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鶴は千年、亀は万年、スチャダラパーは30年! 「シン・スチャダラ」大作戦!【無料記事】TV Bros.note版スタート記念企画③

デビューから30周年という大きな節目を迎える今年、新作「シン・スチャダラ大作戦」をリリースしたスチャダラパー。デビュー当時はハタチそこそこだった3人も全員50代を迎え、益々もって意気軒昂! 新作についてはもちろん、30周年を振り返っていただきつつ、話はどんどん脱線していきますが……それでもずっと読んでいたいモンスター級の余談をどうぞ!
 

取材・文/高木“JET”晋一郎

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ねえ、テレビブロスってまだあったんだね〜(Bose)

――発売中のテレビブロス総集編号でもお話を伺っておりますが、スチャダラパー(以下SDP)史上初めてメディアに掲載されたのがテレビブロスの’89年5月20日号、そしてその後SDPには連載「ゴキ足のダンナ」も8年にわたってご執筆いただいていたという(1994年~2001年)、SDPとは縁の深いブロスでございます。


Bose 誌面でも言ったけどさ、ブロスってまだあったんだね~。

――縁の深さアピールしたのに(笑)!


Bose いまってコンビニの雑誌売場も狭くなってるせいか、あんまり見かけないなって。テレビ雑誌も読まなくなっちゃたし。

――今後はこの記事のようにWEBとも連動していきますので、ご贔屓の程を。ブロスに初登場されたのは31年前になりますね。


Bose まだ『スチャダラ大作戦』(’90年リリース)でデビューする前だね。今年はそのリリースから30周年なんで、今回のニュー・アルバムのタイトルを『シン・スチャダラ大作戦』と名付けて。


SHINCO 『シン・ゴジラ』的なイメージでね。


Bose なんにも許可取ってないけど。


SDP ハッハッハ!


ANI まあ、俺が『シン・ゴジラ』ちょろっと出演してるからギリギリダイジョブじゃない? しかし30年……経たね。この前“あれ……いまの俺の歳と美空ひばりが亡くなった歳って一緒じゃん”ってことに気づいた。


Bose そこと比べるなら、ホントはANIも“お嬢”ぐらいの貫禄を出さなきゃいけないのに。


SHINCO じゃあ“オニイ”って呼ぶわ(笑)。


――せめて呼び方だけ(笑)。


Bose 新曲のスチャダラパーからのライムスター「Forever Young」で、“さながら『まつり』以降のサブちゃん”って歌詞あるんだけど、北島三郎が「まつり」を出したのって48歳のときなんだよね。だからもう年下じゃん!それなのに何あの貫禄!って(笑)。

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――その「Forever Young」ではライムスターのコラボという、ファン感涙のタッグが実現しました。


Bose ライムスターとのコラボはホントにスムーズ。ライムスはユーモアはもちろんだけど、非の打ち所のない賢さと真面目さがあるし、その上キャリアを積んでも努力を欠かさないっていう。比べてもらうこともあるけど、実は僕らとは真逆の存在(笑)。


ANI こっちはどうサボるかをまず考える(笑)。


Bose ライムスターって定期的に集まって作業したり練習する日を決めてるらしいじゃん。そういう社会性、僕らに無いもん(笑)。繰り返しの練習とか出来ないじゃん?


ANI 俺らもやるか!


SHINCO やるか!


Bose おまえらが言うな(笑)。


SHINCO でもリハーサルスタジオみたいな3密はいま禁止だからね〜。


ANI 残念だな~。


Bose す~ぐ先延ばし、す~ぐ言い訳(笑)。でもライムスターも結成31年目でしょ。経たよね、お互い。


SHINCO 経たといえば、今回収録した「セブンティーン・ブギ」は、笠置シヅ子の「ラッパと娘」(1939年リリース)をサンプリングしてるんだけど。


ANI 若い子が聴いたら「SDPが17歳の頃って、こういう曲がかかってたんだ」とか思うのかな。もはや世代が違い過ぎて。


Bose “昭和”って枠でガサッとひとまとめにされて(笑)。それに乗っかってこっちも“僕らのデビュー当時はまだ東京タワーも立ってなくて”とか、より嘘を強くして(笑)。


SHINCO 最初のテレビ出演をみんな街頭テレビで見てましたとか(笑)。


SDP ハッハッハ。


――テレビといえば収録曲の「ヨン・ザ・マイク feat. ロボ宙&かせきさいだぁ」は、テレビ東京「フォーカード」のED曲でしたね。


Bose あの番組がかなりどうかしてて、すっごい面白かったんだよね。監督の飯塚貴士くんのキャラも最高で、期待を超える逸材だった。


ANI 住んでるのは北関東だっけ?


