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【詩の森】488 アバウトでいいなら

アバウトでいいなら
 
雑巾を固く絞るように僕の心も
きつく締め上げられていたのだと
今になって思います
会社という所は
多かれ少なかれそんな居場所です
売上・ノルマ・効率・経費
そんな言葉が歯車の潤滑油のように
体じゅうに沁みついて
疑問を抱くこともなく
毎日をやり過ごしていたのです
今ても―――そうなのでしょうか
リタイアして9年が経ちました
 
会社人間だったあの頃
僕はアバウトというコトバが
大嫌いでした
何事も完璧でないと
気が済まなかったのです
体よりも脳のほうが圧倒的に優位でした
ワーカーホリックだったのかもしれません
風邪を拗らせて
危うく死にかけたこともあります
どうしてあんなことができたのでしょうか
この国には未だに
過労死を返上する気配はありません
 
僕らの会社がアバウトでいいなら
僕らはロボットではなく
人間のままでいられたことでしょう
僕らがみんなアバウト好きなら
人付合いはどんなに穏やかだったことでしょう
一時が二時間もあった江戸時代のように
だれかが待ち合わせに遅れても
目くじらを立てる人とていない―――
僕らの社会がアバウトでいいなら
どんなにか生き易かったことでしょう
嗚呼それもこれも僕らの選んだ仕組み
資本主義のせいなのです
 

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