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【5日連続!佐野元春40周年記念特集】 DAY5:新しい時代の音楽の在り方を求めて

 今年、デビュー40周年を迎え、タワーレコード「NO MUSIC , NO LIFE」のポスターに登場するなど、何かと話題の佐野元春。10月7日には40年のキャリアをまとめたベスト・アルバム『佐野元春グレイテスト・ソング・コレクション 1980ー2004』と『ジ・エッセンシャル・トラックス 佐野元春&ザ・コヨーテバンド 2005ー2020』がリリースされる。そこでTV Bros. note版では「佐野元春ウィーク」と題して5日連続で佐野元春のインタビューを配信する大特集を組むことになった。

【佐野元春40周年記念 ベスト盤2パッケージ 2020年10月7日 同時発売】

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 佐野元春インタビューの最終日となる本日は、メジャー・シーンで活躍しながらも一貫してインディペンデントな姿勢を貫いてきた彼の、その強靭な意志に触れてみたいと思う。早くから自分の楽曲の原盤権を自らの手で管理するようになったのを皮切りに、90年代半ばにはいち早く自身のウェブサイトを開設し、おそらく国内のメジャー・アーティストとしては最初に楽曲のインターネット配信にも取り組んだ。そうした数々のチャレンジは業界を震撼させもした。なにしろメジャーのレコード会社は、CDのセールスが減少することを懸念して、インターネット配信やサブスクリプション・サービスへの参入を推し進めたのは、わりと最近のことなのだ。そして2004年には自身のレコードレーベル、DaisyMusicを設立。まさに独立独歩。ロックだな、そう思わざるを得ない。

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自分のレコードレーベル、DaisyMusicを設立

ーー佐野さんはメジャーのレコード会社を離れて、2004年に自分のレコード会社、DaisyMusicを設立します。

「時代に合ったレコードレーベルが必要だった。1995年にインターネットが民間で使えるようになって、僕はすぐにドメインを取り、自分のサーバーを立ち上げた。これが社会を変えるという直感があった。音楽ビジネスもそう。インターネットがそれまでの音楽スタイルを変えると思った。メジャー・カンパニーは新しい動きに素早く対応できないので自分のレコード会社を作ろう。そう思った」

ーーより自由な創作活動と時代に即応した音楽の届け方を実現するために、自分のレコード会社が必要だった。

「それに、自分のレコードの発売スケジュールは自分で決められる。早く新作を出してくれと、せっつかれることもない(笑)」

ーーアメリカでは今やパッケージとしてのCDは発売されない方向に進んでいるし、日本もいずれそうなっていくのかもしれません。ところが佐野さんは、ダウンロードや音源・映像のネット配信に積極的に取り組む一方で、CDだけじゃなくアナログ盤など様々な形態で作品を発表しています。2018年にリリースした『THE BARN』のデラックス・エディションは、アナログレコード+Blu-ray+DVD+写真集がパッケージされた豪華盤でした(今回のベスト・アルバム2種はCDのみ)。

「ダウンロード・サービスが主流になったとはいえ、アルバムのアートワークを含めたパッケージは大事だと僕は考えている。なぜなら、僕は60年代、70年代のアルバムの素晴らしい音楽だけじゃなく、素晴らしいアートワークに触れて育ってきたから。僕のファンも、その価値を知っている」

ーーサウンド作りにしても、バンドのオーガニックなサウンドやグルーブを重視する根本的なやり方は変えていないように思います。

「僕はバンドサウンドが好きだ。バンドがスタジオに集まって音を鳴らす。誰かがビートを刻んだらそれに合わせてギターがリフを弾き、僕が叫び始める。それが素晴らしいんだ」

2枚の最新ベスト・アルバム、そしてこれから

ーーそれを変えるつもりはない?

「当分はね。今回リリースする2枚のベスト盤のジャケットにも、今までのバンドの名前を明記してある。エピック時代のベスト『佐野元春グレイテスト・ソング・コレクション 1980ー2004』には"THE HEARTLANDーTHE HKB "、『ジ・エッセンシャル・トラックス 佐野元春&ザ・コヨーテバンド 2005-2020』には“THE COYOTE BAND”。僕の歴史は常にバンドと共にあった、ということを示した」

ーー現在のバンドであるザ・コヨーテバンドは、ひとつ若い世代のミュージシャンの集まりで、「オルタナティブ・ロック以降のモダン・ロックをやるならこのバンド」とおっしゃっていました。で、そのザ・コヨーテバンドとの音源をコンパイルした『ジ・エッセンシャル・トラックス 佐野元春&ザ・コヨーテバンド 2005ー2020』を聴いて思ったんですけど、DISC TWOの中盤から佐野さんの社会に向けた視線が強く反映されているように感じたんです。

「そうですか。僕の視線というかバンドの表現だろうね。コヨーテバンドは同じ時代のどのバンドよりも多様性があると思う」

ーー新曲「エンタテイメント!」が収録されているのもファンにとっての嬉しいプレゼントです。

「僕らの新しいレコード。気に入ってくれたら嬉しい」

ーーこうして新曲が届けられたんだから、次はオリジナル・ニュー・アルバム。それを期待していいですか?

「はい。今はライブができないので、時々バンドと会って、次のアルバムのための新曲を試している。新しいアルバムは来年ドロップできればいいなと思っている。それと、オンライン・イベント『SAVE IT FOR A SUNNY DAY』というのをやっていて、毎月1タイトル映像配信をしているので、ぜひチェックしてほしい。収益はコロナ禍で困窮している音楽制作者たちに回していく循環型のオンライン・イベントなので、ウェブサイトをチェックして、ぜひ参加してください」

<DAY5 了>

佐野元春(さの・もとはる)プロフィール
1956年、東京生まれ。1980年、レコーディング・アーティストとして始動。83~84年のニューヨーク生活を経た後、DJ、雑誌編集など多岐にわたる表現活動を展開、1992年、アルバム『スウィート16』で日本レコード大賞アルバム部門を受賞。2004年に独立レーベル「DaisyMusic」を始動し現在に至る。代表作品に『サムデイ』(1982)、『ビジターズ』(1984)、『スウィート16』(1992)、『フルーツ』(1996)、『ザ・サン』(2004)、『コヨーテ』(2007)、『ZOOEY』(2013)、 『Blood Moon』(2015) 、『MANIJU』(2017) がある。

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