――茨城県の牛久ですね。


Bose その実家の納屋で、テレ東の深夜レギュラー番組を1人で作るっていう。


SHINCO 納屋でぶつぶつああでもないこうでもないと1人で人形劇作ってて。


Bose きっと親御さんは“あの子ずっと家を出なくてどうしたのか……”って思ってて……。


SHINCO そしたら息子の名前がテレビから流れてきて、レギュラー番組を作ってたっていう。


Bose 夢あるなー!って思うよね。


SHINCO 言うたら、ロバート・ロドリゲスだよね。

街の変わり者かと思いきや、実は密かに人々を救っている50代の「少年仮面ライダー隊」


―――7,000ドルで『エル・マリアッチ』を手弁当で作ったら、それが世界的な賞を獲得して……みたいな。

Bose それを世界が待ってたという。だから勇気をもらったもん。変わり者が世界を変えるっていうのに。今回のアーティスト写真の「少年仮面ライダー隊」も、実はちょっと繋がってるんだよね。3人で映ってる場所は、「仮面ライダー」の劇中で本郷猛が住んでたマンションなんだけど。


ANI “そこで本郷猛を待ってた少年仮面ライダー隊が、連絡も無いまま中年になってしまった”というのが、今回のシチュエーション。


SHINCO しかも「まだ待ってる」。


SDP ハッハッハ!


Bose それで「本郷さんから連絡無いね〜」とかって50代のおじさん達が近所をブラブラしてて、 街の人からは「いい歳してなにやってんだか……」って白い目で見られてる……んだけど、数十年振りに本当に怪人が出てきちゃって、人知れず傷つきながら戦ってたり、誰も気付かないところで町を救っちゃったりしてるっていう設定。自分たちの活動は、それに近いものがあるんじゃないかなって。

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――街の変わり者かと思ったら……。


Bose  実は救われてる人も若干いたりするかもっていうね。君も、そういう少数派でしょ?


――はい。お陰様で救われた上に、こうしてインタビューまでさせていただいて。


Bose その意味では、全体のテーマは“変わらずやってる”“まだやってる”ってことだよね。でも、自分たちでも近所で「あの変な人」って言われてる自覚はある。そして、その筆頭は僕らの中ではかせきさいだぁ。


ANI いま『a.k.a.』があるんだよね、かせき。


――「as known as、またの名を」ですね。


Bose かせきさいだぁ a.k.a. かせ山逹臣。かせきと山下達郎と細野晴臣が合体した別の人格。かせきが「ちょっと呼んでくるから」って舞台降りたら、「いや~どうも」って出てくるパターン。


SDP ハッハッハ!


SHINCO 怖!


ANI オルター・エゴ。RZAとBOBBY DIGITALみたいな。

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――ウータン・クランのプロデューサー、RZAの別人格ですか。例えが微妙に古い。


Bose Shock GとHumpty Hump的な発想で。


――DIGITAL UNDERGROUND。もっと例えを古くしないで下さい(笑)。


Bose 「それ、かせきさいだぁでは出来ないんだけど、かせ山逹臣なら……」っていう線引きが、かせきの中であるんだよね。


SHINCO 「知らねえけど!」としか言いようがない(笑)。


ANI でも昔からずうっとああいう人だからね。


Bose 「変わってる」が変わってない(笑)。


SHINCO 「変わってる」の幹が太い(笑)。


ANI 結局「そういうヤツが最後に残る」。


SHINCO 出た、Kダブ(注:上記ANIのセリフはK DUB SHINE「ラストエンペラー」の一節」)。


ANI そこでかせきとKダブが「(トム・ブラウンのマネで)合体!」ですよ。


SDP ハッハッハ!


