舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣- 感想(1/22ソワレ、1/23-24マチネ)

 公演が終了したので、1/25付のふせったーから転記しました。ネタバレしかありません。

 見てきました。この大変な時期に。
 緊急事態宣言下でいつ公演中止になるかわからんし、ステアラ自体が故障の多い劇場らしくて気が気でなかった。
 直近で機構不備で公演中止ってのもありましたしね……。
 まあ、なんとかトラブルもなく見ることできて、それが一番良かったなと思います。
 このご時世にやってくれるだけでありかたいと同時に、こんな大規模公演が吹っ飛んだらどんだけの人間のクビが一緒に飛ぶかわかんないし、やるしかないよなあ……とも思う。

 そんなわけで天伝の感想です。
 既存作は全て観劇済、ネタバレと考察もどきが入り乱れた内容になりますが、ご了承ください。

 舞台は慶長十九年の大坂。
 戦国時代最後の戦・大坂冬の陣の直前に出場した六振り。
 一期一振、鯰尾藤四郎、骨喰藤四郎は徳川陣営に、山姥切、加州清光、宗三左文字は築城中の真田丸に潜入していた。
 共に時間遡行軍の干渉はない。だが、徳川本陣では家康の傍に見知らぬ刀剣男士がついており、真田丸にはかつて刃を交わした弥助が姿を見せる。
 徳川本陣の異変を知らせる一期は真田丸にて山姥切たちと合流、時間遡行軍に狙われている豊臣秀頼の警護を請け負うことになる。
 徳川家康が時間遡行軍を使って秀頼暗殺を企てたのかと思いきや、家康もまた時間遡行軍に狙われていた。
 一体、誰が何のために? 調査を進める一行はやがて、弥助と真田信繁が手を組み、正史に抗おうとしていることを知る。

 OPで天伝の時系列が如伝黒田節親子盃の後と判明しました。
 布の人が布の人だったので慈伝より後ってことはないだろうとは思ってたものの、こんなにジョ伝と地続き(24年後)の話がくるとは思ってなかったなあ。
 とはいえ、まるっきりジョの続編というわけではなく、秀頼と一期一振、家康と太閤左文字の話も絡んできて、一言で説明するのは難しい。
 刀ステはいつもそうだけど、いろんな切り取り方ができるので、あらすじ書くのも難しいです。
 主軸は大坂冬の陣で何が起きたのか、とその結果になると思うので、そこから書く。

 黒田官兵衛亡き後の弥助は、官兵衛の残した目安録と、官兵衛が阿形・吽形と名付けた時間遡行軍の一味を頼りに、歴史に付随する諸説へと、信長を逃がし、生き長らえさせるべく暗躍する。
 更には、阿形・吽形からいずこかで滅びた本丸の審神者の手を授かっており、弥助が手にしていた信長の刀に、刀剣男士と戦ったという逸話を宿らせ、その命を以って信長を逃すための刀剣男士を顕現させようと計画していた、というまあとんでもない野郎になってた。
 とはいえこれは如水の推測が元になっているので、如水がとんでもないというべきだろうか。

 弥助はさらに真田信繁を巻き込む。史実に存在しない真田十勇士の逸話を以って刀剣男士の顕現を図り、信繁自身と秀頼の延命のために戦うよう唆す。
 もちろん、諸説であろうと、史実を書き換え得る行為を見過ごす訳にはいかないと結論付けた山姥切たちは大阪城、真田丸、徳川陣営に分かれて奮戦する。
 果たして、弥助が生み出した『刀剣男士』は人型を保てず、化け物にすらなれない不完全な代物であった。
 真田信繁の部下たちは何も生み出せず、絶望の淵に立つ信繁が歴史に一太刀くれてやると言い遺し、冬の陣にて自害するも、歴史を改変することは叶わなかった。

 もう、弥助と真田信繁、かわいそすぎでは?
 特に真田信繁。弥助はもうジョ以降から絶望抱えて生きてたし、今更惜しむ命でもないって覚悟決めてただろうけど、信繁はまだまだ生きたかったんじゃないのかな。

 秀頼と家康は戦場で死ぬが本望、とばかりに出陣したがるけど、信繁は最初から最後まで戦って死ぬつもりはなくて、ただ生き残って秀頼を生かしたかったように見える。
 やっぱりこの辺は弱小国衆生まれで、生き延びることしか頭になかった真田らしい考え方なのかな。
 それとも、弥助に助かる可能性を出されたからこその結末なのか。
 死ぬまで生きよが真田の家訓、と信繁はいうが、死を受け入れられなかったから夏の陣まで生きることすらできなかったのかと思った。

