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【6月号 特別企画】大会場はあなたの中に…妄想プロレス観戦記その5 豊本明長(東京03)【コラムフェスティバル②】

世界中が未曾有の事態となったコロナ禍にあって、それまでに再びブームとなって活況を呈していたプロレスも大会開催の自粛、中止を余儀なくされた。ようやく再開の兆しが見えたものの、プロレスファンは家で過去の動画を観てプロレス欲を発散するしかない日々が続いた。しかし、もう我慢できない。
プロレスが観たい。
今回の「コラムフェスティバル」は、執筆者の頭の中で繰り広げられたプロレスを、活字で展開するものである。
第5回は、東京03の豊本明長。メジャーからインディーまで幅広くプロレスを観戦する彼だからこそのファンタジーが、今ここに現出する。

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文/豊本明長(東京03)

<プロフィール>
豊本明長(とよもと・あきなが)●1975年愛知県生まれ。2003年に「東京03」を結成。「第4回お笑いホープ大賞」大賞受賞、「キングオブコント2009」優勝など、上質のコントは高い評価を受けている。大のプロレスファンで、専門誌で連載を持つなど、メジャーからインディーまで幅広くプロレスを観戦。現在は『速報!バトル☆メン』(FIGHTING TV サムライ 水曜放送分)、ラジオ『東京03の好きにさせるかッ!』(NHKラジオ第1 毎週木曜後8時05分)などにレギュラー出演中。現在新たにYouTubeにて「東京03第2チャンネル」を開設して、先日リモート単独公演を開催して話題に。チャンネルはこちら→東京03第2チャンネル


“プロレス界ナンバーワン決定戦”が15年ぶりの決着
そしてあの男が再び動き出す


プロレスの歴史の中で止まったままの時計の針が動いた。

プロレス界のナンバーワンを決めるトーナメントという触れ込みで始まったWRESTLE-1 GRAND PRIX 2005。
2005年8月4日両国国技館で行われた1回戦。そして、同年10月2日国立代々木競技場で行われた2回戦を終え、ザ・グレート・ムタ、鈴木みのる、ジャマール、ボブ・サップが勝ち上がった。
しかしその2カ月後に横浜アリーナで行われるはずだった準決勝と決勝が様々な諸事情により中止となり、その続きは見られずその戦いの時計の針は止まったままだった。

それが15年の時を経て見られるという事で迷う事なくチケットを購入し会場に。
トーナメントの行く末はもちろん、こういうビッグマッチには欠かせないミル・マスカラスとファンクスも来日して第1試合に出場。入場曲がかかっただけで会場が1つになる。
ちなみに2005年にも特別参戦しているが、今、目の前で戦う姿を見ていると本当に時が止まっていたのではないかと錯覚してしまうぐらいコンディションがいい。
さらに豪華なのはリング上だけでなく、リングサイドに目をやると、この大会のスーパーバイザーである前田日明、さらに秋山準、村上和成、諏訪魔、柴田勝頼、ドン・フライ、佐々木健介と、トーナメントに参加した選手達が陣取っている。個人的にはドン・フライの姿が見られただけで嬉しい。

準決勝は鈴木みのるvsジャマール、ムタvsサップという組み合わせでしたがジャマールが亡くなっているため、かつての全日本プロレスでユニットを組んでいた太陽ケアがリザーバーとして出場。太陽ケアも久しぶりの日本のお客さんを前にしてキレのある動きを見せたものの、鈴木みのるのゴッチ式パイルドライバーで撃沈。まだまだ余力があるのか、セコンドにいたNOSAWA論外を意味なくボコボコに。鈴木みのるが決勝に駒を進めた。

一方、ムタvsサップは過去にも戦っているカードで、その時はサップが勝っている。内容的にその時のインパクトは越えられなかったのかな? という感じだった。むしろサップのスタミナの無さが心配になる感じだった。しかし結果は、ムタのシャイニングウィザードをサップが捕らえてハイアングルのパワーボムで切り返し逆転勝利。勝ち名乗りを受けるサップの背後からムタが怒りの毒霧。そのままバックステージに消えていった。

