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aikoの情報を調べるのは、ほぼ無意識/スペシャルウィークさん

突然ですが、インタビュー連載をはじめます。

aikoのことを大好きなライターが、aikoのことを大好きな人たちに話を聞きにいく「aikoファン図鑑」。いわゆる“aikoジャンキー”に、それぞれの胸に秘めたaikoへの想いや大切にしているエピソードを語ってもらう企画です。

第1回目のゲストは、「岡村隆史のオールナイトニッポン」をはじめとした深夜ラジオで数多くのaikoネタを投稿し、ファンの間でもハガキ職人として広く知られているスペシャルウィークさん(@spcwk)です。

ライブに行くきっかけを作ってくれたのは、aikoのお父さん

――スペシャルウィークさんがaikoを好きになったのはいつですか?

スペシャルウィーク:aikoのことが気になりはじめたのは『花火』が発売された1999年で、「COUNTDOWN TV」のランキングでPVを見たのがきっかけだったと思います。その後すぐ「ぬるコム(aikoのオールナイトニッポンコム)」の放送がはじまって、当時から深夜ラジオを聴くのが好きだったので、放送を聴いているうちにすっかりファンになっていました。

――ぬるコムの放送当時から投稿はしていたんですか?

スペシャルウィーク:いや、投稿をするようになったのはもっとずっと後で、はじめて深夜ラジオで投稿が採用されたのは、2008年4月10日放送の「ナインティナインのオールナイトニッポン」にaikoがゲスト出演していた回です。

内容は「aikoは2001年の放送では自分のことをナイナイファミリーだと言っていたけど、ますだおかだ・増田さんのブログには、aikoが昔、ふたりの初舞台を見に行ったり出待ちをしたりしていたことが書かれていました。aikoはいったい何ファミリーなんですか?」という質問メールで、この採用がきっかけで深夜ラジオに本格的に投稿するようになりました。

――ハガキ職人になるきっかけもaikoだったんですね。しかも、放送日や内容まで覚えているとはすごいです。

スペシャルウィーク:いつ、どの番組で何の投稿が採用されたかは、全部記録をとってあるんですよ。今日の(インタビューの)ことがあったので、久しぶりに振り返りをしてきました。

――なんと!ありがとうございます。では、スペシャルウィークさんがaikoのライブに行くようになったのはいつ頃ですか?

スペシャルウィーク:ライブに行くようになったのはもっと後で、はじめてのaikoライブはLLP15(Love Like Pop vol.15)、2012年7月21日の東京公演です。

実はライブに行く動機を与えてくれたのはaikoのお父さんなんですよ。初ライブの1ヵ月前くらいにお父さんが経営する大阪のバーに行く機会があって、aikoに関するいろんな話をする中で「100回CDを聴くより、1回のライブだよ」って話してくれて。

――aikoのお父さんから直々に…!

で、その後に知り合ったファンの方に誘ってもらえて東京公演に行くことができたんですけど、実際にaikoのライブを生で見てみたら、本当にお父さんの言葉通りだったんですよね。

ライブで聴く歌声はCD以上にかわいいし、即興コーナーの対応力には感動するし、お客さんとの掛け合いもラジオさながらに軽快でおもしろいし…10年以上前から好きだったのになんで今までライブに行かなかったんだろう、それまでの人生損したって本気で思いました。

――ああ、その気持ちはわかります。

スペシャルウィーク:でも、ライブでは結構なトラウマもあって。LLP17.5の日本ガイシホール公演のMCで、aikoがラジオにまつわるトークをしていて、それが自分にも関係するような内容だったんですよ。

そこで思い切って「スペシャルウィークです!」って叫んだんですけど、自分の周囲にいるお客さん十数人が振り向くだけでaikoには声が届かなくて(笑)。それがわりとトラウマで、その日以降、ライブでaikoに反応を求めるような声かけはできなくなりましたね…。

――ライブ中の声かけって難しいですよね。タイミングが大事というか、場合によっては本当に空気が読めていない状態に陥ってしまうので。

スペシャルウィーク:それでいて多少は空気を読まないくらいで叫ばないと他のファンの方の声とかぶりますからね。

そういったことがあったのでライブ後は相当落ち込んでいたんですけど、その日の深夜に放送された岡村(隆史)さんのオールナイトニッポンで、「DJ TAKASHIのスクラッチクイズ」という早押し形式で曲名を当てるコーナーに、当時発売直前だったaikoの『あたしの向こう』を回答に書いたメールが採用されたんです。そうしたら、そのメールが読まれた直後にaikoがTwitterで「スペシャルウィークありがとう」ってツイートしてくれて、さっきまでつらかった気持ちが全部吹き飛びました。