ANI 接点全然無いと思うけど、会ったら意外と話合いそうだね(笑)。

俺らが勝手に離れたり寄ったりしていたけど志村けんさんはず〜っと変わらずコントをやってた(ANI)


――今回の「シン・スチャダラ大作戦」は、“変わってない”んですよね。オモロいサブジェクト、ナンセンスかと思ったら辛辣な風刺、ルーズにもタイトにも展開するBoseさんとANIさんのラップと掛け合い、SHINCOさんのタフなビート……つまりSDPの王道が形になってるし、それはデビューからずっと変わらないことで。


ANI 時事ネタっぽくなっちゃうけど、志村けんさんが亡くなったじゃない(インタビュー収録は4月1日)。でも志村さんはず~っとコントをやり続けてたわけで。

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――デビュー作『スチャダラ大作戦』収録の「ちょっとだけYO」では「タブー」が使われていたり、「GET UP AND DANCE」の「ニンニキニキニキ」や、「ついてる男」の「ケンちゃんポーズで きめ!!!」のように、ドリフに対するオマージュはSDPには欠かせない要素ですね。


ANI いま1日1放送分、「8時だョ! 全員集合」見てる(笑)。


Bose さすがANI(笑)。


ANI 俺ら世代だと、中学ぐらいで「オレたちひょうきん族」に行って、また「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」とか「だいじょうぶだぁ」を見るようになって、「ダウンタウンのごっつええ感じ」に流れて……みたいに、勝手に志村さんに離れたり寄ったりしてるけど、その間、志村さんは変わらずにず~っとコントやってたっていう。


Bose で、どの番組でも“ひとみばあさん”やってる(笑)。


SHINCO いしのようこが優香になって、優香が磯山さやかになっても、「おとうさん!」っていう構造のコントは変わらないっていう。「志村でナイト」で、足立梨花と志村さんで飯食ってるときに、足立梨花のスマホが頻繁に鳴って、それを志村さんが注意するんだけど、スマホが鳴るたびに志村さんが屁をこくっていう(笑)。


ANI で、志村さんの屁の音がどんどんデカくなるっていうループ(笑)。


SHINCO スマホと足立梨花に変わってるだけで、やってることは「ドリフ大爆笑」でもあったぞ、それって(笑)。でもそれがいいんだよね。


ANI “そこがいいんじゃない!”だよね。


――「スチャダラ大作戦」にも「シン・スチャダラ大作戦」にも登場する、みうらじゅんさんの名言ですね。


Bose そういう引用も変わらない(笑)。余談だけど、変わんないといえば、せきしろのツイッター知ってる?


SHINCO え、なんかやってるの?


Bose 「100日後にカラオケボックスをオープンする荒井注」。


SDP ハッハッハ!


Bose もうくだらなくて最高。だって“カラオケ・ボックスの扉が狭くて、機材が入らなかった”ってオチは全員知ってるし、まだそのエピソード擦るんだ、って。


SHINCO あのエピソード好きだよね~。せきしろとか天久(聖一)さんとか。


――せきしろさん、去年ぐらいにあのカラオケ・ボックスの廃墟へ行って写真撮ってましたね。


SHINCO 聖地巡礼(笑)。


Bose バカじゃないの(笑)。ず~っとあのエピソードで遊んでるでしょ。でも、うちらもよくよく考えたら、同じようなもんだよね。どんなサブジェクトに対しても、真面目に見せてフザケてるとか、誰も突っ込まないとか、スカすとか、そういう自分らの好きなスチャダラパー的さじ加減とは変わらないから。


SHINCO 言うたら「荒井注のカラオケボックス」を切り口を変えて延々と擦ってるだけ(笑)。


Bose 手法や内容は変わったとしても、面白いと思う方向性とか、捻り方とかは一緒だもん。


SHINCO 「はい出ました! SDPのお得意のやつ!」みたいな(笑)。


Bose なるべくそれを上手に表現出来るようにっていう努力はしてるけど、結局根本の部分は変わらないっていう。いよいよ過去に言ったこと忘れてて、もう1回言っちゃてるときもあるし。


