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【詩の森】670 便利の代償

便利の代償
 
車を作る者は
便利を売る者だろう
それは飛ぶように売れるだろう
何しろ欲望がまた一つ
開放されたのだから―――
 
雨の日に
歩かなくてもいいのだから
何処へでも誰とでもすぐにでも
行けるのだから
車さえあれば―――
 
車のために
道がつくられ橋が駆けられ
トンネルも作られた
日本列島改造論―――
車が社会を変えていく
 
それを人々は税金で負担した
車を作る者は便利を売るだけでよかった
しかも車には事故が付き物だった
車を買うには保険がセットになった
それを保険会社が引き受けた
 
僕らは税金を払い
任意保険の保険料まで払い続ける
交通事故が怖いから―――
しかし車の社会的費用は
それでも足りないのだという
 
僕は車社会を生き延びて
今年古稀になった
幸い小さな車両事故が二回だけだった
しかし車を作る者は
便利を売るだけでよかったのだ
 
2024.7.3

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