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「Forêt de Muguet」-スズランの森-


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#うたすと2

 この話は【うたすと2 課題曲】「Bouquet de muguet」から作らせていただきました。
 ぜひ、最初にこの美しい曲を聴いてみてくださいませ。

 では、始まりです。


「Forêt de Muguet」-スズランの森-


 いつからでしょうか。
 聞こえるはずのないスズランの奏に誘われた私は、ただひたすらに、白い小さな花が咲き乱れる森のケモノ道を歩き続けていました。この深い森はプルシアン・ブルーに塗り潰され、黒い木々と、薄白い霧によってデコレーションされています。天空にずっと霞んでいる蒼白く輝く月と、足元の小さなスズランだけが、ぼんやりと辺りを浮かび上がらせているのでした。

―どうして、私はこんな所を歩いているのでしょう?

 ふと足を止め、誰にともなく問いかけてみます。すると優しく風が流れ、足元のスズランたちが言いました。

―どうして、ですって? ふふ…、可笑しい事を言うのですね。あなたは、迷う為にこの森に足を入れたのでしょう? 迷う事の他に、理由なんて必要なのかしら?

 いいえ、私は迷おうなんて、これっぽっちも思ってなかったわ。…いえ、でも、本当にそう? 他に理由を思いつけないのなら、やっぱり私は迷い込む為に、この森を歩いているんでしょうか…。答える事ができずに佇んでいると、影に隠れていたアマリリスが言いました。

―騙されちゃいけないよ、お嬢さん。このスズランどもは見た目だけは可愛らしいヤツらだが、知らずに関わるととんでもない災難を振りまく性悪どもなのさ。いいかい? 私達の親の、“青のアマリリス”に会うんだ。彼なら、適切な助言をしてくれる。必ずあなたを“あるべき場所”に導いてくれるだろう。

 何ですって!? 毒吐き野郎はアンタのほうじゃないのさ! とスズランたちは怒り狂いましたが、アマリリスはどこ吹く風で続けます。

―月を追いかけるんだ。月が、彼の所に連れて行ってくれる。さあ、空を見上げて。

 足下のスズランなんかに惑わされちゃいけないよ、という声を聞きながら、私は再び、歩き始めました。

 ~・~・~・~・~

 そうして、どのくらい歩き続けたでしょうか。
 あれだけ深く暗かった森は開け、ちょっとした丘のような場所に辿り着きました。その頃には霧が雨のように細かく降り注ぎ、月は厚い雲に隠れてしまっています。しかし、不思議な事に、雲の中には星々が現れ、むしろ明るくなっていたくらいでした。その丘の中央で…。川が円形に流れ、それに守られるようにウルトラマリン・ブルーに輝くアマリリスが一輪、花開いていました。
 私は駆け寄り、途中、出会ったアマリリスからあなたを頼るように言われた事を伝えました。

―…そうか、お前は何も理解は出来ていないのだな…。

 私が何も答えられずに立ち尽くしていると、“青のアマリリス”は何かを考えながら、ぽつり、ぽつりと言葉にします。

―…よかろう。では、お前を、戻す。…そうあるべきなのだ、そもそも。そして、こうする事が、私の存在理由でもある、だな…。

 “青のアマリリス”はそう言うと、爽やかな香りで周囲を満たしながら拡散するように砕けていきました。そして、最期には、その場所に1つの球根が残されました。

―さあ、それを食べるといい。そして、川に入るんだ。流れに身を任せて、ぐるぐる、ぐるぐると、回転木馬のように…。そうすれば、お前は、お前が“あるべき場所”に帰る事が出来る…。

 ~・~・~・~・~

 私は、白いベッドの上で目を覚ました。どうやら、生き残ってしまったようだ。スズランは、私の味方ではないらしい。
 目が覚めると、2人の警察官が私にいろいろな質問を繰り返した。…どうでも良い…。適当に返事をし続けた。

 今、この部屋には余計なものが一切置かれていない。花の一輪すら無い。私は、花は好きだ。スズランが好き。でもきっと飾る事を認めてはくれないだろうな。だから、アマリリスでも良い。彼が好きだったアマリリスが、今度は私を永遠にあの森に迷い込ませてくれるだろう。あの森の何処かで、スズランに囲まれて、白く眠り続けている彼を今度こそ見つけて、ずっと2人の時を過ごそう。


(終わり)


 ということで、「Forêt de Muguet」-スズランの森- でした。

 最初に曲を聴き、歌詞を読んだ時、とんでもなく綺麗すぎてコレで別の話に作るのはキッツイな~、と思いました。でも、とりあえず舞台を考えようと思い「天空に月の輝く、深い、暗い、しかし足元は白く輝くスズランで満たされた神秘的な森」を思い浮かべました。そこを1人歩く主人公…。
 うん、なかなか奇麗な景色じゃないか!…と思いましたが、綺麗すぎて話がそこから動かなかったんですよ。

 で、ちょっと出てくる花の方を調べておこうか、と思いまして調べました。…結果…。両方「毒」持ちだったとは!

 そこから一気に話がまとまりました。当初は1つ目はコメディー、2つ目はホラー、最後はファンタジーで夢のある綺麗なまとめにしようと思っていたんですが…。結果的に、まさかの犯罪者が出る事になるとは! しかも殺○犯! はっきり書くのは避けましたが、はい、ヤってます。スズランの花粉で…。


 そんなところで、【うたすと2】課題3曲、コンプリートです~! しかもフライング。やりきった感~
[]~( ̄▽ ̄)~*

 3(+1)話、全部読んで頂いた方、また、この話だけでも読んで頂いた方、どうもありがとうございました。そして…、

 最後まで目を通していただき、どうもありがとうございました。