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【詩の森】洗い物をしながら

洗い物をしながら
 
妻がパートに出かけた後
洗い物をしながら
僕はふと考える
ここからずんずん昇っていったら
地球はどんな風に
見えるだろう
すると
僕は
星のブランコに腰かけて
地球を覗き込んでいたのさ
 
昇る途中のことは
よく覚えてないな
ただ
そこから見えるのは
太陽の光をうけて
闇のなかに浮かんでいる
真青な地球だ
まるで奇跡のようにね
でも
地球上で起きている
ことといったら―――
 
この星の人々は
子どものときから
戦士のように育てられる
学校でも
家庭でもね―――
不思議な人たちだよ
人生を競争にして
しまうなんて
勝ち負けにして
しまうなんて―――
 
生きてることが
奇跡なんだと
気づくだけで
人は幸せになれるのに
それだけで
人は仲良くできるのに
いいかい
鳥たちはいつだって
喜びの唄しか歌わない
喜びの唄しか
知らないからさ
それなのに
地球人ときたら―――
 
競争が
憎しみを
生んでいるんじゃないかな
競争が
一切の悲しみも―――
そして
自分たちの競争にかまけて
地球のことなど
ずっと
ほったらかしに
してきたんだ
 
人間はもう
とっくに
地球から見放されてると思うよ
そんな僕らに
この星はいつまでも
食べ物を与えてくれるだろうか
―――
汚れた皿を
危うく落としそうになって
僕ははっと
われに返ったのさ
 
 

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