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「今のテレビは面白くないです!」ズームイン朝、午後は○○おもいッきりテレビを生んだ伝説のディレクターが今のテレビ界に問う!何のためにテレビを作っているんですか?齋藤太朗インタビュー最終回!

土屋:『ズームイン』っていうのも、それまでの朝番組の常識を全部裏切っていくというところからスタートしていくわけですよね? 要するに、今までになかった朝番組を作るんだっていう。


齋藤:そう、もちろん。『ズームイン!!朝!』の話でいくと、まず、朝起きたことないわけですよ。


土屋:ああ、自分が?


齋藤:自分が。「朝ってどうなってんだ?」っていうぐらい、朝はよく知らない。よく考えてみたら、朝っていうと、日本中朝だよねっていうのが発想なんですよ。


土屋:ああ~。


齋藤:北海道も九州も東京も、みんな朝は朝だよね。北海道の朝って知ってる? 九州の朝って知ってる? 意外に朝って、当たり前のようで知らないじゃない? だから「今」。

「今」を伝えるっていう。

後からですけど、だから、行く年来る年、毎朝やっているっていうかたち。


土屋:僕は、やっぱりすごく、ある種の哲学的なものだなと思うのは、それまでの番組って、東京がベースにあって、常に東京に戻ってくるじゃないですか? 中央集権的というか。『ズームイン』は、横にこうやって……。


齋藤:そうです。徳光に最初の頃に言ったんですけど「あなたの役目はキャッチャーだからね。ピッチャーじゃないよ、キャッチャーだよ」っていうのを言ったら、彼はそれを非常に納得してくれましたけどね。要するに、全部が、周りが主役で、東京はキャッチャー。


土屋:受ける方だと。


齋藤:でありながら、全軍を統括しているっていう、いわゆるキャッチャー。


土屋:なるほど。


齋藤:だから、そういう意味では画期的だったんですよ。ネットワークもそれでもって、みんなディレクターもうまくいってたのに、つぶしちゃってさ。もったいないことしましたよね。


土屋:そうですよね。でも少なくとも、革命的でしたよね。


齋藤:だと思います。朝をとにかく改革しましたから。朝っていうとね、みんな、なんとなくついでみたいな番組ばっかりで、おまけにスタジオの中でやってるじゃないですか。

だから、おとといの番組だか、今日の番組だか全然わからないっていう。天気もわからなきゃ、何もわからない。朝も夜もない。そんな番組じゃなくて、モロに朝が感じられるっていう番組を作る。


土屋:今の、逆にいうと朝の番組って、昔に戻った感じがしますよね。


齋藤:ねえ、またスタジオになっちゃいましたよね、みんな。


土屋:そうですよね。『ズームイン』の前にやった番組みたいな。


齋藤:そうです、そうです。本当そうです。


土屋:やっぱそうですよね。そのぐらい革命的な。


齋藤:ただし、お金もかかったし、手間もかかったし、すごいですから。お金かかりますからね。


土屋:あと、ディレクター会議っていうのを、システムとしてやったってすごいですよね。


齋藤:そうですか?


土屋:あんな番組、それまでは高校サッカーしかないじゃないですか、多分。


齋藤:はい。


土屋:それこそ本当に『ゆく年くる年』しか、全国のディレクターが一堂に会するみたいなことってないのを、ああやってやったっていうのは。まあ、入った年にだんだんわかっていくっていうぐらいの年齢ではあるんですけど。


齋藤:(笑)。


土屋:それから『おもいっきりテレビ』になったんですか?


齋藤:そうですね、『おもいっきりテレビ』ですね。


土屋:『おもいっきり』も、さっき言った、それまでの昼の番組ではないものを作ろうっていうのがスタート地点になった?


齋藤:そうです。バラエティーショーとかなんか……


土屋:そうですよね。アフタヌーンショーとか、ああいうものですよね、いわゆる芸能界とか事件とか、今もやっていますけど、そうじゃないものを?


齋藤:ファミリー、家庭情報っていうのをやりたかったんですね。健康も家庭情報の中だってことで、天気予報なんかも大事にしましたし。要するに、家庭情報を発信していくっていう。


土屋:家庭の中で大事にすべきものということですか?


齋藤:そう。そうすると、健康っていうのはやっぱり大きいんですよね。


土屋:なかったんですよね、それまで。


齋藤:ないです。「治す」っていう番組はいっぱいありましたけど「予防」ですよね。

「予防」っていう番組はなかったんですね。


土屋:それって、お昼を改編しようと、そうすると、最初に指名なんですかね?


齋藤:僕ですか?


土屋:ええ。


齋藤:そうです。なんだか知らないけど、「お昼を改革したい。ついては、おまえがやれ」と来ました。


土屋:そうすると、まあ、「はいよ」という感じですか?


