第160回 栄誉と名誉

1、読書記録 7

今回紹介するのは

佐藤厳太郎

会津執権の栄誉

会津の名族、蘆名家の落日を描いた歴史小説です。

2、時代も身分も関係なく人はもがく

会津執権と呼ばれた蘆名氏の家老、金上盛備を軸に、章ごとに主役が変わる形で物語は進みます。

最終章で描かれるのは伊達政宗が、豊臣秀吉に恭順するため、小田原に参陣する場面。

政宗の心理描写が迫真で、これも見どころではあるのですが、

個人的なおススメポイントは別にあります。

それは描写される人物がみな悩みながらも必死に行きている様が伝わってくるところ。

金上氏の家臣、蘆名氏からみたら陪臣ということになる白川芳正、さらにその家臣の沼崎喜右衛門、しまいには合戦場で死体から金目のものを奪いとる老婆にすら物語があります。

英雄譚だけではない歴史小説として非常に魅力的です。

3、名族蘆名氏の略歴

蘆名氏の先祖は現在の神奈川県三浦半島を苗字の地とした三浦氏です。

三浦義明が源義朝を後盾として庇護したことから、源氏と強い繋がりが生まれ、頼朝からも重用されます。

義明の子である佐原義連は源平合戦で活躍しますが、宝治合戦で本家は没落。

北条氏側についた一族が再興を果たし、庶流が会津を領して蘆名氏を名乗ることになります。

室町時代には京都扶持衆として名を残し、16代目盛氏が最盛期をもたらします。

盛氏は始め、伊達家の内紛である天文の乱に乗じて勢力を拡大し、常陸国の大名佐竹氏を牽制するため北条氏康や武田信玄と結ぶなど巧みな外交を発揮しています。

しかし若くして息子盛興を失った後は後継者に悩まされ、二階堂氏から養子として入った盛隆も家臣に切られ、その子亀王丸も疱瘡で夭折するなど不幸に見舞われます。

結果、家臣団は次の当主に伊達政宗の弟小次郎を迎えるか、佐竹義重の子義広を迎えるかで家中が対立。それが遠因となって崩壊していきます。

4、物語から何を読み取るか

新しい枠組みを作ることは非常に困難です。

それが壊れる時は、わずかなほころびから連鎖的に悪いことが重なって、取り返しがつかないようになるのでしょう。

大名家を支えってきた執権であっても、大いに迷い、わずかな判断ミスで悲劇を迎えます。

一方、蘆名を滅ぼした伊達家は何度も危機に陥りながらも明治まで大名として家を全うします。

そこにはなにか違いがあったのか。時の運なのか。考えてみると面白いです。

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