(詩)「春の雨」

夕方にかけて雨は次第に止むと
天気予報は自然に抗いて
傘を持たずして太陽なき正午を歩む
雨に紛れて
あなたが誰かの背中に寄り添っている姿が
通りすがれば
イヤホンから流れる音を忘れて
聴いた春の雨

桜の花をまた土に帰らそうとして
誰にとっての救いかわからなくなって
慈悲も無く降っていたけれど
傘を畳んだ
桜と同化しようと企んで
整列してゆく髪
花びらのように水滴を垂らして
触れた春の雨

洗い流される花びらを
じっと見つめて
じっと死にぎわに寄り添っても
まだ雨は降り続けて
救いはなく
ただ時間と共に過ぎていく春の空を
モノクロームに色づけて
見えた春の雨

*広瀬凌也

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