――え、それはすごい…!スペシャルウィークさんのTwitterのヘッダーに設定されているaikoのツイートはその時のものなんですね。

スペシャルウィーク:そうです。実はその日のライブアンケートで、aikoに声が届かなかったことへの無念を書いていたんですよ。もしかしたらそのアンケートを読んだaikoが、ライブでのリアクションの代わりにツイートしてくれたんじゃないかって勝手に思っています。

――うわぁ、そうだとしたら本当にすごい。でも、aikoはきっとアンケートを読んでくれていますもんね。どこかにその気持ちはあったのかもしれない。

スペシャルウィーク:Twitter関連だと、2016年5月5日放送の岡村さんのオールナイトニッポンでも、曲のタイトルを用いたネタコーナーでaikoの『ロージー』を使ったハガキが採用されたときもツイートしてくれました。偶然にもその日は自分の誕生日だったので、aikoから思いがけないプレゼントをもらえたようですごくうれしかったですね。

――はああ、うらやましいです(笑)。aikoに名前を覚えてもらえるようになったきっかけってあるんでしょうか。

スペシャルウィーク:aikoが僕のことを認知してくれるようになったのは、深夜ラジオで投稿がよく採用されていたのもあるかもしれないですが、aikoのお父さんがaikoに僕の話をしてくれたのが大きいんじゃないかなと思います。

「あじがとレディオ」でメールが読まれたとき、aikoが僕の投稿に対して「お父さんもすごいって言ってた!」って話してくれたことがあるんですけど、それは以前、僕がお父さんにハガキ投稿の仕方やログの取り方について話したことがあったので、aikoはその話を聞いたんだと思います。お父さんは、aikoにファンのことを結構伝えて下さる方なので(笑)。

ピーク時のハガキ投稿数は1週間で66通

――そんな独自のやり方でハガキを投稿しているんですか?

スペシャルウィーク:読みやすいハガキにするための工夫や、振り返りができるように過去の投稿内容をすべてログに残す、といったことはしています。

普段の投稿は、知り合いのハガキ職人にシステムエンジニアをやっている人がいて、その人が投稿用に組んだマクロをフォーマットとして使わせてもらっています。これに必要事項を打ち込んで「抽出」ボタンを押した後、印刷すればハガキのサイズに合わせていい感じに出力されるようになっているんです。

――すごい、ハガキ投稿にマクロを使っているんですね…。

読みやすさを重視するので文字の大きさは9ptと決めていて、それによってハガキ1枚あたりの最大文字数も決まっています。aikoは視力2.0なので多少文字が小さくなっても読めるかもしれないですが、岡村さんは結構あやしいので(笑)、文字数が多くなった場合は削るようにしています。

最近はスマホでメール投稿をすることも多いですが、そのときも自分のメールがどのような状態で受信されるかを想定して送っています。

スマホからメールを送るときって改行をしないことが多いので、パソコンで受信すると横に長く表示されて読みにくいことがあるじゃないですか。ラジオ局はメール投稿をパソコンで受信して画面を印刷しているはずなので、読みやすい状態で届くように改行する目安位置がわかるメールフォーマットを作っていますね。

――ものすごく制作サイドに配慮のある投稿方法ですね…!普段はどのくらい投稿しているんですか?

スペシャルウィーク:といっても最近はほとんど投稿できていないのでえらそうなことは言えないんですが、それなりに採用されていた頃は、正直に言ってめちゃくちゃ努力していました(笑)。

毎回のように採用されていると、もしかしたら聴いている人には「この人が送った投稿は全部読まれているんじゃないか」と思われているかもしれないですけど、採用された数の10倍20倍の量を投稿していますからね。送りすぎてスタッフさんに嫌われるんじゃないかと不安になるほどです。

――確かにわたしも思っていました、いつも採用されるハガキ職人勢はずるいって(笑)。でも、努力の賜物だったんですね。1番たくさん投稿していた頃は、どのくらいのペースで送っていたんですか?

