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【詩の森】685 免許返納

免許返納
 
俳句仲間のIさんが
運転免許を返納したという
軽い接触事故を起こして
自信を失くしたのだろうか
賢い決断だと思う
 
Iさんの家は駅から遠い
さぞかし不便だろうと思っていたら
早速駅前に引っ越すという
車は文字通り
彼の足だったのだろう
 
Iさんは後期高齢者で
僕は彼より少し若い
それでも最近とみに視力が落ちて
どうしようかと迷っていた
矢先のことだった
 
車は便利だが出費も多い
そしていちばんの心配は
人を傷つけるかもしれないことだ
無制限の保険金は
その不安の表れだろう
 
そうまでして
僕らは便利に縋っている
しかしいくら自分が気をつけても
防ぎようのない事故もあるだろう
恐ろしいことである―――
 
僕はまだ
免許を返納していない
しかし極力運転しないようにしている
運転しなければ
事故を起こすこともないからだ
 
僕らは便利の裏側を
見ないようにして暮らしている
しかしそこには
犠牲になった亡者達の目が
屹度生者を見据えている!
 
2024.7.29
 

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