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3年目のデビュー

久しぶりに映画を観た。

日向坂46ドキュメンタリー映画 3年目のデビュー

前進の「けやき坂46」を経て、新しいスタートを切ったアイドルグループ「日向坂46」のデビュー1年目に密着した、ドキュメンタリー映画である。

気がつけばもう6回も観に行ってしまった。

全編に触れているとおびただしい文量になってしまうため、特に語りたい部分をピックアップして感想をつらつら書いていこうと思う。

キャプテン

映画全編を通して、各メンバーの当時の映像や、当時を振り返るインタビュー映像が使われている。その中でも圧倒的に出演回数が多かったのが、キャプテンの佐々木久美さんである。

久美さんの言葉には、その時のグループの置かれている状況が色濃く映し出されている。当時の想いがギュッと詰め込まれた飾らない言葉に、幾度となく心を揺さぶられた。

「久美さんがキャプテンでよかったな」と感じる場面はこれまでに何度もあったが、今回の映画を通じて自分の納得いく形で整理・言語化できた気がする。キーワードは「安定感」「安心感」だ。

安定感

久美さん自身のバランス感覚、安定感はグループの中でも群を抜いている。グループや自分の状況を俊敏に察知し、立ち振る舞いを変えられる柔軟さには、俗っぽい言葉だが「人間力の高さ」をひしひしと感じる。

久美さんがバラエティで動くとき、外番組に出るとき、ライブMCをしているとき、インタビューに答えているとき、どの場面を切り取っても安心して観ていられるのは、本人の安定感を感じるからだろう。

アイドルになるまでどんな人生を送ってきたのか、我々は聴いた情報からしか判断することはできない。しかし、これまで少なからず「自分の頭を使って困難を切り開いてきた」ということは容易に想像がつく。

役割としての「キャプテン」は、この元々あった素地をより一層輝かせている。
キャプテンという役割は、グループを束ね推進させる人財として久美さんを求めている。逆に久美さんは、キャプテンであることが、厳しいこともはっきり伝えることができる理由の1つになっていると感じる。(もちろんキャプテンでなくともそういったことを伝えることはできるはずだが、役割が後押しになっていることは間違いないはず。)

久美さん自身とキャプテンという役割は、相互に良い影響を及ぼしあっており、それが元来持っていた安定感に拍車をかけていると強く思う。

安心感

人間として安定しているなと感じる人が、必ずしも他人に安心感を与えられる存在とは限らない。

久美さんは安心感を与えられる人間である。

当然、礎になっているのは久美さん自身の安定感であるのは間違いないが、その上で、紡ぐ言葉や立ち振る舞いには、人々の心を動かす力が込められている。

劇中で印象深いシーンのひとつに、ライブ前の円陣があげられる。
ここで毎回久美さんが紡ぐ言葉は、メンバーのやる気を一層奮い立たせ、同時に安心感を与えるものになっている。

本人が意識しているのかどうかは分からないが、自分たちの置かれている状況を確認し、どこに向かうべきかを明確に示し、自分を含めた全員を激励する力強い言葉は、ペップトークの要件を綺麗に満たしている。

補足:ペップトーク
スポーツ選手を励ますために指導者が試合前や大事な練習の前に行う短い激励のメッセージのこと。受容,承認,行動,激励のポイントを重視する。

もちろん各メンバーもそれぞれ思うところはあって、同じようなことを感じていると思われるが、”相手に伝わる言葉” で正確に伝え、安心感を与えることができるのは、久美さんの言語化能力あってのものだろう。

また、グループの先頭に立つこともあれば、一歩引いて後ろから支えることもできる立ち振る舞いは、メンバーがのびのび活躍できる大きな要因の1つであると思う。

周りに安心感を与えながら、自身もプレーヤーとして戦うその姿に、尊敬が止まらない。


映画を通して、今まで以上に久美さんが好きになった。

謎のシーン

「束の間の休日...」のナレーションからはじまる例のシーン、あのボタンが目の前にあったら「ちょっと待てい!」と叫びながら映像を止めているところだった。

SSAでのライブを終え、「自分たちらしさとは何か」を見つけられずにいるシーンから、急に推しメンのほのぼの映像が流れてきてひっくり返った。

(ミクチャンが予約してくれました)(私がやらなきゃいけないんですけど〜)(噴水)(行きマース)(チャランチャラン)(桃ジュース)(ウニとおにく)(急な食レポ)(うめいうめい...うめい)(出ました)(フォーメーション近くてたすかる)(監督ありがとう)(めいみく続けてくれ)(やはりやんふぁむは神)

