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感想:「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考

アート鑑賞の入門としてよくできた本だと思った。

フォービズムに始まって抽象表現主義、ポップアートまで。「自分のものの見方で自分なりに考える」エクササイズと各時代のアーティストが前の時代の常識を解体していく流れが反復される。

近代の美術の流れの説明としては今まで読んだ中で最も平易で分かりやすい。歴史の本ではないし6作家、6作品しか出てこないけど、それが良い。情報が氾濫したら出したら考える本にならない。

説明の前にまず問を出し、「自分だけの答え」を大事にする形式、目に見える花としての作品以上にその背景にある思索を大事にするのも良いと思った。

一方で歴史の話が話がちょっとうますぎた気もする。章ごとにうまいこと革命が起きる流れに正解感が強すぎて、主題である「読者が自分で考えた」答えにどうしても勝ってしまう感じ。「作者が考えたことがだけ正解ではない」ことは作中で十分に主張されているのだけれども、それでも。

「アート思考」というラベルには強く違和感を感じた。「VUCAの時代に自分で考える力をつける」みたいなお題目がどうしてもとってつけたようにしか思えない。誠実な本だと思うのに、いらんキーワードを売りつけられたような。

MoMAのパオラ・アントネッリが、「率直なところ、私はビデオゲームや椅子がアートかどうかという議論には全く興味がありません」と言ったエピソードが引用されているが(賛成)、何が「アート思考か」という議論にはもっと興味が持てない。ましてその内容が「自分なりの探究をする」なら尚更。人の作品は自由に楽しめばいいし、物事は自分で考えればいい。 名前をつけて成功の秘訣みたいに売りつけなくていい。

まとめ。引っかかったこともあるけど、アートを鑑賞する手がかりとしてはとてもお勧めできる。中学の美術のつまらなさを思い出すと確かにこういう話が聞けたらよかったなと思う。大人にはこの後「感性は感動しない――美術の見方、批評の作法」をお勧めしたい。

些末な点:数学を「正解を出す」だけの学問としてアートに対置するのは間違いだと思う。中高のテストだけに絞るならそうかもしれないけど。

殴り書き。なんか偉そうな文になってしまった。

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