コピーの文書性~各論解釈のコツ~

ろもっく。こんにちは。
今回は刑法各論(もっといえば法律学)におけるコツを、お伝えできればと考えています。

0.コピーの文書性についての判例

突然ですが、下の判例を見てください。以下要約です。

公文書偽造罪は「公文書に対する公共的信用を保護法益とし、公文書が証明手段として持つ社会的機能を保護し、社会生活の安全をはかろうとするものであるから、……客体となる文書は、これを原本たる公文書そのものに限る根拠はなく、たとえ原本の写であっても、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有する物と認められる限り、これに含まれるものと解するのが相当である。」
写真コピーは「紙質等の点を除けば、その内容のみならず筆跡、形状に至るまで、原本と全く同じく正確に再現されているという外観を持ち、また、一般にそのようなものとして信頼されうるような性質のもの、換言すれば、これを見る者をして、同一内容の原本の存在を信用させるだけではなく、印章、署名を含む原本の内容についてまで、原本そのものに接した場合と同様に認識させる特質をもち、その作成者の意識内容でなく、原本作成者の意識内容が直接保有されている文書とみうるようなものであるから……きわめて強力な証明力をもちうるのであり、それゆえに、公文書の写真コピーが実生活上原本に代わるべき証明手段として一般に通用し、原本と同程度の社会的機能と信用性を有するとされている場合が多いのである」
→写真コピーが上のような性質を備えるときは文書に当たる(最二判S51.4.30)

はい笑笑

みなさんは一読して、この判旨が言いたいこと、より正確には、判旨が行っている説得の論理、が理解できたでしょうか。いきなり何を言っているんだと思うかもですが、これが理解できる、そして同じように使えるということが、そのまま法律学ができるということを意味します。

本稿を通じてそのことを理解していただければと思います。

1.文書偽造罪の基礎知識

まず、前提知識をおさらいしておきます。文書偽造罪には大きく分けて公文書偽造(155条)と私文書偽造(159条)がありますが、両罪において偽造の客体となるのは主として「文書」です。
そしてこの文書が、「公務所若しくは公務員の作成すべき」ものであれば155条が、「権利、義務若しくは事実証明に関する」ものであれば159条が問題になる、という条文構造になっていますね。

では、右文書とはどのようなものを意味するでしょうか。
文書性の要件としては一般に、次の二つだとされています(この二つをさらに細かく分解する学説もあります)。

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