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【やさしい】おなかの赤ちゃんを風しんから守ろう【初心者ガイド】

たなかゆうすけです。

今日は、風しんの話です。
長いですが重要なので、お時間のあるときにご一読ください。


・風しんというウイルス感染症


風しんは、風しんウイルスによって引き起こされるウイルス感染症です。

ウイルスに暴露され感染すると、14〜21日程度の症状のない期間(潜伏期間と言います)を経て、発熱、発疹、リンパ節の腫れなどの症状が出現します。

発熱は、約半数の方に出現します。
発疹ははしか(麻しん)に似ており、淡紅色で、小さく、皮膚面よりやや隆起しており、さらに数日かけて全身に広がることがあります。
通常発疹は3~4日で治るので、別名3日はしかとも呼ばれます。
リンパ節の腫れは、特に耳の後ろ、後頭部、首にみられることが多いです。

しかし、不顕性感染と呼ばれる症状のわからない感染が多く、症状があっても比較的軽いことが多いです。


・先天性風しん症候群


では、症状が軽いのに、なぜ風しんの感染が問題になるのでしょうか。
それは、おなかに赤ちゃんがいる状態でお母さんがウイルスに感染してしまうと、胎盤を経由して赤ちゃんがウイルスに感染してしまうことがあるからです。

大人の感染は症状が軽いのですが、赤ちゃんの感染は大きな問題を起こします。

赤ちゃんがおなかの中で風しんに感染することによって、先天性風しん症候群(congenital rubella syndrome:CRS)が出現することがあります。


・先天性風しん症候群の症状


先天性風しん症候群は、生まれつきの異常を含む様々な症状を呈します。
妊娠中の感染時期により重症度、症状の種類が様々です。
主な症状として、先天性心疾患(動脈管開存症が多い)、難聴、白内障の3つがあります。
耳と眼と心臓の症状です。
その他、精神発達遅滞を含む、多岐にわたる症状が出現します。

このように、お母さんの風しんウイルス感染によって、赤ちゃんにさまざまな症状を起こし、生まれた後の人生に重大な影響を与えてしまうことがあります。


・先天性風しん症候群の予防


いったん先天性風しん症候群になってしまうと、それ自体を治療して症状が出ないようにすることはできません。
出現した症状に対して、改善する治療を行うことはできますが、重要なことはそもそも先天性風しん症候群を起こさないことです。
先天性風しん症候群を起こさないためには、そもそもお母さんが風しんウイルスに感染しないことが重要です。

このため、お母さんの風しんウイルスへの感染を予防できる、風しんワクチン接種が重要となります。


・風しんワクチン接種の必要な方


ワクチンの必要な方は、風しんに対する防御力が低い方です。
防御力は、風しん抗体価という数字で表されます。
抗体は、体に風しんウイルスが入ってきたときに攻撃して、ウイルスから体を防御してくれる物質です。

風しん抗体価は、HI法とEIA法の2つの測定の仕方があります。

HI法では、XX倍というように倍率で結果が出ます。
抗体価16倍以下では、ワクチンの接種が推奨されます。

EIA法では、EIA価という数字か国際単位で結果が出ます。
EIA価8.0未満では、ワクチンの接種が推奨されます。


・風しんワクチンを接種する場合の注意点


風しんワクチンは、生ワクチンと呼ばれる種類のワクチンで、風しんウイルスの毒性を弱めて病原性をなくしたものを原材料としています。

妊娠中に風しんワクチンを接種してしまった場合でも、胎児に先天性風しん症候群を発症したという報告はこれまでありません。
しかし、ウイルスそのものを接種するという性質上、その可能性が完全に否定されているというわけではありません。

そのため、成人女性が風しんワクチンを接種する場合、妊娠していない時期に行う必要があります。
月経中に接種することが多いですが、妊娠の可能性がなければ、それ以外の時期にも接種は可能です。

また、接種した後には2か月間の避妊が必要です。
もちろん、妊娠中に接種はできません。
妊娠中に抗体価が低いということがわかった場合は、感染の予防を行いましょう。

過去に麻しんまたは風しんのいずれか一方に罹ったことのある人でも、再度麻しん風しん混合(MR)ワクチンを接種することは問題ありません。


・風しんワクチンで免疫を獲得できる確率


95%以上の方が、1回の接種で十分な免疫を獲得できます。2回の接種では99%の方が、十分な免疫を獲得できます。


・風しんワクチンの副反応


1回目のワクチン接種後の副反応として発熱が比較的多く見られます。
接種後1週間前後に多く見られますが、2週間くらいで発熱を認める人もいます。
また発熱に伴うけいれんが約0.3%程度に見られます。
その他には、発疹、アレルギー反応としてじんま疹が数%あります。

2回目の接種では接種局所の反応が見られる場合がありますが、発熱、発疹はまれです。稀な副反応として、脳炎・脳症が100万~150万人に1人以下の頻度で報告されていますが、ワクチンとの因果関係が明らかでない場合も含まれています。

卵アレルギーの方でも受けることができますが、重度のアレルギーの場合はご相談ください。


・男性の風しんワクチン接種


パートナーへの感染を予防するという側面と、風しんの流行を予防するという社会的な側面から、男性へもワクチン接種が推奨されます。


・妊娠中に抗体価が低いことがわかった場合


風しんは、主に『飛沫感染』と呼ばれる感染様式をとります。インフルエンザなどと同様の感染経路ですので、不織布マスクを着用する、手洗いを実施するなどの対策を行いましょう。
また、無用の外出は控えましょう。
妊娠中に風しんワクチン接種はできませんが、出産後は、早期の段階で風しんの予防接種を受けましょう。
授乳中でも接種は可能です。

また、同居のご家族も、風しんにかかったことがなく、2回の予防接種歴がない場合は、風しんの免疫の有無を確認するために抗体検査を受けることを勧めます。
その結果、抗体価が低いことが判明した方は、妊婦とお腹の子どもを守る観点から、予防接種を受けることをご検討ください。



・先天性風しん症候群対策事業について


各自治体では、先天性風しん症候群の予防対策事業が行われています。風しん抗体価の測定や風しんワクチンの接種を検討されている方は、これらの制度の利用を検討してください。


・先天性風しん症候群予防のための風しん抗体検査


大阪市でも、妊娠を希望する女性、妊娠を希望する女性の配偶者・同居者(妊婦の配偶者・同居者を含む)を対象として、風しん抗体検査が実施されています。


・昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性の方


1962(昭和37)年4月2日~1979(昭和54)年4月1日生まれの男性は、これまで予防接種法に基づく定期接種を受ける機会がなく、抗体保有率が他の世代に比べて低くなっています。この年代の方々を対象に、風しんの追加的対策が行われています。


これらの制度を利用して、おなかの赤ちゃんを風しんからしっかりと守ってあげてください。



妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

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