見出し画像

『タイぐるり怪談紀行』を振り返ってみた(未掲載怪談のおまけつき)

どうも、バンナー星人です。

バンナー星人著『タイぐるり怪談紀行』ですが、早いもので発売から半年近くが経とうとしています。

「怪談」をたどりながら、タイを一周し、その土地独特の文化や人々の生き方に迫ってみようというコンセプトとともに、コロナ禍の厳しいロックダウンの中で書き上げたこの本。自分で言うのもなんですが、「かなり面白い」内容になっています。ただ自分が「面白い」と思うものが、一般世間からは割とずれているといるので、この本がいわゆる「売れる本」ではないということも客観的に理解はしているつもりですが、そこはおいておくことにしましょう(笑)。

この本は、タイの各地方の怪談、全39話で構成されており、そのほとんどが「タイ人の口から語られたタイの怪談」となっています。が、一方で、在タイ日本人の方から寄せられたこんな体験談も掲載されています。

「日本人を狙い撃つ軍人霊」(カンチャナブリー)
「古都のやさしい幽霊」(チェンライ)
「絶対出るホテル」(ウボンラチャタニー)

最初はダメもとで「タイでの不思議な体験談を募集しています」とツイッターで呼びかけたものの、予想外に多くの体験談をいただき、やはりこの国には「この世のものではない」ものが多く息づいているのだな、と嬉しくなったのでした。

特に「絶対出るホテル」という話をいただいた駐在員の男性は、もともと霊感はなく、幽霊の存在自体も否定していたにもかかわらず、トラウマ級の怖ろしい体験をされてしまったというあたりが、「霊感持ち」が語る怪談とは一線を画していて、非常に興味深く感じられました。(余談ですが、その方とはその怪談をきっかけに、たまに酒を酌み交わすほど親しくなり、「これもウボンのホテルの幽霊がとりもつ縁だな」と不思議な感覚を覚えたのです。)

また、残念ながら紙面の関係で、載せることができなかった体験談もいくつかありました。せっかくですので今日は、その中から私が大好きな話を一つ紹介したいと思います。臨場感がよりお伝えするためにも、いただいたDMからそのまま引用させていただきます。

不思議なことがあったのは今14歳の息子が3~4歳ぐらいの時です。 知り合いのお葬式に出席するためにドンムアン近くのお寺へ行った時のこと。その日はいくつかのお葬式が執り行われていました。普段はおとなしくしている息子がその日に限ってよく動き回っていました。私はその後を付いて回っていました。一人でかくれんぼのようなことをしたり、追いかけっこのように捕まえるような仕草もしていました。が、私はあまり気にすることなく。しばらくすると息子が「友達がムーデーン食べたいって」と私に言いにきました。まわりに小さな子はおらず、それに息子にムーデーンを食べさせたことがなかったのに、何で知ってるのだろうと不思議に思いました。
お参りが終わり帰る時に、隣で執り行われていたお葬式がまだ小さい男の子のお葬式だと知りました。急いでムーデーンを買いに走りお供えをしました。

いかにも子供が好きそうな、焼き豚に甘いタレをかけた「ムーデーン」。それが食べたいな、とお寺で新しくできた友達(語り手の息子さん)に伝えてきたという、男の子の幽霊。怪談なのに全く怖くはなく、胸がキュッとしめつけられるような切ないお話でした。

『タイぐるり怪談紀行』のあとがきでは、私が考える「心霊現象」について次のようにまとめています。

日本ではこの手の話に対して「信じるか信じないか」というように白黒分ける傾向がありますが、タイでは存在を頭ごなしに否定する声は少ないように感じます。見える見えないに関わらず、霊的なものを「この世に当たり前に漂っているもの」として捉えている人が多いこの国には「ウィズ幽霊」という言葉がぴったりかもしれません。

《中略》

しかし、このギャップを作り出しているのは、じつは時代に流れの中で日本人が失ってきた「目に見えないもの」への畏怖の心なのではないでしょうか。結局タイでは「昔は日本でも当たり前にいたもの」が「今でも当たり前に扱われている」、ただそれだけのことなのかもしれません。

その存在が認められている場所では、もののけたちも姿を現しやすいのでしょう。日本では霊体験がなかった日本人の方が、タイに来て初めて幽霊に遭遇するというのも、そう考えると納得のいく話です。

白状いたしますと、私には全く「霊感」が備わっておらず、すぐそこで心霊現象が起こっていても、わたしだけポカンとしているというぐらい鈍感な人間です。(その体験談は本の中でも「学校の怪談」として紹介しています。)子供の頃から人一倍興味があるのに、55年生きてきて、ただの一度も遭遇したことがないという、片想い状態が続いています。

タイでは、浮遊霊は、生きている人間から徳を分けてもらうことにより、成仏し、また来世を迎えることができるという信心があります。もしかすると彼らからすると、私は徳の少ない人間に見えているのでしょうか。

現在働いている学校で、教師として粛々と徳を積んでいけば、いつか彼らに振り向いてもらえる日が来るのかもしれませんね・・

怪談を読みながら脳内でタイ一周旅行ができてしまう、『タイぐるり怪談紀行』。この記事を読んで興味を持たれた方はぜひポチッとお願いします。

最後に・・

来週から一時帰国のため、しばらくNOTEの更新はストップいたします。次の更新がいつになるのか、「ナンプラーのかほり」を継続するのか、それとも「タイ怪談」に特化していくのかもまだ未定ですが、とにもかくにも日本では精一杯日本を満喫したいと思っています。

ではそれまでみなさんもお元気で・・











この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?