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0811 俊足のおじさま

長崎に行ったことがなかったので、無職期間を利用して壱岐に行ってみることにした。

飛行機で福岡にはいり、博多駅から博多港までバス、そこから壱岐へフェリーで向かう旅程である。
福岡空港から博多駅、バス停の発見までとんとん拍子。とりあえず埠頭とかかれたバスをみつけたので、乗ってみた。
しかしバスに乗ったあと念のため調べると、どうやら福岡には中央埠頭と博多埠頭の二つがあるらしい。壱岐にいくには博多埠頭に行く必要があり、くれぐれも中央埠頭には行かないようにと赤字で書いてある。私が乗っているバスの行き先をみると、「中央埠頭」の文字。
適当なバス選択が仇となり、さっそく間違えている。

バスの運転手さんに泣きついたら、博多埠頭まで徒歩で行けると教えてもらえたので、そそくさとバスを降り徒歩で博多埠頭に向かう。
今度こそと辿り着いたターミナルでチケット売り場の場所を聞き、長蛇の列に並び、いよいよチケットを買うところまできた。この時点で出航の10分前。
カウンターで尋ねると、壱岐の便はもう午後しかないですよ、と言われた。おかしい。10分後にフェリーがあるはずなのに。食いさがっているうちに、壱岐に行くには通常フェリーとジェットフェリーの2種類があることが分かった。今いるターミナルで売っているのはジェットフェリーのチケットのみ。そして私が乗りたいのは通常フェリー。発着は隣のターミナルから行われているらしい。

「向こうの出口をでて、ずっと進んだファミリーマートのほうの茶色い建物の….」
係のおじさんは丁寧に説明してくれようとしていたが、処理不能な顔をした私をみかねて、「着いてきてください!」と突然走り出した。しかも速い。大幅に遅れながら追いつくと出入り口をあけてくれ、「あそこです!」と笑顔で茶色い建物を指差した。
出航2分前、俊足のおじさまのおかげで、無事にフェリー搭乗に成功した。

思い返せばこれまでの人生、いつもぎりぎりを生きている。夏休みの宿題は最終日の夜中に泣きながら取り組みはじめるタイプ。駅に走ったことも、バス停に走ったことも、空港に走ったことも、何度もある。
それでもぎりぎりをやめられないのは、生来の楽観癖もあるし、その都度、俊足のおじさまのようなやさしい人たちに助けられ、結果として間に合ってきたからだ。

これからも、たぶんしぬまで、ぎりぎりで生きちゃうんだろうなあ、と走りだしたフェリーの上で思う。

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