 維伝で諸説が正史に影響与えてる説を南海先生が唱えてたけど、諸説が正史に影響を与えないようにその時間軸を封鎖するとも言ってたような?
 実際天伝で失敗してるし、意味ないよってことを、信繁の死で示してくるのマジ無慈悲。
 歴史に一太刀与えてやる、からの真田ゆかり政府顕現男士よる影武者宣言の流れ、血も涙もなくて笑うしかねえ。

 そもそも二度と歴史に現れないからこそ諸説と言われるわけで、諸説にに逃げたところで、秀頼や信長がその後大人しく一庶民やるかね?
 一度でも天下を目指し、それを目前にしている人物が、ひっそりと生き延び行方不明でーす、なんて歴史に満足するとは思えないな。

 秀頼と家康は今を生き延びるより、後世にまで伝わる華々しい名声に憧れている節がある。秀頼は足軽から天下人に上り詰めた秀吉に、家康は本能寺で燃えて自害した信長に、それぞれ感化されており、自分もそうなりたいし、そうなるチャンスはもう大坂の陣しかないって感じ。
 この二人は真田と違ってそれなりに力のある大名だから、とりあえず生き残るのが第一! みたいな次元では生きてないんだろうなあという気がする。

 天伝では弥助が時間遡行軍をけしかけてたけど、弥助が首謀者かというと怪しい。
 首謀者候補の第一は如水。如水は外側から刀剣男士と時間遡行軍について調べるだけで、未来からやってきたのではないかと推論を立ててるし、尚かつ綺伝でも別時間軸の自分を認識してるっぽい。
 信長に影響された人物が多いので、いつか信長が首謀者顔して出てくるんじゃないかって身構えてたんですけど、現状、如水が最もやばい。

 それとも時間遡行軍側が、如水を利用しているのか?
 刀剣男士を作り出し、己の望む歴史を正史に押し上げようとする如水の野望につけこみ、戦況を有利にしようとしている?
 いずれにせよ、どうすれば刀剣男士を作れるのか、顕現の方法について調べている何者かがいる節が見られる。
 その実験結果が悲伝の鵺なのかなあと。
 天伝の顕現男士(仮)は人体にすらなれなかったけど、鵺に関しては顕現当初から人型を成しており、刀剣男士に限りなく肉薄している。
 天から悲の間で顕現の技術が固まったと考えられるけど、これは単に敵側の進化なのだろうか。
 維伝の朧志士も刀剣を依代にしていないが、刀剣以外からでも顕現できるようになったのか?
 よくわからんけど時間遡行軍もやばい。

 ジョ伝推しだから弥助の続投と如水の暗躍にワクワクしちゃってめっちゃ書いちゃった。今回の主役は一期一振だから、そっちも書く。
 弥助と信繁の話だけだったら物凄くテンション下がったままだったろうから、秀頼と一期一振の話があって良かった。

 私はいち兄が好きなので、出てるだけでも嬉しいですが、礼儀正しく真面目で、品があってめっちゃ強いプリンスが現実に顕現してることに驚くね。
 中の人、初めての刀ステで座長でしかもステアラみたいな特殊な劇場で……って、胃に穴開いたりしない? って思ったけど、見てる限りでは、前からこの本丸にいたんじゃない? むしろ一回どっかの伝にでてた? ってくらい違和感なくてすごい。
 蒼木さんもだけど、刀ステ座長はもれなく強心臓なのか? 強心臓になってしまうのか?
 3ヶ月間100公演とかとんでもないけどこれからも頑張ってください。

 いやそのいち兄がいち兄すぎていち兄じゃんうわーっ!!しか感想でてこん。
 殺陣の動きのひとつひとつが明瞭で、鮮やか。元々身体能力が高いとは聞いてたけど、美しい殺陣だ。
 いやみんな動き綺麗だけどさ、一期一振らしい手の付け方だなあと、見てて気持ち良かった。殺陣の詳しいことはわからないけど、血振り(多分)がめっちゃかっこよくて好き。
 あれ良いよね。回転させるやつも派手で好きなんだけど、いち兄がやるならあれだわっていう納得感がすごい。

