1940年(昭和15年)8月に東京から新京(現:長春)に行く方法【後編】

←【前編】もご覧ください


③東京~神戸~下関~(航路)~釜山~京城~奉天~新京

下関~釜山の航路は1日2往復。ココまでの他の航路と比べると頻発と言える。
しかもダイヤが解りやすく、下関発は10:30と22:30と12時間毎である。
また、東京~下関は特急、急行がそれなりの本数存在するので利便性は高い。

どちらに乗船するかは、やはり新京到着時刻から逆算して決定しよう。
新京の会議設定が午後1時であるから、午前中に到着している必要がある。
とすると、急行「のぞみ」の到着時刻が11:42であるので、昼食を摂るには心もとない時間であるが会議後に親睦会にでも参加すればよいので、これに間に合うように行程を組み立てる。

まず、②で使った1023列車の後に、東京23時発の下関行き急行(第7列車)があるので、それに乗車する。
すると、下関には翌日の「21時」に到着する。なんと22時間も列車に揺られるのである。
※2023年現在の東京~下関間は鉄道で5時間の経路である。


ここで1時間半の待機。
現代の感覚で言えば、遅い夕食でも食べようかというモノだろうが、この当時は当然店など開いていない時間なので、ボォっとしているしかないわけである。
ここから釜山行きの鉄道省航路に乗船する。

冬に時期、あるいは台風が近づいていれば揺れるだろうが、それ以外であればぐっすり眠れるだろう。
釜山に早朝到着するが、当然店が開いていることは望めない
おそらく空腹のまま急行列車に乗り換える。

ここからは終点新京まで一直線である。
途中、おそらく安東、奉天で機関車の付け替えがあるだろうか。
新京には11:42に到着する。会議には間に合いそうだ。

結論からすると新京で午後1時の会議に出席するためには
3日前の23:00に東京を出発すればよいということだ。①②と比較して丸一日の短縮である。
また、ここまでの費用は42円91銭~130円47銭と①②より高くなる。

おまけの話)
この経路に関しては
鉄道省(国鉄線) 急行:東京~下関(第7列車)
鉄道省航路 :下関~釜山(第7航路)
総督府鉄道局・南満洲鉄道 急行のぞみ:釜山~新京(第7列車)
と列車番号が揃うようになっている。

同じく、12時間後の
鉄道省(国鉄線) 特別急行富士:東京~下関(第1列車)
鉄道省航路 :下関~釜山(第1航路)
総督府鉄道局・南満洲鉄道 急行ひかり:釜山~新京(第1列車)
も同様である。東京~大陸連絡を非常に意識していることがよくわかる。


④東京~神戸~(航路)~大連~奉天~新京

これも大連~新京が列車頻発の状況から、逆算して算出する。
新京の会議設定が午後1時であるから、午前中に到着している必要がある。

大連発三棵樹(現:哈爾浜東)行きの急行列車(第15列車)の到着時刻が8:00である。次の列車が15:00着と大分空いてしまうので、これで行程を組み立てることにする。

まず、東京駅は③でも使用した下関行き急行の第7列車を、神戸・三宮まで乗ることにする。

神戸正午出航なので、正直なところ時間もないが、折詰、弁当の類は駅で購入できるし、何なら船の中で優雅に昼食を摂るのもいいだろう。

ともかく、大阪商船が運用する「らぷらた丸」に乗船し、大連に向かうとしよう。途中、門司港で半日停泊する。

この航路は、船足の遅いモノと速いモノが混在しているため、確実なところで遅い船に基準を合わせ大連港は12:30に到着するものとする。

大連港で南満州鉄道に乗り換え、新京を目指す。
※実はこれより1本早い列車もあるにはあるが、新京に未明3:30に到着しても、何も開いている店はないだろうし、大変寒いので凍傷になるのが目に見えている。

結論からすると新京で午後1時の会議に出席するためには
5日前の23:00に東京を出発すればよいということだが、今回チョイスした経路では最長期間必要である。

また、ここまでの費用は41円39銭~134円49銭と、日数がかかっている割には三等の場合は③よりも安く移動ができる。

なお、あなたが乗り鉄で、途中の大阪商船行路の足が速い船だった場合、以下の列車がおススメである。

これを使えば、費用は40円59銭~130円49銭と若干安くなるものの、翌日の会議となると新京で一泊する宿泊費がかかることになる。


⑤東京~(空路)~新京

空路はシンプルである。
大日本航空(現存せず)で羽田から新京行きの急行飛行機に搭乗すればいいのだ。
ただし1日1本しかない。
羽田を6:30に出発し、経由地の京城に11:35に到着。
ここで、補給を受け12:50に飛び立つと、新京には16:35には到着する。

新京で午後1時の会議に出席するためには
前日の6:30に羽田を出発
していなければならない。

なお、運賃は驚きの160円(推定)だ。これは現代の58万円ほどに相当する。恐ろしや。でも、出張なら会社がだしてくれるかしらん?


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