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【詩の森】一人でも一人デモ

一人でも一人デモ
 
全国のあちこちで
自分で作ったプラカードを掲げ
スタンディングしている人々がいます
道行く人に
ただプラカードを見せるだけ―――
フェースブックの
全国スタンディングサイトで
彼らの標語を拾ってみると―――
武器から平和は生まれない
ウクライナに平和を
巨大風車はいらない
ジェンダー平等
大軍拡反対
改憲反対
9条を守ろう
原発はいらない
汚染水を海に流さないで
ああどれもこれも
今いわねばならない
切実な言葉たち―――
 
ほんとうは
僕らが主権者なのに
だまって政治家のいうことをきく
そんな国民です
それをだれも
不思議に思っていません
学校でそう
躾けられてきたせいでしょうか
先生のいうことをきく子供たちが
大人になって
こんどは政治家のいうことをきく
ほらね
政治家のことも
先生と呼んでいるでしょう
それで
あまのじゃくの僕は始めたんです
6年前に
最寄りの駅で
週一回の
駅前スタンディング―――
 
きっかけは3.11の
あの福島第一原発事故でした
僕はそれまで
原発のことを真剣に考えたことなど
一度もありませんでした
しかし事故の悲惨さを知れば知るほど
後世に原発を残してはいけないと
思うようになりました
プラカードを掲げていると
同じ考えの人が声をかけて励ましてくれます
そうやって何度か話すうちに
知り合いも何人かできました
沖縄で基地反対の座り込みをしている
島袋文子さんは
「口は叫ぶためにある」といいました
元裁判長の樋口英明さんは
「無知は罪だが、無口はもっと罪だ」
といいました
僕らの願いの届かない政治が
もう何十年も続いています
 
金子光晴という詩人の
湖畔吟という詩に
こんな一節があります
なにもかも骨灰となるだらう
人間を忘れた人間の愚かさから―――
人はすでに
自らを滅ぼしてしまうほどの
巨大な力を手にしています
僕らは生き延びられるかどうかの
瀬戸際にいるのです
世界終末時計は2023年現在
残り90秒に迫りました
もう猶予は余りありません
だれにでも
譲れないものがきっとあるはず―――
いちばん大切なものを守るために
立ち上がった仲間たちが大勢います
だから君も
大切な人を守るために
一人でも一人デモ―――

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