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【やさしい】多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)【不妊症ガイド】

たなかゆうすけです。

今回は多嚢胞性卵巣症候群のお話です。

多嚢胞性卵巣症候群はpolycystic ovary syndrome;PCOSを日本語に変換したものです。polycysticが多嚢胞性、ovaryが卵巣、syndromeが症候群のことです。

PCOSは、妊娠を考える上で排卵障害が問題となります。
まずは診断のお話をして、その後対応のお話をします。


PCOSの診断

もともとは1993年に日本産科婦人科学会から提唱された診断基準からスタートし、2007年に国際基準を考慮した診断基準に変更されました。その後長らく変更がなかったのですが、2024年に診断基準の改定が行われました。

PCOSの現在の診断基準は、

1.月経周期異常
2.多囊胞卵巣またはAMH高値
3.アンドロゲン過剰症または黄体化ホルモン(LH)高値

すべてを満たすものとされています。従来はなかったAMH高値が診断基準に含まれるようになりました。

PCOSの診断基準を満たしていない(特に排卵障害がない)のに、エコー所見やAMHのみでPCOSを疑うから不妊症です、なんてことはありません。排卵障害の原因として比較的多いものではありますが、きっちり診断して対応することが肝要です。


月経周期異常

PCOSには月経周期異常は必発です。月経周期異常は、無月経、希発月経、無排卵周期症のいずれかとされていますが、無月経は全然月経が来ない方、希発月経は数か月に1回しか月経が来ない方、無排卵周期症は定期的に月経のような出血があるけれど実際には排卵が起こっていない方を指します。周期が規則正しくても排卵していないことは、まれですがあります。

逆に、月経周期異常がなければPCOSではありません。エコーで卵胞がたくさん見えるだけで月経異常や排卵障害のない多嚢胞性卵巣(polycystic ovary)はただのエコー所見であり、多嚢胞性卵巣症候群とは明確に区別するべきです。排卵が問題なく起こっていれば、心配する必要はありません。


多囊胞卵巣またはAMH高値

多嚢胞性卵巣(polycystic ovary)はエコーの所見です。卵巣に小さな卵胞が数多く見え、ときに卵巣表面に真珠のネックレスのように並んで見えるため、ネックレスサインと呼ばれることもあります。少なくとも一方の卵巣で小卵胞が10個以上存在するものとされています。前述の通り、これだけでPCOSを診断するものではありません。エコーでたくさん卵胞があるといわれても、月経不順や排卵障害がなければ気にする必要はありません。

2024年の診断基準の改定で、AMHがエコー所見の代わりとして使用できるようになりました。AMHの測定はいつ行っても良く、20-29歳と30-39歳で異なるカットオフ値が採用されています。検査系によって異なりますが、20-29歳でだいたい4ng/mL、30-39歳でだいたい3ng/mLくらいです。

AMHもまた、単独でPCOSを診断できるものではありません。AMHが高いといわれても、月経不順がなく排卵に問題がなければPCOSではありませんので、心配は無用です。


アンドロゲン過剰症または黄体化ホルモン(LH)高値

欧米ではアンドロゲン過剰型が多いですが、本邦では黄体化ホルモン(LH)高値が多いとされています。このあたりは診断基準の差にも表れており、お欧州生殖医学会(ESHRE)、米国生殖医学会(ASRM)では異なる診断基準が用いられています。

アンドロゲン過剰症は臨床症状で診断することもありますが、基本的には採血で確認することが多いです。アンドロゲンとしてテストステロンを測定します。

LH高値は、LH基礎値高値かつ LH/FSH比高値で判定します。通常はLHよりFSHの方が高い値が出ますが(LH/FSH比<1.0)、PCOSの場合は逆転していることがあります。これも検査系によって異なりますが、LH/FSH比が1.2以上を参考とします。LH基礎値高値がない例やLHがほんの少しだけFSHを上回っている例などはPCOSとは診断されませんので、これらもまた排卵障害がなければ心配する必要はありません。

LH、FSHの採血評価は従来月経中に行われてきましたが、月経10日目くらいまではLH高値の検出率が低いことがわかってきました。卵胞が10mm未満であれば、月経中でなくてもLH、FSHの測定は行ってしまって問題ありません。


長くなったので、臨床症状と対応は次回以降で。



妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

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