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レイアウトを組み、アクアリウムがはじまり、おまえは神になる

よくきたな。おれはツツウラウラヌス・ギャクフンシャートゥスだ。おれは毎日ものすごい量のフィッシュ・ドリトスをフィッシュに与えているが、ひとつも食べ残させるつもりはない。餌やりという最も基本的な飼育ルーティンにおいても、いや、最も基本的だからこそ、日々の観察と分析、試行錯誤は必要ふかけつだ。量、栄養バランス、口に含めるサイズ感、嗜好性、上層から下層まで行き渡るか、水を汚しやすいかそうでないか、餌への積極性が低い/特定の餌しか食べない種にもはいりょできているか……おまえがメキシコの荒野をゆくとき、その一歩一歩がほんの少し目的地とズレていただけで、気づいたときには取り返しのつかないことになり、みじめなむくろをサンタナに晒すはめになる。飼育者としてある程度の勘、感覚をつかむことも大事だが、少なくとも適切な経年による水槽自体の成熟、それによる冗長性の恩恵が大きくなるまでは、常にあやまたずア・メキシコ・クアリウムを往けているか、考察を続けるべきだ。生体のふくしに寄与する銃 -GUN-は数あれど、最もローコストかつパフォーマンスが高いのは、初期装備たるそれであることを忘れるな。

どれだけ言っても言い足りないこと

本題に入る前にひとつ、この記事は逆噴射聡一郎氏へのリスペクトを前提とし、氏が大成した真の男のテキスト作法にフリーライドするかたちで、おまえにアクアリウムのなにがしかを教え伝えるこころみ……その3回目だ。この説明でなにもわからなければ、まずは逆噴射聡一郎氏についてグーグリーネイションでサーチニングしぞんぶんにメキシコの風に吹かれるといい。そのうえでまだアクアリウムへのきょうみかんしんが残っていれば、なんか津々浦々の記事一覧からさいしょっぽいのを見つけて読み始めることだ。ここでは、1回目、2回目を読み終えた、かなり寛容でにんたい力がすごいくてかがやかしい知的好奇心に溢れた真の男たちに向けて話をする。おまえのことだ。

ヒーターを買え

さて、仮定上のおまえは30cmキューブ水槽で小型熱帯魚の多種混泳を志向し、また、ソイルを敷いて水草の育成も楽しむこととした。濾過装置については、能力、CO2添加効率の高さに惹かれ、外部式フィルターの設置を決断した。あとは、入れる生体、また多くの熱帯性の水草の為、水温を25度前後に保つ水槽用ヒーターを設置する必要がある。ここでまた選択を迫られるが、濾過装置ほど悩むことは無い、メーカーに拘らなければ選択肢はみっつだ。サーモスタット一体型温度固定式ヒーター(オートヒーター)、サーモスタット一体型温度可変式ヒーター(一体型ヒーター)、サーモスタット分離型温度可変式ヒーター(分離型ヒーター)……正直どれでもいい。真の男は説明書をちゃんと読むし保管するので、個々の使用に伴う注意点は省略する。争点になるのは主にコスト面、また生体が病気になった際、温度可変式であれば有利にことが運ぶ場合がある、という点くらいだ。オートヒーターは一般に安くて扱いやすく設置もシンプル、分離型ヒーターは長期的に見ればコストパフォーマンスが高く温度調節機能が便利だが、温度感知センサーなど設置にひとクセある、一体型ヒーターはコストパフォーマンスは低いが温度調節が便利、言ってしまえば中途半端、という認識でいい。どれを選択するにしろ、ヒーターは消耗品でいつか壊れてしまうものであり(多くのメーカーが1年で買い替えることを推奨している)、予備や薬浴等隔離水槽用として安いオートヒーターを余分に買っておくのはけんめいだと言えるだろう。あたためたい水の量に応じてヒーターのW数が変わってくるが、今回は30cmキューブ水槽なので、入る水量は多くて25リットルほどになる。80w〜100w程度のものを買うといい。

レイアウトは陸のおきてが通用するあいだにすませておけ

個人的には、ここまでの準備や考察、水生生物やそれを取り巻く自然について思い馳せ行為をした時点からアクアリウムははじまっていると思っているが、水槽、フィルター、ヒーター、底砂を揃えた今、ついに水を入れられる段階がやってきた。とにかく早く水を入れたい気持ちはよくわかるし実際入れてしまってもいいが、せっかく多様なフィッシュ、水草を育成しやすい環境を用意したのだから、見た目にこだわりたいという思いも強いだろう。そう、水槽レイアウト……石や流木、水草の配置に工夫を凝らし、自然感やなにかコンセプトを醸し出したり、サイズ以上の奥行き、広がり、スケール感を演出することだ。飼育にクセのある生体やさまざまな効率におもきをおき、シンプルに機能的に組み上げる場合も少なくないが、今回はとりあえずなんか雑誌とかでチラ見したこともあるだろうわちゃわちゃオシャレなやつをイメージしてもらいたい。レイアウトは実際に素材を触り手を動かして作り上げるほうが格段にやりやすく、また、水を入れてからあーでもないこーでもないやろうとすると手がしわしわになるわ物が扱いづらくなるわあたりがビチョビチョになるわある種の接着剤が使えなくなるわ無駄に水が濁るわ手がしわしわになるわで良いことないので、水を入れるまえの水槽で組み上げてしまったほうがいい。水槽立ち上げ作業の中でも最もインスピレーションがばくはつするフェーズであり、本当に楽しいのでぜひ時間をかけてやってみてほしい。レイアウトのセオリーだとか構図の種別だとか有名な技法だとかはおまえがおまえのセンスでなんとかするとして、仮定上のおまえに寄り添った話をさせてもらう。

