鶴城さくら

つるしろさくら です。 小説を書いています。

鶴城さくら

つるしろさくら です。 小説を書いています。

最近の記事

答えをください

鶴城さくら     どうしたら、『正解の私』になれるだろう。誰にも否定されない、完璧な私。  ゾンビのような顔色を隠して、キラキラしたアイシャドーを塗って、つやつやのグロスで唇に魔法を。どんなに頑張ったって絶世の美女なんてなれないけれど。  鏡に映る少女は、目に涙をいっぱいためこんで、そのくせ口元だけは勝気に笑っている。私が知っているはずのバケモノも、理想の完璧美少女もそこにはいない。宙ぶらりんの状態で何者にもなれない私によく似た誰かがそこにはいた。    学校と

    • 春霖

      鶴城さくら  思い切り肺に取り込んだ空気は、つい先日まで吹いていた鋭い北風が嘘だったかのように柔らかさと温かさをはらんでいた。梅の香りがうっすらと漂う。 「もう春だね」  やっとだよ。と彼女の返事。寒さに弱いくせに、丈の短いスカートばかりはいていた。タイツはけばまだ耐えられる、オシャレが私の生きがいだから仕方ないじゃん。春まだかなぁ、が彼女の口癖だった。 「よかったね。もう少ししたら桜も咲くよ」  僕の家の近所には、立派なソメイヨシノがいる公園があった。この辺りではちょっと