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【やさしい】排卵抑制法の使い分け【不妊症ガイド】

たなかゆうすけです。

前回は、排卵を抑制する方法の種類についてお話をしました。

今回は排卵抑制の使い分けのお話をします。

使い分けの肝は…

・トリガーに点鼻薬を使用できるかどうか
・新鮮胚移植を行うかどうか

の2点になります。


『トリガー』とは

卵子は、排卵する前は減数分裂という特殊な細胞分裂の途中で停止しているというお話を以前しました。卵子が最終的に成熟して排卵するためには、ある『刺激』が必要となります。

これを『トリガー』(maturation trigger)と言います。トリガーとは『引き金』のことです。成熟するための引き金ということですね。

自然排卵では、LHサージと呼ばれる現象がトリガーとなり排卵が起こります。LHとは排卵させるためのホルモンで、卵胞が発育しエストロゲンがある程度分泌された状態が持続すると、下垂体という脳の一部からLHが急激に分泌されます。これをLHサージと言います。

サージとは、電気系統などにおいて、異常に高い電圧が瞬間的に発生する現象を指します。排卵させるためのLHの分泌がこの現象に似ているのでしょう。

人工的にLHサージを再現する方法

このLHサージを人工的に再現する方法があります。以前、点鼻薬(アゴニスト)はFSHやLHの分泌を促す効果があるというお話をしました。アゴニスト投与により急激にLHが分泌され、LHサージと同様の減少を起こすことができます。

この方法を使用するためには、下垂体からLHが分泌できる状態であることが必須条件となります。

LHと同等の作用を持つ物質を投与する方法

LHは卵巣に作用し排卵を促しますが、このLHと同等の作用を持つ物質もトリガーとして使用することができます。妊娠中に胎盤から分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(Human chorionic gonadotropin;hCG)はLHと同等の作用を持っています。これを注射することで卵巣を刺激し、排卵が起こります。

hCGを投与する場合は、下垂体からLHが分泌できない状態であっても、直接卵巣を刺激するため排卵が起こせてしまいます。


トリガーに点鼻薬を使用できるかどうか

ここまで、『トリガー』として点鼻薬(アゴニスト)とhCGを使用するということをお話しました。

hCGは下垂体の状態に関係なく排卵を起こせてしまいます。それに対し、点鼻薬は下垂体からLH分泌が起こせないと排卵が起こせません。ここに排卵抑制の使い分けがあります。

つまり、点鼻薬を使用したい場合は、下垂体からLHが分泌できる状態でなければならないということです。

下垂体からLH分泌ができない状態とはどういう状態でしょうか。それは、アゴニストの連続使用でダウンレギュレーションが起こっている状態、またはアンタゴニストの効果時間内です。

アンタゴニストの効果時間はあまり長くないため、ある程度時間を空ければ点鼻薬は使用可能です。それに対し、アゴニストの連続使用で起こるダウンレギュレーションはなかなか解除されないため、点鼻薬は使用できません。

つまり、ショート法、ロング法では点鼻薬はトリガーとして使用できず、hCGを使用しなくてはならなくなります。その他の方法では、点鼻薬がトリガーとして使用できます。


新鮮胚移植を行うかどうか

新鮮胚移植とは、凍結を行わずに胚(受精卵)を採卵後1週間以内に子宮の中に入れてしまう方法です。新鮮胚移植を行わないで、全ての胚を凍結する方法(全胚凍結、Freeze-all)では、PPOS法を選択することがあります。PPOS法は持続的な排卵抑制効果があり、排卵率が低く、点鼻薬をトリガーに使用できるという、かなり使いやすい性質を持っています。

ですが、排卵抑制に使用するプロゲステロン製剤の特性で、投与後は基本的に新鮮胚移植ができなくなってしまいます。

このため、新鮮胚移植を行う場合は、PPOS法を選択することができません。PPOS法以外のすべての方法では、新鮮胚移植は可能です。


まとめ

排卵抑制の方法は…

・トリガーに点鼻薬を使用できるかどうか
・新鮮胚移植を行うかどうか

で使い分けを行うというお話をしました。

ここでまたいろいろと気になることが出てきたと思います。

・なぜ点鼻薬を使用するのか?使用が推奨される条件とは?
・なぜ新鮮胚移植を行うのか?新鮮胚移植を行う理由は?

この辺りは気になりませんか?

次は、点鼻薬を使用する理由についてお話しましょう。これは採卵の合併症と大きな関係があります。


妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

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