いよいよ決勝はボブ・サップvs鈴木みのる。
今日2度目の「2001年宇宙の旅」のテーマが流れ、花道に姿を現わすサップ。
早期決着狙いなのか? ゴングが鳴ったと同時に突進するサップ。しかし俺の相手はお前じゃないとばかりに捌く鈴木みのる。いとも簡単にサップのその巨体を倒しグラウンドの展開へ。そうなったら鈴木みのるの独壇場。面白いようにサップの関節を決めていく。ビジョンに大きく映るサップの苦悶の表情は、もはや泣いているのではないかと思うぐらい。会場から若干の笑いも起こる。
その空気を察してなのか、鈴木みのるはサップを強引に起こし、張り手の打ち合いに持ち込む。
わざと打たせたサップの張り手にニヤリと笑う鈴木みのる。もちろんその顔もビジョンに映し出され会場はどよめく。少し緩んだものが引き締まり会場の空気を見事に支配する鈴木みのる、流石だ。
そして鋭い張り手を連発でサップを追い込む。大きな体を屈めて防戦一方のサップ。すぐさま鈴木みのるはゴッチ式パイルドライバーの体勢に。しかしここで場内が真っ暗に。明るくなると同時に再びリング上に姿を表したムタ。
場内がざわめく中、鈴木みのるに毒霧、続けてシャイニングウィザード。大の字の鈴木みのるにすぐさまサップがフォール。観客全員が状況を掴めぬ中の決着。
サップも状況が飲み込めてない様子で驚きを隠せない。何故? という表情をしているサップにムタが毒霧を噴射。
悶絶するサップをただ黙って見ているムタ。そこに鈴木みのるが後ろから襲いかかる。スリーパーに捕らえて締め上げムタを悶絶させる。ムタは苦しみながら毒霧を天に向かって吹き出す。これは全日本プロレスでムタと鈴木みのるが戦った時にも見られた名シーン。そしてムタは強引にスリーパーを剥がすとスルリとリングを降りて花道に。リング上の2人を指差し、首をかき切るポーズ。
すぐに鈴木みのるがマイクを取って叫ぶ「おい! おい! 何だこれは? 何が『プロレス界ナンバーワンを決める』だ? ふざけんなよ。元々プロレス界ナンバーワンは俺だって決まってんだよ。そんな俺がわざわざ試合してやってるのに邪魔してんじゃねーよ! サップが優勝? くだらねーな! こいつもういい。ムタとやらせろ。次のターゲットはムタだ!」
続けてサップもマイクで話し出す。「スズキサン! スズキサン! 今日ハアリガトウゴザイマシタ。鈴木サンハ強イ。タッグ組ミマショウ! ムタ! 倒シマショウ!」
鈴木「テメーと組んだって戦力にならねーからなぁ、俺が敵2人を相手する事になるだろーが! でも良いよ。組んでやってもいいよ…まぁ、ムタがどんなパートナー連れてこようが、俺が1番強いからなぁ。2人まとめて潰してやるよ。鈴木軍イチバーン!」
するとムタは花道の奥にある大きなビジョンの方を指差し毒霧を噴射。場内暗転。
そして聴き馴染みのある曲が流れる。
それは「DESTRUCTIVE POWER」。
この曲は試合中の大怪我で長期休業中の帝王・高山善廣の入場曲。
ここが今回のハイライトと言っても過言ではない。
それと共にビジョンに映し出されたのが、

「次回横浜アリーナ大会 ボブ・サップ&鈴木みのるvsザ・グレート・ムタ&高山善廣」

場内が明るくなると、鈴木みのるは驚きの顔。互いに認め合い、互いに特別な存在。その復帰戦が電撃発表された。
鈴木みのるは目を閉じてひと呼吸。そしてニヤリと笑った。

鈴木みのるはどんな敵でも潰すと言い放った。最後のニヤリはその覚悟を決めた瞬間だったのか!?

そして帝王・高山善廣という時計の針もまた動き出した。


WRESTLE-1 GRAND PRIX 2005 決勝戦
〇ボブ・サップ [ 体固め ] 鈴木みのる×
※ザ・グレート・ムタが乱入。ボブ・サップが優勝。試合後、高山善廣の復帰が発表される。


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