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【詩の森】バブル銭

バブル銭
 
職業のことを
昔は生業といった
文字通り
生きるための業である
その大本は農業だったから
ずいぶん長い間
生業といえば
農業のことだったという
 
それがいつしか
生業という言葉は廃れ
職業となった
数%の農民だけで全員の食糧を
賄えるようになったからだ
サービス業が一気に花開き
人は農業からサービス業へ
僕もシフトした一人だ
 
職業に貴賤なしという
元々職業といえば
誰かの役に立つものだからだろう
職業によって人は社会と繋がり
その一員としての自覚を
持つことできる
職業はいわば
社会の紐帯なのだ
 
誰かの役に立って
お金をいただく
それが労働の本来の姿だろう
しかし今や
日常生活の中で使われるお金の
10倍以上が
金融商品に
充てられているらしい
 
つまり
実体経済と金融経済の比率が
1:10以上だというのだ
だからバブル期といわれている
何だか危ういと思うのは
僕だけではないだろう
実体経済の10倍ものお金は
いったい何処から
生まれてくるのだろう
 
実は1971年の
ニクソン・ショックにより
ドルは兌換紙幣ではなくなり
通貨総量の歯止めが外されたのだ
銀行は借り手さえいれば
お金を作り出すことができる
信用創造という
打ち出の小槌―――
 
実体経済で
僕らがお金を手に入れる手段は
実際に汗して働くことだ
だから必ず誰かの役に立っている
しかし
金融経済では
そこに参加する人々の思惑だけで
株価などが上下するのだ
 
そこで儲けたお金は
何に対する対価なのだろうか
それが頭脳労働の対価だとしても
その労働ははたして
他の誰かを喜ばしたのだろうか
バブル銭も実体経済の銭も
同じ銭だということが
僕はどうしても納得できないのだ
 
お金とは労働とは
職業とはいったい何だろう
彼らは不埒なゲームに
興じているだけではないのか
バブル銭も同じ銭だと
いうことにして―――
ゲームなら専用のマネーで
やってほしい
 

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