スペシャルウィーク:ハガキ投稿を特にがんばっていたのは2008年4月~2016年6月頃で、その中でももっとも投稿数が多かったのは2011年4月~6月です。「ナインティナインのオールナイトニッポン」に投稿していたんですけど、当時は毎週約40通、1番多いときには1週間で66通のハガキを送っていました。ナイナイさんのラジオは10枚送って1枚採用されればいい方だったので、どうすれば採用されるのか“傾向と対策”を考えながら日々生活をしていましたね。

――毎週40通ってすごすぎる…それだけ送ろうと思ったら、どんなスケジュールで日常生活を送るんですか? ネタ投稿って考える時間も相当必要になりますよね。

スペシャルウィーク:そうですね、めちゃくちゃ時間はかけていました。

ナイナイさんのラジオは放送が木曜日だったので、金~土曜日の午前中くらいまでは同じ放送をひたすらに聞き直すんです。フリートーク中はどこで笑いが起きたか、誰の話題のときに話が盛り上がったかをピックアップしていって「この芸能人の話題が出ているときにトークが盛り上がるから、この人のネタを送ってみようかな」といったことを考えてメモに残します。

そのメモをもとに、土曜日の午後から月曜日くらいまではどうやってネタに落とし込もうかっていうのを延々と考えていました。

特に大阪に住んでいた学生時代なんかは、木曜日の放送に間に合わせるには水曜日の朝が投函のタイムリミットだったので、火曜日の深夜にぶわーっとネタをハガキに落としこんで、水曜日の早朝に投函して、ちょっと寝てから大学に行くっていうのを繰り返していました。

――うわ~…ハガキ職人が職人と呼ばれる理由がちょっとわかった気がします。aikoが出演するラジオでも、同じようなやり方で投稿しているんですか?

スペシャルウィーク:数はそこまで多くないですけど、基本的なやり方は一緒です。aikoがラジオ番組にゲスト出演するときは新曲のプロモーションであることがほとんどなので、たとえば『湿った夏の始まり』のリリース時ならアルバム13曲のタイトルや歌詞に関係するエピソードを考えたり、リードトラックになっている『ハナガサイタ』や『ストロー』は多分放送で流れるだろうと思って多めにメッセージを送ったりはします。

――ああ、やっぱりそういったことも考えているんですね。

スペシャルウィーク:傾向と対策なので(笑)。あと、どんなハガキやメールを送れば番組が進行しやすいかっていうのは常に意識しています。最初に話したナイナイさんのオールナイトニッポンで初採用されたaikoへの質問メールも、芸人さん絡みでaikoネタがあれば番組的にも取り入れやすいだろうなと思って情報をひたすら探していたら、偶然ますだおかださんのブログにたどり着いて送ることができた投稿なので。

――しかも合わせ技ですよね。何年も前の放送で話していた内容と、ブログの内容。これは誰にでもはできない。

スペシャルウィーク:やっていることは過去の放送を聴くこと、情報を検索することなのでシンプルですよ。ただそれを徹底的にやります(笑)。そうやって調べていくなかで、ほかの人がまだ気づけていないことに気づけるのが好きなんだと思います。

ほとんど無意識のうちにaikoの情報は調べている

――スペシャルウィークさんはラジオへの投稿だけじゃなく、aikoに関する情報のキャッチアップがものすごく早い印象があります。aikoのTwitterプロフィールが更新されたときも「aikoのプロフィールが●月ぶりに変わっていた」ってツイートしていましたよね。Twitterの通知機能では、プロフィールの更新までは知らせてくれないのになんでいち早く気付けるんだろうって思って。

スペシャルウィーク:早く気付けたのはたまたまなんですけど、aikoのTwitterは日常的にチェックしています。aikoは深夜から早朝にかけてツイートすることが多いので、自分がそのくらいの時間に起きているときは必ずといっていいほど見ますね。

プロフィールに変化がないか確認するのはもちろん、タイムライン上に表示されるツイートだけじゃなく「ツイートと返信」「いいね」欄も見て、aikoが誰とどんな会話をしているのか、どんなツイートにいいねしているのかも全部見ています。

会話している相手のツイートやaikoからいいねをもらっているツイート元のアカウントを見にいくと、aikoに関する新しい情報を知ることができる場合もあるので。あと、aiko本人がツイートはしていなくてもいいねをしていたら「Twitterにログインはしているんだな」とか「元気にしているんだな」っていうのがわかりますよね。

――おお…言われてみれば確かにそうですね。

スペシャルウィーク:また、フォロワー数の増減も見ます。フォロワーの下3桁くらいはしょっちゅう変動していて、一気に減るのは違反アカウントの一斉凍結によることが多いんですけど、一気に増えたときは何かイベントやテレビ番組でaikoが話題になったんだろうなって予想がつきます。フォロワー数が増加しているのを見て、aiko関連で何か話題になっていることがないか検索することもあります。

特に目立った変化がなくても、Twitterではaikoファンの方のアカウントだけを集めたリストを作っているのでそれを定期的に見たり、Twitter検索やYahoo!のリアルタイム検索でaikoに関するツイートやニュースをチェックしたりしていますね。

――もはや息をするように調べていますね。

スペシャルウィーク:調べるのはもう習慣というか、無意識といっていいレベルでやっていますね。

――でも「●月ぶり」といった数値的な情報はどうやって確認しているんですか?