 その一期と秀頼は共に、秀吉の記憶がなく、何もない状態で出会う。
 自分自身に確かな記憶がない秀頼は、自分が何者なのかを常に疑い、自分が自分であることの証明に戦場を求める。
 この点では、信繁にも通じるところがある。
 父・信幸の名は知られていたが、裏切りを繰り返した挙句の九度山蟄居。信繁にはそれまで、表舞台に出る機会に恵まれず、大坂の陣で自分自身を証明するために秀頼の元へ向かう。
 共に、父の功績を背負うだけの何もない子供たちであり、たどる末路は史実通りになるわけだけど、その過程は両者で乖離している。

 信繁は弥助や遡行軍に傾倒し、自分自身と向き合うことより歴史を相手にすることを選び、何を成すこともできなかったのに対し、秀頼は一期に、太閤に出会うことで秀頼としての人格を得、豊臣秀頼としての生を全うする覚悟を決める。
 一期も太閤の言葉によって救われ、秀吉の思い出を胸に、歴史の守り刀であることを改めて誓う。
 未来に絶望するよりも、今を生き、できることを懸命に。
 天伝全体からそういうメッセージを受け取ったので、観劇後は爽やかな気持ちだったし、次の夏の陣でステアラ来るまで頑張って生きよって思いました。

 他、気になることといえば、未来のまんばちゃん行方不明事件。
 慈伝のあと修行に行ったはずだけど、維伝では朧になってるし一体どうなっとんねんステ本丸。
 これは夏の陣で回収されるやつなんですかね?
 天伝で弥助とのカタはついたけれど、今ひとつ悲伝への流れにはたどり着いてない雰囲気がする。
 夏は三日月と染鶴だから何かしらの進展がないと気になりすぎて夜しか寝れない。

 真面目な感想書くの疲れたから、好きな台詞とかシーンについていう。

・加州「恩賞目当ての浪人衆でーす」
 第一部、真田丸潜入時。まったく恩賞目当ての浪人っぽくなくて草。
 台詞、声、仕草、立ち振る舞い、殺陣、すべて加州清光そのものでは???
 ステ本丸審神者の顕現能力、本物すぎる。

・山姥切「ここでお前たちを斬ればいい」
 第一部の真田丸にて。
 弥助・阿形・吽形に刀を突きつける四振り。殺意が高くて良いね!
 隊長の気質が出るのかね、やっぱり。
 この後、秀頼に名を問われた一期が、どうしよって確認したとき、山姥切が首を振って、加州が口元で指を立ててたのなんかよかった。
 事情があって名乗れない、とスマートに切り抜けた一期の解釈一致。
 やまちゃん・ぶっちゃん・だぬだぬは取り繕おうとして藪蛇になりがち。長谷部もまあまあダメ。
 綺伝面子は交渉能力高いから、やっぱり隊長の気質か……?

・太閤左文字劇場
 ♪すごいぞ、すごいぞ、太閤左文字! えらいぞ、えらいぞ、太閤イェーイ!♪
 このフレーズが頭から離れないので責任とって欲しい!!
 ミュージカルは苦手のくせに、維伝の罠ダンスとか突然差し挟まれる謎の面白劇場が好きすぎて困る。円盤来たら絶対繰り返し見るやつ!!
 私の席からは太閤左文字劇場に頭抱える山姥切と、混ざろうとする鯰尾(山姥切に止められる)が観測できました。

・宗三「織田信長はあの者の心にも刻印を残したのですね」
 第一部、秀頼警護についた後の弥助とのやり取り。魔王の刻印を残されたという逸話で顕現した宗三は、弥助にとってどういう存在だったのか。同志というほどではないにしろ、なれるなら宗三のようになりたかったのかなあとか考える。
 最後、弥助が生み出した刀剣男士未満の何かは宗三が介錯したようなものだし、信長の刀によって末期を迎えたことが、弥助にとって僅かでも救いになっていればいいんだけど。

・山姥切「俺を写しと侮ったことを後悔させてやる」加州「嘘、嘘、侮ってないよ」(うろ覚え)
 きよみつには冗談をいうのかくにひろー!!!(大声)
 ちょいちょい初期刀組をいれてくるのほんま心臓に悪いやで……。
 慈伝でもいきなりいれたやろ!?あかんて、こっちは簡単に死ぬんやから!!!

