第98回箱根駅伝 戦前予想&見どころ

今年もこの季節がやってまいりました。Noteで記事を書いたのもいつの間にか一年前になってしまい、筆不精であることを猛省しております。

さて、今年の箱根駅伝のことについて書く前に、昨年の箱根について軽く復習しておきましょう。

2021年 第97回箱根駅伝 プレイバック

コロナ禍の下での初めての箱根駅伝。沿道での応援が禁止された「静かな」箱根駅伝になり、レース展開にもたくさんのイレギュラーが見られることとなりました。

1区の入りの1kmがなんと3'30と、異例のスローな展開。2区では満を持して東京国際大のY.ヴィンセントが登場し区間記録を更新。3区までで流れを掴んだ創価大は、4区嶋津で首位奪取。5区三上も安定感のある走りで往路初優勝。6~9区まで創価大は後続を寄せ付けない走りで圧倒するも、10区でまさかの失速。ラスト2kmで駒澤大に首位を明け渡し、そのまま駒澤大は2008年以来の箱根優勝を果たしました。それでも超ダークホース・創価大は2位、東洋大は2年ぶりに3位に返り咲き、優勝候補と目された青山学院大はキャプテン不在、山での失速が響き4位に終わりました。

97回箱根駅伝スタート

前回の箱根駅伝で私が強く感じたことがまさに「計算外」でした。コロナ禍の中で合宿が組めなかった大学もあれば、集まって練習ができない時期もありました。そして、日本選手権が12月にずれ込んだことで、各校のエースが箱根にピークを合わせられず、本来の力が出し切れていないエースたちも多くいたように感じました。だからこそ、本来なら陽の目を浴びていなかった中堅校、新興校にもチャンスが到来し、今年はさらに大学駅伝の勢力図は複雑になったように思います。

今年度の箱根駅伝「勢力図」

駒澤大学
言わずと知れた箱根優勝校。大エース田澤(3年)、準エース鈴木(2年)は日本選手権で2,3位。関東インカレでは唐澤(2年)が5000m,10000mの日本人トップなど、その層の厚さを改めて示し続けていましたが、夏以降は主力となる複数の選手にアクシデントが発生し、完璧なコンディションでここまで来たとは言いづらいでしょう。出雲駅伝では失敗が目立ち、アンカー田澤の力走をもってしても5位。全日本大学駅伝では前半出遅れたものの、6~8区の安原(2年)、田澤、花尾(2年)の走りで青学との壮絶な争いを制し、2連覇を果たしました。主力級の選手も徐々に復帰しており、今年も箱根の優勝候補となっています。

青山学院大学
昨年の箱根では苦い思いを味わった青学。「エース不在の青学」と言われながらも、今季は近藤(3年)がエースとして成長し、トラック・駅伝を通じて安定感のある走りを披露しています。また、今年の箱根エントリーメンバー全員が10000m28分台と、驚異的な「総合力」を築きあげてきました。出雲、全日本ともに2位と、今年は勝ち切れない駅伝が続いていますが、長距離適正とピーキングの能力を考えれば、今年も箱根の優勝候補最右翼と言えるのではないでしょうか。ちなみに、今年の原監督のスローガンは「パワフル大作戦」です。

順天堂大学
今年のトラックシーズンに存在感を示し続けたのは、間違いなく順天堂大の三浦龍司(2年)でしょう。5月の日本選手権3000m障害ではラスト1周を前に転倒するも、驚愕のラストスパートで他を圧倒し日本新記録をマーク。東京オリンピックでも「世界に通用するポテンシャル」を存分に発揮し、日本人初の7位入賞を果たしました。順天堂大は三浦の存在が野村(3年)、伊豫田(3年)、四釜(3年)など他の選手の成長を引き出し、今年は全日本大学駅伝でも3位に入るなど、全体の底上げができている印象です。

東京国際大学
大砲・ヴィンセント(3年)を擁する東京国際大は、出雲駅伝で史上初の初出場・初優勝を成し遂げ、勢いに乗っています。昨年は日本人エース・伊藤が抜けた穴をヴィンセントだけでは埋めきれていない印象がありましたが、今年は丹所(3年)、山谷(3年)を筆頭に日本人選手の力が伸びてきており、駅伝強豪校としての基盤が固まりつつあるように思います。優勝候補としては他大学にやや遅れを取っているように感じますが、大きく外す区間がなければ往路優勝の可能性は十分にあると考えられます。