感想文をザッと読んで、このシーンの必要性を問う意見をいくつか観たが、必要に決まってんだろ。推しメンが出てんだから。

それは冗談として、初見ではインパクトの大きさに何も考えられなかったが、何回か観ているうちに当該シーンの役割が見えてきた。

1つは、グループとしての結束の高まりを示すこと。この2人は以前は特に接点はなかったが、フォーメーションが近いことから仲良くなったと語っている。

ドラマ撮影やフェスといった激動の夏を乗り越えたことで、期の壁を超え、グループとして一体感が増したことをしっかり受け取ることができた。

それを当人たちから発信、つまり”内部から見た日向坂”を表現したあと、関係者各位、つまり”外部から見た日向坂”を表現していたのは、日向坂というグループの今を大きく捉える自然な流れだったように思える。


2つ目は、メンバーの成長を感じることができる点。先に久美さんの言語化能力の高さを語ったが、お世辞にもそれが上手いとは言えない東村芽依さんが自分の意見をしっかり発信できていたのは、成長を感じざるを得なかった。

ひらがな時代から今に至るまでの映像を見てきたあとで、立派に話している姿を見ると、感慨深いものがある。


3つ目は、めいみくの可能性を世間に知らしめるため。
めいみくは神なので。

日向坂とは

映画後編は特に、「日向坂とは何か」の答えが見つからず、メンバーが葛藤するシーンが多く見られた。

他のアイドルとは違う道。それはハッピーオーラなのかもしれないし、誰かを応援することなのかもしれないし、その他であるかもしれない。彼女たちの模索と挑戦はこれからも続くのであろう。

外側から見た部分では、映画の主軸として一貫して表現されていた「グループの結束」が印象的だった。互いに認め合い、困っていれば手を差し伸べ、一緒に乗り越えていく。一歩間違えれば馴れ合いにもなり得る概念が、非常に高いレベルで浸透していると感じた。

これを成立させているのは、一人ひとりの真摯さと、グループが好きだという想いに他ならない。ファンはそんなところに惹かれているのではないだろうか。

ドキュメンタリー映画として

映画のストーリー自体は、ドキュメンタリー映画の性質上、ある程度日向坂を嗜んでいれば知っていることが大半である。

それを踏まえても、体系的に歴史の説明がなされ、その時々のメンバーの心境が聴けたのは発見も多く、映画としてとても楽しむことが出来た。

前進の「けやき坂46」を経て、新しいスタートを切ったアイドルグループ「日向坂46」のデビュー1年目に密着した、ドキュメンタリー映画である。

本記事冒頭で簡単にこの映画の概要を記したが、この説明にもある通り、本作品は「日向坂46のデビュー1年目に密着した」映画である。

彼女たちの悩みや葛藤と聞くと、どうしてもひらがな時代が思い浮かんでしまうが、圧倒的な快進撃を続けたデビュー1年目である昨年も、裏では多くの悩みや葛藤が存在し、戦っていたことを再認識することができた。

映画の構成として「グループの結束」が主軸となっていたのは先にも述べた通りだが、映画のクライマックスとして、2月に行われたDASADAライブを持ってきていることを改めて認識したときは鳥肌がとまらなかった。

魅せ方の上手さももちろんあるが、デビュー1年目の最後を飾るイベントにドラマ性が生まれ、グループとして大切にしてきたことが爆発するような機会になったのは、”持ってる”としか言いようがない。

劇中でピックアップされた青春の馬は、本人たちの中でもブレイクスルーを引き起こすきっかけになった一曲として描かれており、演出も相まって非常に心に刺さるものになった。この瞬間の感動は色褪せず、何回も観に行ってしまうのはこのシーンが強く影響していると今思った。

別れと再会を経て、改めてグループとして仲間を支え合う強い意志を感じられた本当に素敵なライブだった。

余談ではあるが、DASADAライブは一刻も早く円盤化してほしい。
金村美玖さんの気迫あふれる青春の馬は言うまでもなく、齊藤京子さんのこんなに好きになっちゃっていいの?、丹生明里さんのドレミソラシド、そして東村芽依さんのソンナコトナイヨ、その他どれを取っても素晴らしいパフォーマンスだった。私自身、最後に直接メンバーを見た機会がそのライブなのもあって、思い出を風化させたくないというのが1ファンの願いである。


さいごに

多くの方が言っているように、映画を通してより日向坂が好きになったし、これからも応援しようという気持ちになれる素晴らしい作品だった。

メンバーのパーソナリティを深掘りする時間は多くなかったため、グループを全く知らない人にとっては、疑問が残る部分があるかもしれない。
しかしながら、日向坂がなぜ勢いに乗っているのか、愛されているのかは十二分に伝わる作品であることは間違いない。全く知識がなかった人も、映画を見れば勝手に自走をはじめるはずなので、自信を持って薦めることができる。

いろいろなオタクを10年以上やっているが、いつだって勢いのあるコンテンツを応援するのは楽しい。

波に乗っている分、これから先減速することや停滞することもあるかもしれない。しかしながら、これだけ魅力に溢れたグループであれば、なんとかしてその壁を乗り越えてくれるはずだと確信できる。

どこまで見届けられるかは分からないが、彼女たちの挑戦をこれからも応援していきたい。

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