが様々な色が用いられていて、印象派の気配を感じることが出来ます。
モネ《セーヌ河の朝》
モネを戸外制作に連れ出して外光表現の魅力を教えたのは前述したブーダンでした。
その後、モネは印象派の語源となった《印象・日の出》を発表します。
この作品はそれから25年後に描かれたもので、こちらもモネによくある構図ですが、木々の緑の彩度の違いによって水面に漂う朝靄とその奥行きが見事に表現されています。
シャガール《河のほとり》
シャガールはフジタと同じエコール・ド・パリの画家で、パリのオペラ座の天井画を描いたことでも知られています。
この作品もシャガールによくある構図で、眼下にある街並みとその上を浮遊するかのように人物や動物が描かれているのですが、この作品を見ていると、子供の頃に自分が空を飛んでいる夢をよく見ていたことを思い出し、なんだか共感が止まりませんでした。
あとがき
ひろしま美術館は、フランス近代絵画だけでなく、日本の近代洋画も充実したコレクションを有しています。
これらの作品は、2021年に横浜のそごう美術館で開催された「近代日本洋画の名作選展 ひろしま美術館コレクション」で一度見ているのですが、次はひろしま美術館でとの想いが強くありました。
今回は(行く前から知っていましたが)、新居浜市美術館に貸出中で残念ながら見ることが出来なかったため、次回の楽しみとしたいと思います。
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