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【詩の森】483 この空を

この空を
 
この空を今
河原鶸のむれが飛んでいく
ふりそそぐ鈴の音でそれと分かる
この空を今
鴉が一羽啼きながら遠ざかっていく
カアーカアーと濁らない声は
くちばしの太いほうだ
鳩もこの空の常連だが
彼らは声をたてずに
まっすぐにぐいぐいと飛ぶ
 
鳥声が聞こえてくれば
僕はとっさにその鳥を思い浮かべる
日に何回も見上げる空―――
僕はいつも鳥を感じていたいのだ
その声をきき
その飛び方をみれば
鵯か椋鳥かはすぐに見分けがつく
波状に飛ぶ鵯滑空する椋鳥
椋鳥は空飛ぶ三角定規だと
だれかがいった
 
遠くへ渡るのでなければ
肉眼で見える高さを鳥たちは飛んでいく
だから飛行機を仲間だとは思わないだろう
中空は鳥の領域なのだ―――
そこにあろうことか
ドローンを飛ばすという
渋滞知らずの宅配にするのだという
魔女ならぬドローン宅急便
鳥たちはドローンを仲間だと
思うだろうか
 
そんな便利を
人々は本当に切望しているのだろうか
ドライバーには夜は休んでもらって
荷物は今の倍の日数で届けばいい
というくらいに
人々の気持ちが温暖化すれば
社会全体のペースダウン効果で
CO2はぐんと減るだろう
僕にいわせればドローンなんて
空が騒がしくなるだけだ
 
僕が鳥好きだから
そんなふうに思うのだろうか
それとも鳥にとっても
迷惑だろうと思ってくれる人が
少しはいるのだろうか
だれかが頭の中で考えたもので
目に見える世界が埋められていく
脳化社会も終にここまで来たかと思う
しかし少しやり過ぎだと
僕は密かに思っている
 

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