第134回 文化財の射程はどこまでか

1、近現代にも記念すべき物がある

『月刊文化財』644号で「近現代の文化財の展望」という特集が組まれていました。

特に気になったのは、

文化庁文化財部記念物課の名前で寄稿されていた「近代の記念物の保護」

記念物といっても馴染みがないかもしれませんが、簡単にいうと、その土地に刻まれたモノ、不動産的な文化財です。

美術工芸品は動産ですし、建造物は別になっているので、

それ以外が記念物に含まれます。

史跡・名勝・天然記念物に分かれ、名勝は庭園や景色の優れた景勝地、天然記念物は巨木や珍しい動植物などが範疇です。

史跡は、貝塚や古墳、城跡などの遺跡の中からとくに価値の高いものが対象になります。歴史的な事件が起こった場所が該当する場合もあります。

2、政治状況に価値判断が左右される

今回、話題とするのは「近代の史跡」。

記事によると戦前の指定(大正8年1919)は2件、大村益次郎墓と小泉八雲旧居に限られるようです。

大正時代からみたら明治時代はごく近い過去であったので、近代の史跡として指定して残して行くという発想になりずらかったのは想像に難くありません。

逆になんでこの2件が、と思わざるを得ません。

とくに大村益次郎なんて、長州閥の政治的な配慮すら感じてしまいます。

また、当時は「明治天皇聖跡」として行在所(天皇がご休息・ご宿泊された場所)377件が史跡になっていましたが、昭和23年に一斉解除されました。これもまた政治的な力学で動かされたものですね。

どのような場所が聖跡とされ、今どうなっているのかをまとめた研究とかあるんですかね。

ちなみにうちの町のあるところには当時の名残を残した看板もあります。

3、世論が文化財の価値を決める

平成7年には記念物の文化財についての指定基準の一部改正を受け、第二次大戦終結頃までが対象となり、分野も拡大されました。

原爆ドームの指定もこの年になされまそした。翌年世界文化遺産に登録されています。

むしろ世界遺産候補として推薦するためには、国内の法律で保護されていることが要件となっているため、改正された、という見方が正しいのでしょう。

改正に至るまでには世論の盛り上がり、具体的には署名運動などがあったようです。

なんだか例えは悪いですが泥縄式(泥棒が来てから捕まえるための縄をなう)みたいでやな感じですね。

でも実際、行政にいるとこんなことばっかりです。

それでも昨日よりは今日、今日よりは明日の社会が少しでもよくなっていますように。

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