石か、木か、両方か

レイアウトの骨子、素材は、ふつう石や流木、場合によっては木の実の殻や枯れ葉なども利用する。無論、何も入れない、草だけで水景を作ったり、ある種の生体のために素焼きのシェルター等を用いてシンプルに仕上げることもあるだろうが、とりあえずは所謂ネイチャーアクアリウムというやつを目指していく。まず、仮定上のおまえは初心者であり、小型熱帯魚と水草の育成を楽しもうとしている。ゆえに、流木をメインに使うとうまくいきやすい。さまざまに理由があるが、第一に、石組レイアウトは難しい……これは、はじめから緻密で美しい水景を作るべきと言っているのではない(そういう難易度も比較的高いのは事実ではあるが)。石は重く、硬い。扱いに慣れていないうちは、レイアウトの試行錯誤のなかで手を滑らせ、水槽に傷をつけたり、わるければ破壊してしまい、ベイブが叫び、ダニートレホにつかまり、ナイフで・・・おそろしい・・・そういったおそれがある。また、レイアウト時点でしっかりと座らせる/安定させるこころえを持っていなければ、なんかの拍子に土壌が崩れたときに倒れ、破壊が起こり、ベイブが・・・どうして・・・という可能性もある。さらに、デカくてクールな石(アクアリウムにおいて珍重される、いわゆる親石というやつだ)を利用すれば、破壊・・・の被害は大きくなるし、デカさのぶん容積が目減りし、環境の安定性もおびやかされる。なにより最も重要なのは、水質への影響だ。主に、pH、GHに問題をきたす。

多くの生体と水草は、弱酸性の軟水において健康的に、または、旺盛に生育する。目安としてはpH6〜7、GH1〜4くらいを保っているといい(KHとかもあるがこれはGHと同じかそれ以下になるものなのでとりあえずGH低下を目指せばいい)。生息地がそうだからとかCO2が利用しやすいからとかコケが生えにくいとかアルカリに傾くとアンモニウムイオンがアンモニアになるからとか粘膜がどうとかミネラル吸収効率がとか色々理由はあるが、とにかくこの状態を維持すればなんとなくいろんなことがいい感じになる。弱アルカリや硬水を好む生体、水草もいるが、どうしても導入したい場合を除いて、今回の仮定では選択しないほうが無難だ。石を使うとなにが問題かといえば、水中の石からは絶えずpHとGHを上げるものが溶け出してしまう点だ。これを逆手に取り、高pH、高硬度でも生育できる、あるいはミネラル分を多く必要とする水草や生体で統一してレイアウトするテクニックや、浄水器などで作った軟水(あるいは蛇口をひねれば軟水が出るアクアリウム専用地域:ニイガタとかの水道水)で高頻度の水換えを行うなどやりようはあるが、初心者である仮定上のおまえに求めるには、酷なはなしだ。

読まなくてもいいし、ウォーターエンジニアリングの社長の受け売りだ

GHはいわゆる硬度であり、水中のカルシウム塩とマグネシウム塩の量を表す。これは生体や水草の代謝に直接関わるため、飼育するものに合わせた適切な値を目標値とし、足すなり引くなりすればいい。非常にシンプルだ。では、pHとは?「pHとは、水中の水素イオン濃度です。ハイスクールで習うでしょう、それが、なに?」そうおまえは言うかもしれない……しかしそれでは、「メキシコを生き抜くタフな真の男とは?」と聞かれたとき、「水とタンパク質と脂質とミネラルとなんかのかたまりです」などと答える腰抜けとまったくおなじで、そんなことをしているうちにサボテンの影から現れたダニートレホにきょうがくし声をあげる間もなくナイフされて死ぬ・・・指標を真に活用するためには、目的に合わせて再解釈する必要がある。アクアリウムにおいてこの指標を利用するならば、水中に存在する、水を酸性に傾けるもの(酸)と水をアルカリ性に傾けるもの(塩基)の量、そのどちらがどのくらい多いのかを表していると考えるとわかりやすい。水中に酸1、塩基1なら中性、酸100、塩基100でも中性、酸1001、塩基1000なら酸性、酸10000、塩基10001ならアルカリ性だ。つまり、実際に溶けている物質の量までは提示してくれない。ここを理解しなければ、たとえば酸性に大きく傾きがちな水槽に大量の塩基を投入して中性にするとかおかしな対策をほどこし、結果としてより生体に負担がかけてしまったりする。中性付近まで是正したからといって、元の物質は依然として溶け残っているためだ。観賞魚が多く棲むアマゾン川のブラックウォーター、クリアウォーターは弱酸性から中性であり、それこそそのpHを目指すじゅうような動機のひとつだが、水に溶けている酸や塩基は、様々に水質に手が加えられたうえ閉鎖されたちっぽけな水たまり(おまえの水槽のことだ)に比べれば、とても少ない。酸性になった飼育水を中性に近づけたいならば、溜まった酸を水換えで排出するか、イオン交換物質等で吸着除去するべきだ。指標の本質を知り、原因から対処する……むずかしく聞こえるかもしれないが、結局閉じた水槽でなんか物質が溜まるとなんかよくないという話で、こまめな部分換水で大抵のことはなんとかなったりする。おまえが初心者であるならば、いろいろ安定するまでは、少量高頻度の換水を続けていれば間違いはない。それがなぜ良いのか、理解しておくことがかんようだ。