――過去のご自分たちのリリックの引用も今回のアルバムの肝かなと思ったら、じつは気づいてなかった部分もあったという(笑)。


Bose もちろん意識的に引用もしてるし、言ってないとみんな忘れてるでしょ?っていう先回りもあるんだけど、中には指摘されて……無意識で引用しちゃってんだ!って(笑)。


SHINCO 「つるピカハゲ丸」の、のむらしんぼ先生が全く同じ内容の4コマを無意識で書いたことがあるって。


ANI 長期連載だから。


SHINCO 担当に「先生!これ同じネタです!」って(笑)。


――天然で漫☆画太郎先生のループネタを(笑)。


Bose でも僕らもあるよ。「スゴいこと思いついた!」って興奮して話したら、「それ、前もやったよ」って(笑)。


――でも、それも志村さんのコントと一緒で、王道があるってことだと思いますね。


ANI だから、俺らもファンが寄ったり離れたり、飽きたり、新しいファンが生まれたりするっていうので30年だからね。


Bose そうそう。だから機会があったら「とにかくパーティを続けよう」って言っとかないと。


ANI 「このメンツ このやり方」って言っとかないと。


Bose で、志村さんにおける大悟みたいな感じで「またおんなじこと言ってんぞ!」ってBIM(OTOGIMANASHI'S。Boseと「Be」を制作)とかに言われたいね(笑)。

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椎名桜子や横尾忠則見習って宣言しちゃいますか(SHINCO)

――では、30周年を迎えたSDPのこれからを伺いたいのですが。


Bose なんだろうねえ。今回のアルバムだと“その日その時”みたいにお題に対して一生懸命作ったりは大変だけど面白い、自分達のライブにむけて少しずつ曲を作るのもペースとしてはちょうど良くて、なんだかんだ新しい切り口を探して試行錯誤してるうちに、あっという間に5年ぐらい経っちゃうからね。それに「ウン年後にはこうなってやる!」みたいな、大きい打ち出しをするのがSDPは苦手だし、言うと僕ららしくも無いかなって。逆に言い出すとしたらいっそ作家宣言とか?


SHINCO 「ただ今処女作執筆中」。


――椎名桜子! 古い(笑)。


Bose ANIは画家宣言とか。


SHINCO 憧れの横尾忠則も画家宣言してるし。


Bose あれも、あえてそう言わないとデザインの仕事ばっかりになっちゃうからだよね。だからANIもラップの仕事を頼まれちゃうから画家宣言だよ。


ANI アーティスト宣言するか。


Bose 怖さしかねえ(笑)! あとはグラフィティ書いて捕まるとか。


SHINCO 「東京湾で鼠書いたの俺!」(笑)。


Bose 「俺がバンクシーなんだ! 信じてくれ!」って(笑)。


――なにも変わらないことが分かりました。


SHINCO 「これから」なんて訊くだけ無駄なことは分かってたでしょ?


――ブレがなかったです。ちなみに、これからのブロスはどうしたらいいでしょうか?
Bose いまってテレビ番組表も載ってないんでしょ? だからもう雑誌名から「テレビ」を取れば良いんじゃない?


ANI それかNetflixブロスとか(笑)。


SHINCO アマゾンプライムブロス(笑)。


Bose サブスクブロス(笑)。まあ、僕らがブロスでの連載を「ゴキ足のダンナ」ってタイトルにしたのは、鼻からゴキブリの脚に見えるぐらいの濃い鼻毛が3~4本出てるぐらい、ぶっとくタフに生きるっていうテーマだったから。


ANI よく言うとね(笑)。


Bose 同じようにブロスもしぶとく生きてください(笑)。

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<プロフィール>
MCのANI、Bose、DJのSHINCOによる3人組。88年結成。小沢健二との「今夜はブギー・バック」など、数々のクラシックを送り出す日本のヒップホップのリビング・レジェンド。デビュー30周年アルバムとなる「シン・スチャダラ大作戦」発売中!


<infomation>
スチャダラパーデビュー30周年記念アルバム
【S盤、D盤、P盤】各3,300円
ZENRYO RECORDS/SPACE SHOWER MUSIC

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