スペシャルウィーク:それはTwitter上で意識的に情報を蓄積していって、あとから取り出しやすい状態を自分で作っているんです。

たとえばaikoのプロフィールに関して言えば、更新される度に「前回の更新からどのくらいの期間が経っていて、どんな内容に変わったのか」をツイートしておくことで、次に更新されたときに自分のツイートを見れば詳細を確認することができます。

aikoのライブに行った後、その日のライブで起こったことや印象に残ったことを羅列してツイートをしますが、それも後から情報を引っ張ってこられるようにするためです。

これを積み重ねていくことで、aikoについて何か思い出したいことがあったとき、Twitterの検索画面で自分のアカウント名とキーワードを入れるだけで欲しい情報がすぐに見つけられるようになります。

――自分のタイムラインを検索エンジンとして使っているんですね…。だからスペシャルウィークさんのツイートには数値や具体的な事象が記されていることが多いんですね。お話を伺っていて、過去に参加したライブの日付まで正確に出てくるのでどうなっているんだろうって思っていましたが、いろいろと謎が解けました。

スペシャルウィーク:ライブについては、終演後に書くアンケートもすべて写真に撮ってから提出するようにしています。なので、その日にあった印象的な出来事などはアンケートを読み返すことでも思い出すことができますね。

悔しいけど、グッドファーザーさんはやっぱりすごい

――スペシャルウィークさんにこの話を振っていいものかちょっと迷ったんですけど、最近のaikoの「あじがとレディオ」では、ハガキ職人としてはグッドファーザーさんが大活躍じゃないですか。毎回ネタは採用されているし、aikoにも「もうグッドファーザーがいなかったら生きていけないかもしれない」とまで言わせていて。それで、なんというかその、張り合わないんですか?

スペシャルウィーク:正直、さすがにちょっと悔しいですよ(笑)。グッドファーザーさんは岡村さんのオールナイトニッポンや山里さんの不毛な議論でもよく読まれているハガキ職人さんですが、昔はそんなにaikoのことばかりを書いていたわけではなかったんですよ。aikoのことをネタにした投稿が急激に増えたのは2~3年前くらいからで、岡村さんのラジオの「悪い人の夢」っていうコーナーで“悪aiko”ネタをたくさん投稿するようになったんです。aikoが岡村歌謡祭(「岡村隆史のオールナイトニッポン歌謡祭in横浜アリーナ2017」)に出演したときもaikoの登場時にグッドファーザーさんのネタ投稿の音源が流れて、その頃からaikoの口からもグッドファーザーさんの名前が出てくるようになったんですよね。グッドファーザーさんは最近でこそ「あじがとレディオ」で自分が住んでいる岐阜県の話を盛り込むような人間味あふれる投稿をするようになりましたけど、もともとはひたすらにクオリティの高いネタを投稿し続けるまさに“職人”で、自分自身のことを公にするタイプではなかったはずです。

――あ、グッドファーザーさんについても相当詳しいですね(笑)。

スペシャルウィーク:グッドファーザーさんは0→1でネタを作ることができる、本当に才能のある人です。ハガキ職人の中でも、やっぱりオリジナルのネタを作れる人が1番すごいと思います。

僕がものすごくラジオ投稿をがんばっていた頃、ナイナイさんのオールナイトニッポンでは過去に1度だけ、2011年4~6月放送分の「ハガキ職人大賞(採用数ランキング)」で1位を取ることができたんですけど、その前後、1~3月分と7~9月分のランキング1位がグッドファーザーさんだったんですよ。採用数ではそうやって張り合えていたこともありますが、ネタのおもしろさはグッドファーザーさんの方が一枚も二枚も上手ですね。

新曲リリース時の感想メールやふつおたなら、なんとなく書いて送っても読まれる可能性はありますが、ネタ投稿は作りこみが必要なので。グッドファーザーさんはおもしろいネタを作り続けているので、プロの放送作家さんになっても全然おかしくない人だと思いますね。

――スペシャルウィークさんから見てもグッドファーザーさんはそんなにすごい人なんですね…。でも、このままでいいんですか?

スペシャルウィーク:……aikoにあそこまで言わせられるのはうらやましいです、本当に(笑)。ネタのクオリティでは勝てないですが、「あじがとレディオ」には僕もこれからは負けじと投稿していきますよ。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!