創価大学
昨年の準優勝校。10区で惜しくも取りこぼしたものの、9区まではほぼ完璧なレース展開で他の強豪を圧倒しました。今年はトラック・駅伝ともに突出した成績を残しているわけではありませんが、昨年よりもトラックの平均記録は大きく向上。また、昨年の箱根で強烈な印象を与えた嶋津(4年)、三上(4年)、ムルワ(3年)などが残っており、山登り・山下りにも抜群の安定感を残しているため、今年はダークホースではなくまさに優勝候補として箱根に臨みます。

東洋大学
昨年は日本長距離界のエース・相澤が卒業するも、往路・復路ともに安定感を見せ3位。ところが今年はキャプテンの宮下(4年)、エースの松山(2年)をケガで欠き、大きく出遅れてしまいました。今年は「育成の年」と位置付けるも出雲駅伝では殊勲の3位。全日本では途中のアクシデントもありシード権を落とす波乱の展開となりましたが、注目のスーパールーキー・石田(1年)は2大会連続で区間賞。主力選手も復調の兆しを見せており、若い力との融合がカギを握ることになりそうです。

第98回箱根駅伝 有力校オーダー予想

箱根駅伝に向けて、出場校は事前に10人の区間エントリーを提出しています。ただし、当日の朝、スタート1時間10分前までに、当日変更として往路・復路それぞれ4人まで(合計で6人まで)補欠登録の選手と入れ替えることができ、レース前から各校の駆け引きが行われることになります。ここでは、優勝候補と目される3校(駒澤、青学、順天堂)の区間配置を予想し、見どころも紹介していきます。(当日変更が予想される選手は括弧内太字)

駒澤大学の区間配置予想
往路 唐澤ー田澤ー佐藤ー大坪(鈴木)ー金子(安原)
復路 篠原ー新矢(白鳥)ー赤星()ー山野ー東山(花尾)
一番の見どころは何と言ってもキャプテンでエースの田澤(3年)。12月には10000mで27'23"44(日本歴代2位、日本学生新記録)をマーク。今年はキャプテンに任命された責任感が、学生長距離界のエースをさらに強く、速くしているようです。ケガから復活した鈴木(2年)、復調の兆しを見せる唐澤(2年)、全日本駅伝優勝の立役者・花尾(2年)、期待の新戦力・安原(2年)、篠原(1年)など、コンディションが整えば圧倒的な戦力を抱える駒澤大学。今年は盤石な戦いぶりで2連覇を掴みとれるでしょうか。

青山学院大学の区間配置予想
往路 湯原ー近藤ー太田(岸本)ー関口(佐藤)ー若林
復路 高橋ー宮坂(田中)ー西久保ー中村(飯田)ー中倉
選手層の厚さで言えば歴代最強であることは間違いない今年の青学。選手層が厚すぎるが故に当日に誰を使うか誰も読めないオーダーで、原監督もメンバー選考にかなり苦労したのではないでしょうか。見どころは、今年覚醒した大エース・近藤(3年)、ケガからの復活を遂げた岸本(3年)、山登り志願のルーキー・若林(1年)、全日本の雪辱を誓うキャプテン飯田(4年)など。「駅伝力」をまさに体現したドリームチームで、2年ぶりの優勝に返り咲けるでしょうか。

順天堂大学の区間配置予想
往路 平ー藤原(三浦)ー伊豫田ー石井ー神谷(四釜)
復路 服部ー海老澤(吉岡)ー津田ー荒木(野村)ー近藤(牧瀬)
何と言っても見どころはオリンピアン・三浦(2年)。本職の3000m障害はもちろん、1500m、5000m、ハーフマラソンでも他を圧倒するスピードを誇り、昨年度箱根の雪辱を狙います。当初の予想では1区エントリーでしたが、1区に調子の良い平(3年)がエントリーされていることから、満を持して2区に登場すると予想します。長門監督曰く、注目は平、四釜(3年)の「Wしゅんすけ」だそう。駒澤・青学の2強にひけを取らないポテンシャルと選手層で、2007年以来の学生駅伝優勝を果たせるでしょうか。

紹介した大学の他にも、古豪早稲田、伏兵國學院、8枚看板の明治、復活の中央をはじめ、有力校は多数。今年も出入りの激しい駅伝が期待できるでしょう。
ぜひ今年はテレビの前で、戦国駅伝と呼ばれる熾烈なレースをじっくりとご覧ください。第98回箱根駅伝は1/2(日)8:00スタートです。

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