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大山ドラファンが選ぶMy favorite storyⅡ

 子供の頃に見た記憶に残るアニメはたくさんある。大人になってアニメや映画を見てもちっとも記憶に残らないのに…。
 あの頃の話の内容がなんとなく思い出せることを私はいつでも不思議に思っている。

 今回は『パパの夢をかなえよう』という物語を語っていきたい。
 意外なことに、この回の監督は『帰ってきたドラえもん』や『僕の生まれた日』『おばあちゃんの思い出』など数々の感動作を手掛けた渡辺歩氏だった。ちなみに渡辺監督は『のび太の恐竜2006』で初の長編映画監督を務めている。

 さて、『パパの夢をかなえよう』はのび太たちがパパを有名画家にしようと過去に戻る話だ。
 のび助はもともと画家になる事を目指していて、そんな彼のもとに「画家になるための資金を援助してやる」という話が舞い込んできた。この話を持ち掛けたのは金満という裕福な家の主。のび太たちは、パパが画家になる道を選んだら、自分たちは必然的に金持ちの子供になれると思ったのだ。
 過去に戻ったのび太たちの目に映ったのは画家になるために援助を受けるべきか悩んでいるのび助の姿。「早く決めればいいのに」としびれを切らしたのび太とドラえもんは「ヤリトゲ」という道具をのび助に使う。名前の通り、思ったことを何が何でもやり遂げる道具。道具の力に取りつかれたのび助は爆速で金満家に向かう。もう誰にも止められない。
 大喝采を挙げているのび太たちのもとへ一台の高級車が止まる。中から出てきたのは一人の美女。彼女はのび助と結婚することになっている金満家の令嬢だった。そう、金の工面はするけれど、娘の婿になってほしいというのがこの話の詳細だったのだ。
 つまり、このままいけばのび太が生まれてくる未来が絶たれてしまうという事。急いでのび助を止めに行くのび太とドラえもん。
 のび助が選び取った未来は夢かそれとも…?

 多分この話のテーマは「未来の選択」
 人生はいろんな分岐点があって、私たちは日々の自己決定を通してそれぞれの未来を選択している。このような話は最近よく聞くようになった。
 のび助は画家になるという夢を追いかけていた。実際に富豪の人間から声を掛けられているから才能もあったのだろう。
 しかし、結果としてのび助は金満の誘いを断る。つまり、夢をあきらめる決断をしたのだ。
 「お金をかければ画家になれるというわけじゃないんです。
 どんな仕事をしながらでも絵は描けます。」
 そういって、画家として生きる未来をやめた。なかなか答えを出せずに悩んでいた理由は、自分が断ったら令嬢が傷ついてしまうのではないかと恐れたから。つまり、画家になりたいか否かで返答を渋っていたわけではなかったのだ。
 ちなみにこの返事に対して、令嬢は「こんな美人をお嫁さんにしたくないっていうの!?」「貴方みたいなダメな人大嫌い!」と言っている。
 のび助は最初から令嬢の性格が繊細であることを知っていたのかもしれない。彼女はプライドが高いから、きっと傷ついてしまうと。
 やはりのび太ものび助も、頼りないけれど優しい所は親子なのだと思わせてくれる。
 のび助が援助を受けなかった理由について、作中では明かされていない。一人息子である自分が婿養子に行ってしまったら実家はどうなるのか不安だった、金満家の金があるから何でもしてやるという高慢さが嫌だった、そもそも画家になる才能はないと思っていた、などが思い浮かぶが実際の所は不明だ。
 だけどこの決断をしてくれたおかげで、この後玉子と出会う事ができ、のび太が無事生まれてくる未来へと繋がった。

 一件落着と現代へ戻ってきたのび太達。庭でママのスケッチをしているパパの姿を見つける。
 「久しぶりに書いてみたくなってね」というパパに「珍しいわね」と微笑むママ。完成された絵は野比家の洋間に飾られることとなった。
 最初に描いていたママの両隣にのび太とドラえもんを書き加えた家族絵。
 それが、のび助の選んだ未来だった。



 いやぁ、この話本当に好きなのよ。大人になってから思い出すとしみる。
 未来が分からないからこそ、無難な選択をしてきたけれど、それが間違いなのかどうかは分からない。多分どんな未来を選んでも間違いだったと後悔すると思うし、なんだかんだ間違ってなかったかもしれないと思ったりして日々を生きている。
 ドラえもんってフィクションだからどっちの未来を選んでも正解でした、幸せです!って綺麗な締め方が出来るけれども、現実はなかなかそう単純にいかないもので・・・。
 ちなみに、のび助が金満家に直談判している時に、蜘蛛の巣に引っかかった蝶とそれを狙う蜘蛛のカットが入ってる。のび助が誘いを断って「お金が無くて絵具やキャンバスが変えなくても、心で絵は描けます」と断言したところで、蝶は蜘蛛の巣から脱出することができ、そのまま青空へ飛んで行く。このシーンをよく覚えているのだけど、とらわれている蝶って未来を妨げている自分の凝り固まった価値観なのかもしれないなぁと思った。
 何かもやもやした自分の価値観にとらわれているけれど、視点を変えて別角度から物事を見ると、意外といろんな選択肢があることに気づく。それを蝶が蜘蛛の巣から逃れるという所で表現しているのかなぁ、なんて。

 いやぁ、昔のドラえもんは絵のタッチも暖かいし、思い出しても面白かったと思える作品がたくさんあっていい。大山のぶ代版アニメをDVD化するか動画配信サイトで配信してくれないだろうか・・・。












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