予期せぬ質問
質問の募り方が問題
昨年は、講義型の社内教育を10回、行いました。参加者にも発言してもらった方が、モチベーション向上につながるかと思い、小規模で30分の、意見交換型のセミナーを行いました。事前に質問を募りました。問いを「業務委託先との取引で、気になっていることがあれば教えて下さい」として、「業務委託先との契約で気になっていることがあれば教えて下さい」にしなかったのが悪いのですが、以下の趣旨の質問が来てしまいました。
受託した業務を再委託する場合、顧客と再委託先とのスケジュール調整はどうすればいいんですか。
必要な情報を引き出すためのコツを教えて下さい。
取決め書(何の?)や製造手順書の改定をどのように行えばスムーズですか。
委託先の価格の算定方法が不明で、言い値で購入せざるを得ません。どうすればいいんですか。
法務担当にとっては、予期せぬ質問でした。ただ、こちらから質問を募った以上、回答しなくてはなりません。無理やり感がありますが、回答しました。
1 スケジュール調整
契約書の観点では、対顧客の納期と、委託先からの成果物の納期で無理がないようにする、遅延損害金について明記してプレッシャをかけるなどがあると思います。実務面では、
ボトルネックの解消
タスク管理ツールによる進捗管理、アラートの自動発信
定期的な進捗共有会議
法務のタスク管理の事例を紹介したのですが、実施済みであればご放念下さい、という感じです。
2 ヒアリングのコツ
契約書のドラフト起案やレビューで実施していることは
ヒアリングシートの活用
なるべくYes/No questionとするか、選択肢を設定
テキストで回答する質問は、回答例を示す
記入例を添付する
ヒアリングシートの回答で不明な点は、聞きたいことを事前に伝えた上で、直接聞く
しかし、そんなの当たり前だよ!全部やってるよ!と言われたら返す言葉もないです。なので、図書館で質問力の電子書籍を借りて読み、サマリを用意しました。その質問力のサマリをもとに議論したらどうなんですか、と言われ、よく分からないことになりました…
3 取決め書等の改定
「取決め書」は品質取決めのことでした。相手方が、些末なことにこだわって、なかなか先に進めない。手順書の改定が必要といって、時間がかかり、業務の着手がどんどん遅れる。というようなことのようです。質問者が、話しながら、契約書で解決を図る問題ではないですね、と言っていました。他の参加者が、スケジュールをブレイクダウンする、時間がかかる理由を聞いてみる、言われた所要時間を、言われるままに受け入れる必要はない、など、見事に助けて下さいました。
4 価格算定
社内の原価計算の担当者に聞いてみたところ、価格の算定方法を取引先に開示するのはあり得ない、と言っていました。であれば、値下げの戦略としては、「価格の算定方法を要請」ではなく、
相見積を取って、安い業者に発注する
標準価格表を提出してもらう。見積価格が、標準価格から乖離が大きい場合は問合わせる
過去の価格からの値上げ幅が高い場合は、問合わせる
等があると思いますが、やはり
それって法務に聞くことなのか⁈
When life gives you lemons, make lemonade.
現場の、委託先との取引の課題を教えてもらえたことは、良かったと思います。職種を問わず、スケジュール調整、効果的なヒアリングの仕方、書面のスムーズな改定、値下げ交渉については、考えなくてはならないと思いました。
法務とはあまり関係ないことを聞かれて困ったのですが、いつも仲良くして下さる同僚と、やさしいお兄さんのような先輩にお力添えを仰ぎ、とても助けて頂きました。意見交換型セミナーは初めての試みで、難しいものだと思いましたが、助けて頂いたお陰で、アンケート結果は良好でした。一人法務とはいえ、何でも自分でするのは無理です。事後のアンケート結果を伝えたところ、同僚・先輩も喜んで下さり、時には適度に支援を仰ぐことも大事だなと思った次第でした。
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