流木もまたメキシコだ

では、素材を流木にすればなにもかもいいのか?そうでもない・・・・世界は、アクアリウム用にはできていない・・・・。ウキウキでクールかつジャストフィットな流木を買ってきたおまえにおれは涙をのんで言わねばならない。流木は浮く。小さいものでも1週間〜、大きいものでは数ヶ月から1年ほど水に漬け込んでおかねばならない。「沈水/沈下処理」と言われる。ショップによっては水に沈めた状態で販売しているところもあるが、多くは乾燥状態であり、おまえがなんとか沈めねばならない。「そんな!水槽もソイルもフィルターもヒーターも設置してあとはレイアウトさえすれば水が入るのに!ダミット!やっぱりアクアリウムはニュービーに厳しい腐った界隈だ!バカ!」そう叫ぶおまえの姿が見える……無理もない……だが、抜け道はある。流木に重りを付ける方法、あるいは、下敷き等の薄い板を付ける方法だ。重りには石を使う。なるべく硬度成分が溶け出しにくそうなものでそこそこの重さがあり、小さめのものだ。山谷石や、風山石と呼ばれ流通しているものが体感としては良い。これをアクアリウム用の接着剤で取り付け、石をソイルに埋めるように設置すれば、買ったその日にレイアウトできる。石も少量であればソイルなどの作用で影響を抑えることはできるし、やりようはある。下敷きなどを取り付ける方法は、底になにも敷いていない状態で、板を取り付けた流木を置き、ソイルを敷く。敷いたソイルすべてが板を押さえつけ、流木は沈むというりくつだ。ここまで記事を読んできた並外れた忍耐力のある諸氏はあるいは普通に沈水処理をしおおせるかもしれないが、上記のふたつが現実的なところだろう。

もうひとつ、アクが出る。煮沸処理や長期間の沈水など対処法はあるものの、それが充分でなかったり、抜け道を使い新品未処理状態でレイアウトした場合は、出まくる。アクは生体に害をおよぼすものではない(むしろ健康を促進する面もある)が、やはり茶色く色付いた水は初心者のおまえにとって目指すところではないし、光が届きにくいので水草の成長も鈍る。光で思い出したが、水槽用ライトのことをすっかり忘れていた。こんど細々とした用品の話をするときにやる。なんにせよ、アクを取り除くには活性炭だ。「ブラックホール」という高性能活性炭が有名で、水槽用活性炭の多くはフィルターに仕込むようになっている。普通にフィルターを買ってもだいたい活性炭はついてくる。有機物を強力に吸着するため、色付きの原因物質やニオイ、にごりのもとを吸い付けて有効期間がすぎればそのまま取り出して排出してしまう。また、白いもやのようなものがかかることがあるが、これは水カビだ。見た目はショッキングだが、エビを入れていれば全部食べてくれるのでそんなに心配はいらない。流木の乾燥や煮沸が不十分だと起こりやすくなる。このように多少の問題点はあるものの、工夫すれば比較的楽に解決できる。仮定上のおまえは、大きめの枝ぶりのいい流木2,3本をチョイスし、風山石の小石を重りとし、三角構図で枝が手前にせまってくるような、迫力あるレイアウトの仮組みに成功した。ようやくここまできた、あとは注水、植栽、立ち上げだが…………残念ながらまた長くなりすぎたし謎の副反応で早く寝たいので、ここまでとする。今おもいついたことだが、このシリーズで組み上げた水槽は後にうおシリーズの1枚としてビジュアーライゼーショーオオンーするつもりだ。そのときはニヤリとほくそえんでくれ。

さいごに

今回は特に話があっちやこっちに飛びまくり読みづらかったかもしれない。それほど、水槽の立ち上げにはさまざまな要素がからみ合い、未来を見据えたれいせいな状況判断が求められる。それだけ読みづらさをかんじさせながら、またもや表題のレイアウトについて、具体的なやりかたとかにまったく触れなかったのは申し訳ない……。こればかりはたくさんの水槽を見たりプロのレイアウト動画を自分で見るほうがいい。アクアリウムが持つアート性の領域なので、理屈じゃないが、理論はある。そういうのを漁るのもまたアクアリウム行為であり、めちゃくちゃ楽しいんですとだけ言っておく。

魚類の福祉に役立てられます