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ピンチはチャンス! 心身の大不調が自分を知るターニングポイントだった        

その日をさかいに私は急激に落ちていった

 今までの人生の中で「ピンチはチャンス」という言葉には何度も出合った。テレビや雑誌でもよくお目にかかるし、自分の記憶を辿るとNHKのこども番組で「困った時はチャンスです、頭の良くなるチャンスです〜」と鳥のようなキャラクターが登場する場面がすぐに思い出される。そんなとても身近な言葉であっても、私が身をもって実感した経験はなかったような気がする。見聞きするたびに「そんなものか」と流していた。そんな私が「ピンチはチャンス」という紙を握りしめて、人生の谷を這い上がることになった。今から1年も経っていない話だ。
 私は数年前から回転性のめまいや貧血のような症状に悩まされていた。それなのに、病院で原因を突き止めることもせず、子育てや家族を優先してきた。というか、単に自分のことはめんどくさかった。悩まされてはいるけれど、症状が治れば放置していた。
 ある日、一人で家にいる時に貧血を起こして立ち上がれなくなった。一人の時にそんな状態になるのは初めてだった。携帯電話は手の届かないところに転がっていて、救急車を呼ぶことも、家族や知り合いに電話をすることができない。しかも、小学2年生の長男と幼稚園に通う年少さんの次男を順に迎えにいく時間が迫っていた。特に発達障害の長男は、その頃はまだ一人では家に帰ってくることができなかった。私にとっては絶体絶命レベルの出来事。連絡もできず私が迎えに行けなかったら、小学校から出てきた長男はどうするのだろうか。想像するほどに心臓の音がバクバクと聞こえだしてパニックになりそうだった。立ち上がれなかったのは30分くらいだったのに、何時間にも感じられた。その後、どうにか携帯を手にとって小学校と幼稚園に連絡をし、ホッとしたところで義母が駆けつけてくれた時は恥ずかしながら泣いてしまった。それくらい心細かった。

精神薬を飲み始めて症状はさらに悪化

 その日以来、私は動悸が気になるようになってしまった。常にドキドキしていてプチパニックになりそうな状態。めまいのこともあったので、ようやく重い腰を上げていろいろな病院で診てもらうことにした。しかし、内科や脳外科、耳鼻科と行ってみたものの、はっきりとした原因は分からなかった。めまいの原因を特定することは難しいのだそうだ。とはいえ、この症状をなんとかしたい。私は心療内科を受診してみることにした。今までの経緯を話すと、そこではパニック発作手前と診断された。違う心療内科にも行ってみたら、そちらでは子育てによるノイローゼとも言われた。「そうだったのね。私は子育てによるノイローゼでパニック発作手前になったのね」と状況も分かったので、私は処方された通りに抗不安薬を飲み始めた。ところが、薬を飲み始めてから私はどんどん悪化していった。まさに人生の大ピンチ。
 それからは、眠れない、眠りが浅い、抑うつ状態、対人恐怖、拭えぬ緊張感、予期不安などが波のように襲いかかってきた。薬が切れるとそれらは強くなり、1日1日を噛み締めるように乗り切るしかなかった。気を抜くと落っこちてしまいそうで、無理をしてでも物事を前向きに考えた。「ピンチはチャンス」であり、「この辛い経験には絶対に意味があるんだ!」と歯を食いしばって耐えた。例えるなら、皇帝ペンギンの父親になった気分だった。猛吹雪の中、飲まず食わずで卵を守る。ただただ辛い状況に耐えながら、卵が孵化するその日を待っている。私もこの辛さを乗り越えれば、ネクストステージにきっと上がれると信じた。

不調の主な原因は鉄と亜鉛の大不足だった

 ただ薬を増やそうとする医師に不信感を抱き、私はクリニックを変えることにした。引き寄せのようなご縁があり、森田療法を学んだ医師のクリニックにお世話になることにした。森田療法とは、自分のあるがままを受け入れて不安や症状を排除しようとする心のやりくりや行動をやめてそのままにすることを推奨する心理療法で、私はその頃には森田療法で症状を改善させたいと考えていた。 
 新しいクリニックに通い始めて全てが好転していった。まずは、抗不安薬を止めることを目標に減薬をスタート。1ヶ月半ほどで断薬に成功した。さらに大きな転機といえば、治療の一環として血液検査を受けたことだ。私の血液検査の結果は散々で、重度の隠れ貧血と亜鉛欠乏症、筋肉量もない。その結果に、「これではめまいも起きれば不安感もでるよ。こんな状態でどこも受診せず、どうやって生きていたの?」と先生は呆れ顔だった。私の症状は栄養障害が一番の原因だったのだ。鉄剤と亜鉛の薬を処方され、医師による適切な治療とアドバイスを受けたことで、私を苦しめていた症状はどんどん薄れていった。頻繁に起こっていためまいや低血糖の症状からも解放された。精神的にはクヨクヨすることも減って前向きになり、行動力もアップした。良いことづくめだ。ここまでの大ピンチにならなければ、私の足は病院へ向かっていなかったと思う。そうしていたら、めまいや低血糖の症状、精神的な不安感はますますひどくなっていただろう。今回のピンチは神様がくれたチャンスだったのだ。おかげさまで良くなりました。ありがとう。




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