【詩の森】語られた未来

語られた未来
 
１９４８年
ジョージ・オーウェルは
１９８４年という小説を書いた
当時でいえば
３６年後の近未来小説である
そのなかで彼は
核戦争を経て
三つの超大国が
分割統治する
超監視社会を描いている
主人公のスミスは
真理省の役人として
日々歴史記録の改竄を
行っている
 
１９８４年
公開されたジブリ映画
風の谷のナウシカは
高度産業文明を崩壊させた
最終戦争から
１０００年後の世界を描く
巨大な菌類が
猛毒を発生しつづける腐海
最終戦争とは
核戦争のことだった
のだろうか
 
１９６２年
オーウェルの予測した通り
人類はあわや核戦争という事態に
直面した
キューバ危機である
２０１７年
核兵器禁止条約の採決に
被爆国の日本は
反対した
２０２０年
ナウシカ公開から３６年
日本中の監視カメラは
既に５００万台を超え
監視社会が到来している
そればかりか
普及率が９割を超える
スマホの位置情報は
コロナ禍での混雑度マップに
利用された
そして未来都市
スーパーシティ法―――
 
世界には
身勝手な指導者たちが
跳梁跋扈し
それを支持するのは
身勝手な人々だ
彼らを大量に生み出したのは
強欲な資本主義のほうだろう
トランプ大統領就任で
３０秒進んだ世界終末時計は
北朝鮮の核開発で３０秒
米ソ間の中距離核戦力全廃条約失効で
さらに２０秒進んだ
現在は残り
１００秒である―――
未来は
語られた通りに
暗黒に向って
突き進んでゆくのだろうか
狂おしい
限りである