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映画やドラマ、リアリティ番組、YouTube動画など映像作品に関する記事
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感想『PERFECT DAYS』:ルーティンの美しさ、素敵そうなプロジェクトの欺瞞、おっさんの願望がつまった女性陣

役所広司の演技はやはりすごかった。説明的すぎない脚本も相まって、彼の表情ひとつひとつに惹きつけられた。彼が控えめに笑う時、同じくほっこりした気持ちにさせられた。 豪奢とはベクトルが異なるが、自然を愛で、本を読み、音楽を聴く彼の暮らしぶりはとても豊かであり、羨ましさを覚えた。ルーティン的な所作も見ていて気持ちがよかった。特に、玄関で財布や鍵を綺麗に配置し、出かける時にそれらを順番に手にしていく様は妙に美しかった。 このように、平山という人物や画的な美しさという観点では良い作

感想|『こっち向いてよ向井くん』(ドラマ):他者との関わり合い、向井と美和子の暗示、恵比寿駅東側おすすめランチ

友達に勧められ、ドラマ『こっち向いてよ向井くん』をNetflixで観た。主人公の向井に対してイライラしながらも、最終話でとても幸せな気持ちにしてもらえた。 イライラの原因は、向井が様々な思い込みに囚われていたことにある。自分が彼のような状態に陥ることを意識的に回避しやすくなるのではないかと思い、彼がどんな思い込みをしていたのか、言葉にしてみようと思う。 また、これだけではちくちくした感想文になりそうなので、おまけを2つ付け足してみる。1つ目は、自分は向井と美和子の関係の着

感想|『LIGHTHOUSE』:ハイコンテクストな語り、弱者性と強者性

Netflixで配信されている、若林正恭氏と星野源氏が対談する番組『LIGHTHOUSE』。自分は2人の熱心なファンではないが、若林氏についてはエッセイ『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』を読んで、星野氏についてはラジオの書き起こしを何度か読んで、両者に対して「おかしいことはおかしいと、変にアジテートするわけではなく、時にはユーモアも交えて開陳してくれる、誠実な語り手」という印象を抱いている。ここでの「誠実」というのは、「公正で優等生的である」というよりは、「マジョリ

ホモソーシャルなYouTuberたちの引力

きっかけは忘れたが、最近こんな記事を読んだ。「elabo」というZ世代向けWebメディアで昨年6月に出た記事。 詳細はぜひ記事を読んでほしいが、要旨はこんなところ。 男性複数名によって構成されるYouTuberが動画投稿を通じて内輪ネタを楽しむところに、男同士の絆(まさにホモソーシャル)を感じる こうしたYouTuberの動画には、テレビから排除された下ネタを補完するという機能がある(筆者はその思春期の視聴者への影響を「複雑な気持ち」と述べている) ネット社会ゆえに、

「リアリティ番組」との向き合い方

仲の良い先輩から無言でスクショだけのLINEが来た。人気リアリティ番組新シーズン配信決定の報せ。 いわゆる「リアリティ番組」には比較的親しんできたほうだと思う。 今まで観てきたのはこんなところ。 ・『TERRACE HOUSE ALOHA STATE』 ・『TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS』 ・『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』 ・『バチェラー・ジャパン』シーズン1, 2, 3 ・『バチェロレッテ・ジャパン』 ・『ザ

映画『14歳の栞』制作陣による「聖域」侵犯

この投稿では映画『14歳の栞』を批判していますが、この批判は大人(制作陣、教員)に対するものであり、生徒に対するものでは一切ありません。 昨日、『14歳の栞』という映画を観てきた。3月に公開が始まっていたらしいが、公開前・当初からその存在を知っていたわけではなく、5月のいつだかにTwitterのタイムラインでこのツイートを見かけ「観てみたい」と思った。 この「観てみたい」という思いは、「自分が楽しめる作品だろうから観たい」というポジティブなものではなく、「この作品に対し