齋藤:「はいよ」と(笑)。『ズームイン‼︎朝!』もやってますからね、もうえらい大変だったけど。まあ「わかりました」と。


土屋:しょうがないな、と。


齋藤:はい。


土屋:スタート地点は、今までのお昼とは違うものを作ろう、と。


齋藤:はい。だから、VTR主体でもって今までやってましたでしょ? お昼のワイドショー。そうじゃなくて、情報を発信するっていうのを、とにかくメインにしようと思って。


土屋:でも、周りを見ると、芸能情報だったり、事件だったりなわけじゃないですか。それはやらないって決めるんですか?


齋藤:ええ、もう。


土屋:みんながやってるから?


齋藤:ええ。『笑っていいとも!』が、圧倒的に視聴率を取ってるわけですよね。


土屋:はい。


齋藤:特に20代、30代あたりのところを。じゃあ俺は、年を取った人たちの見るテレビっていうのを、楽しめるものを作ろう。そうすると対抗できるだろうっていって、対抗したらば、見事対抗できましたけど。


土屋:なるほど。それでさっきの予防というか、「こういうことをすると病気にならないよ」みたいなことっていうのも、これも発見なわけですよね。


齋藤:そう、やっているうちに。最初は、やっぱりなんとなく健康っていうと、健康情報だったんですけど、ある時、1人のディレクターが「知ってて知らない健康常識」っていう企画を持ってきたんですよ。ご飯食べてすぐ寝ると牛になる。


土屋:って、昔はね。


齋藤:ねえ。ってことは要するに「ご飯食べて、すぐ寝るとよくないんだね」って言ってるっていう。これは健康常識なんだけど、でも実はそんなことはない、と。終わった途端に寝るのはとってもいいし、その場合、それじゃあどうするかっていうと、右下にした方が胃袋が実は右に流れるんですね。


土屋:なるほど、スムーズに。


齋藤:だから、そういうかたちでもって横になるというのはいいので、すぐに寝るのはいいんですとか、例えばそういう情報っていうのをやったんですよ、最初に。


土屋:結構ブルーベリーとかキウイとか、いろんな物をスーパーから時々なくすみたいなことがあったじゃないですか。


齋藤:ああ、そうでしたね。なんかありましたね。だから、お客さんがそれだけ乗ってくださったってことですよね。これを食べておけば、こういうことが防げますよ。これを防ぐためには、これを食べた方がいいですよっていうのをやると、それが売れちゃうわけでしょ? それはまあ、ありがたいことですけど。


土屋:そのスタートには、やっぱり他がやっていないことをやるんだっていう。


齋藤:それはもう絶対的に。


土屋:だからやっぱり、最初、その中には、視聴率を取るっていうことは、もうやっぱりすごく大前提。


齋藤:そうです。それはもう絶対、大前提。事実、本当『笑っていいとも!』と、時々ですけど、同率までいきましたから。


土屋:そうですよね。トータル通して、やっぱり視聴率を取るとか、見てる人に喜んでもらうとか、いろんな言い方があるじゃないですか。齋藤さん的には、何を一番大事に、テレビマンとしてされてきたっていう。


齋藤:結局、見てる人に役に立つテレビっていうのかな、それがまず第一ですね。ということは、いくらいいことをやっても、お客がいなきゃね、意味がないと。


土屋:そうですよね。見てる人がいなかったら、いくらいいことがあっても。


齋藤:そうです。したがって、視聴率っていうのは、結局、見てる人の数が多いということですから。いいことをやるんだったら、大勢の人に見ていただかないと意味がない、と。したがって視聴率っていう、そういう考え方ですね。


土屋:なるほど。

今のテレビを作っている人間たちに、何か言いたいこととか、そういうものって。


齋藤:「テレビが一体、何ができるんだろう」っていうのをもっと考えてほしい気がしますね。右も左もみんな同じじゃないですか? チャンネルを変えてもね、「あれ? さっきの見てんのかな?」って、わかんなくなっちゃうみたいな。

そんなんじゃなくて、やっぱり独創性もあるし、それと同時に、やっぱり視聴者に役に立つ。役に立つっていうのは、だからさっきもおっしゃったように。


土屋:そうですね。泣かすことも、喜ばすことも、笑わすことも。


齋藤:はい。情報をただ流すとか、人の悪口を言って笑ってるとかって、そんなんじゃなくて、もっとちゃんとしたものを持っていないといけないなと思いますけどね。だから、面白くないですよね、今のテレビね。

「作る」ってことをしてないから。「作る」っていうのは、ドラマしかないんですよ。ドラマは作ります、確かに。ということと同じように、あらゆるものをやっぱり「作る」っていうところで、もっと努力しないといけないんじゃないかと思いますけどね。


土屋:わかりました。ありがとうございます。


齋藤:いえいえ、どうも。


土屋:すごく今の人たちにも聞かせたいと思いますし。


齋藤:ありがとうございます。


土屋:お話が聞けて本当によかったです。ありがとうございました。


齋藤:ありがとうございました。

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