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家庭教師で担当した高3の子のはなし

アルバイトでコスパ最強と言われる家庭教師だが、僕は4年ほどやっている。生徒は中学生から40のおっちゃんまで担当したことがあり、幅広い。
その中でも、僕が印象に残っているのは、当時高3の女の子だ。
仙台に住んでいた子で、一回も会ったことはない。

指導したのは4ヶ月くらいかな。東北大を狙ってた子で、物理を教えるために僕自身も毎回予習しながら授業に臨んでいた。
僕が出した宿題はしっかりやってくるし、似たような問題をしっかり次はクリアするしで、地頭あり素直さありの、受験には一番強いタイプだった。

僕は、物理を教える際は常に原理だったり事象の背景を一緒に考えて、そこから問題を解くような教え方をしていた。
そのおかげか彼女自身も自然とその現象の背景を考えるようになっており、最初はさっぱりだった電磁気の分野もなんとか解けるようになっていた。

でも、僕が指導を始めたのは10月くらい。
当時のセンター試験までは4ヶ月ほどしかなく、どうしても勉強が間に合わないと思っていた。
それでも、可能性は全然ある。。
センター試験前日もスカイプで授業をし、心構え的なことも話して終えた。

翌日、彼女から「昨日先生に教えてもらったところでました!!」と連絡が来た。俺神すぎる、たまたまだけど。
そしてなんと本番の物理は自己ベストだったという。
その報告を聞いた時はめちゃくちゃ嬉しかったし、ほんまに受かると思った。

ただ、ある日の朝起きてスマホを見たら、「落ちました。」と連絡が入っており、その次に僕に対する感謝の連絡と浪人生活を頑張るという決意の旨が書かれたメールが来ていた。
それら2つのメールの間には、30分の空白があった。
それを見た僕は、この30分間で涙を流しながら決意を固めて僕にメールをくれた姿を想像し、悔しかった。

その時の僕が返信した内容。

ありきたりな内容だけど、本心だった。

そして彼女は浪人し、予備校へ。
塾選びなどもいろいろ相談に乗っていたのだが、その時に彼女から「先生のおかげで、苦手だった物理が少しずつ好きになっていきました。本当に感謝しています。」と連絡が来た。
これを見たとき、僕は悔しい気持ちでいっぱいだった。
家庭教師中、オンラインだったこともあって雑談はあまりしなかった。時々あるのは僕の一方的なしょうもない話。彼女からは基本的に相談したいことか、授業に関する質問くらいだった。
なので、彼女の性格が実際どんな感じなのかはぼんやりしていた。
だから、彼女の芯を貫いた姿勢にはびっくりした。
もし僕が受験生で、今から浪人するとなっても、先生に感謝の言葉をしっかり伝えることができるか自信がない。
僕のことを慕ってくれているのが伝わったからこそ、その思いを無下にしてしまったようで悔しかった。

来年の春に、彼女は合格し大学生になった。
僕の影響を受けて家庭教師を始めたと連絡をもらった時、あなたはめちゃくちゃいい先生になれるだろうなあって思った。

僕が言えるのは、どうか物理を教える時は暗記させるような教え方じゃなくて原理までしっかり考えてあげてね、ということだけ。
家庭教師をしていて思うのは、「教える」という行為は同時に「教わる」ことでもあるということ。
そういう意味で、コスパが良い。

100円で救える命があります。