・山姥切/一期「俺/私たち刀剣男士は歴史を守る」
 毎公演、何度でも繰り返される台詞ですがやはり好きだなあと思う。

・山姥切「そこに生きる人々に強いておきながら、何も失いたくないなどと思っていない」
 弥助との対決にて。信長に救われ、義を覚えた弥助に「歴史だから守る、本能だから守る。歴史の奴隷となったあなたたちに、大切な者を失ったものの辛さがわかるはすがない」と詰られことへの山姥切の返答。
 台詞はうろ覚えかつ、飛んでると思う。
 戦い続ける座組らしい台詞。悲しみの淵から何度でも立ち上がり、前を向く。
 この先、悲伝で彼が迎える別れを知っているだけに、そうあって欲しいといっそう願う。
 コロナ禍という時期とも相まって、実に勇ましい宣言。
 ところで序で山伏折れてた件について忘れたわけではないのだが??
 三日月から骨喰、骨喰から山伏に渡ったお守りがなかったら復活してないからなぁ。弥助同様、大切な者を失った山姥切がいてもおかしくない。
 どうでもいいけど中の人、ぼろぼろになるのが似合うな。PPVV2でもぼろぼろだったし、みんなこの人をぼろぼろにしたいんか?

・一期「思い出よ、安心して眠っていてください」
 今だけは主を守る刀に。その後はお許しください、私は歴史を守る刀となったのですから。
 分を弁えた一期らしい。この前に秀吉の台詞をバックに秀頼と打ち合うシーンも大変にエモい。
 秀頼の中の人も殺陣うまくてやってくれないかなあと思ってたから満足。人と刀剣男士の力の差は歴然としてるってのがはっきりわかる殺陣だったな。
 自分の敵う相手ではないと悟り、一期の正体を受け入れ、蒼空の兵よ、と呼びかける秀頼様まじで一生ついてくわってお気持ち。
 鯰尾が冬の陣でよかった、秀頼様が死ぬ場所じゃないからって言ってたのも印象的。燃えて記憶はなくても、元主の死は辛い。
 記憶がないことは彼らの不安定さでもあるけど、同じ境遇の兄弟がいることは何より心強い。
 秀頼が弟たちがお前を何者かにしてくれるのだな、という台詞を聴きながら兄弟尊い……って思った。
 はーずおばみのキャスティング、はちゃめちゃにいいな(唐突)。立ち姿そっくり!だけど、別人だってすぐわかる。今日も脇差兄弟は最高。

・加州「生きるってのはそれだけで戦だ」「あんたが作り上げた歴史のその先にあの人がいる」「あんまり大事に使ってくれなかったけどさ、俺が知る限り最高の剣士だ」
 加州清光総浚い。全て、徳川家康との打ち合いのシーン。
 秀吉のように老いさばらえ、床で死ぬのは嫌だ!戦で死にたい!だから大坂の陣に間に合ってラッキー!!とかいう戦ジャンキー家康様への加州の喝。
 加州清光の主人は夭折してるだけに、長生き確定してる家康が腹立たしかったんやろなあ……。
 家康には生きてもらわなければならない。でなければ、加州清光が沖田総司に出会うことすらなくなってしまう。
 それまで飄々としていた加州の本音をストレートで食らってしまい、呼吸止まったや。
 
・終盤、三方同時歴史改変時の殺陣。
 ソイヤ! ソイヤ!
 手拍子したくなっちゃっうくらい楽しかったが圧倒的に目が足りない。360°をフルに使った殺陣はステアラしかできないよなあ〜!
 そういえば、敵脇差初登場では?? 今まで見たことないやあの蜘蛛っぽいやつ。出てこないのはまあ邪魔だからだろうなとは思ってたけど、満を持してステアラに出てきて嬉しい。
 近くで見ると迫力があるし、遠くから見ると合戦絵巻みたいでめっちゃ良かった。
 ソイヤ! ソイヤ!

 他にも沢山良いとこ楽しいとこあったけど、キリがないからこの辺で。
 いや〜天伝楽しかったな〜。
 刀ステは地獄地獄って言われるけど、本当にそうかなあ?
 もちろん辛いこと苦しいことを経験している本丸だけど、だからこそ垣間見える信頼関係が眩しく見えるし、この本丸なら乗り越えられるんじゃないかなって思える。
 夏の陣でどうなるかわからないけど、私はこれからもステ本丸の行く末を見届けたいです。

おわり。


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