離脱

習慣的にギターを弾かなくなってから3ヶ月くらいが経った。
部活に区切りがついたのもあるし、受験生であるためにギターレッスンを辞めたのもあるし、それに割く時間がなくなりつつあるというのもあるし、理由など枚挙に暇がない。とはいえそう簡単に手放せるわけでもなくて、時間を見つけてはもうやることも叶わないようなバンドスコアを見ながらギターパートを弾いてみたり、弾き語りのコード譜を見ながら物足りない気分になったりしている。
高校1年生で軽音楽部に入ったときはまさかここまで自分が音楽に執着するようになるとは思っていなかった。バンドメンバーのおかげで、ひいては私達の演奏を聴いてあれやこれやと褒めてくれた部員や部外の友人のおかげで2年前よりもずっとずっとバンドのことが大好きになったし大切になった。最後の文化祭ライブでは誰よりも泣いていたような気がする。いくら泣いても喚いても部活から、バンドから、ギターから、音楽から離れないといけない事実は消えなかったし実際今やバンドメンバー全員で集まることすらほとんどない。
「離れてから大切さに気づく」とはよく言ったもので、現役でやっていた頃には想像もつかないくらいの喪失感に襲われていて、どうにかそれを埋めようとするために曲を作るという暴挙に出た。この受験期に。普通にバカである。(しかも取り掛かり始めたのはテスト前)
どうにかして自分と音楽、自分とギター、自分とバンドメンバーを繋ぎとめておきたくて、どうにも手離すことができなくて、それには音楽しかないだろうと思って曲を作り始めたのに、やる機会があるかどうかも分からないものを作るのは存外つらくて、このままぜんぶなくしてしまうのかなと悲しくなっている。しまいには今のメンバーのままこれからもバンドができたらいいな、あわよくばそれで暮らしていけたらいいのにななどと夢のまた夢のようなことをここ最近ずっと考えていて、およそ受験を3ヶ月後に控えている学生の思うべきでなさそうなことを、ずっと、現実逃避のように空想している。
仮にそうなれたとしても、そこがあまりに厳しい業界だということは百も承知だし、私がそうしたいとメンバーに伝えることはその人たちの人生を背負うわけで、それに責任を持たないといけなくて、今まで私のわがままを聞き入れてくれたとはいえ他の3人にも夢ややりたいことがあるのだから、こんな私の至極身勝手なわがままで3人の歩むべき未来の邪魔をしてはいけないと思う。とは思うけど。でもやっぱりどうしてもやりたくて仕方がない。バカな夢だと、そんな上手くいくわけがないと嘲られても罵られても、一緒に音楽をやりたいと伝えないといけない。それがどんな結果になっても。

とりあえず、それを伝えるための材料として早く曲を完成させないといけないなと強く思った。音楽理論もコード進行も分からないままだけど、私からの精一杯の誠意を作り上げないといけない。

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