第103回 そうだったのか島津氏
1、大河ドラマでも話題の島津氏研究
読みました。
編者の新名一仁さんを始め、30〜40歳代の最前線にいる研究者の珠玉の論考が並んでいて、すごくステキな本でした。
読書記録代わりに気になったところを少しでも紹介できればと思います。
2、一言書評みたいなもの
水野哲雄氏の「中世後期の島津氏は、室町幕府・朝廷に何を求めたのか」より
競合する近隣の領主に対抗する必要があり、「セルフ・プロデュース」するために、将軍や朝廷の権威を求めた。
という表現は若手らしい表現ですよね。その甲斐あって、16世紀の文書には将軍家の一門や管領家に次ぐ礼遇を得ていたことが記されているそうです。
伊藤幸司氏の「南北朝・室町期、島津氏の「明・朝鮮外交」の実態とは?」より
15世紀前半の朝鮮では対日通交の規制を強め、有力者の使者でなければ受け入れず、さらには遠方であるほど厚遇した。そのため島津氏の名義を語る海商が少なくなかった。
とあります。中世人のたくましさを感じるところですね。
極めつけは読書メーターの感想でも触れていますが、
太田秀春氏の「朝鮮出兵における島津氏の異国認識」より
戦火を逃れた住民をもとの集落に戻すための「還住(げんじゅう)政策」。島津氏は他の大名よりもうまくいっていた。例えば味方についた朝鮮人を説得役にしたり、戻ってきた人には「島津之人」と記した札を渡して安全を確保したそうです。万が一島津の兵士が住民に危害を加えたら申し出るように、とお触れをだしてもいました。
もともと島津氏は朝鮮はもとより琉球や他の島々と交易を盛んに行なっていましたので、他国の人とうまくやるための感覚を持っていたのかも知れませんね。
そういえば我らが伊達の殿様も朝鮮へ出兵していますが、半島での戦いはあまりメディアでは目にしないような気がします。研究はあるのでしょうか。少し探してみようかと思います。
3、考古学研究の最前線は
「研究の最前線」シリーズは続々と刊行されていますし、SNSでも話題になっていることがよくわかります。
考古学もこの流れにのって、一般の歴史ファンにも手が届く、かつ専門家の最新の研究成果が反映された新書が刊行されれば、と思います。
なにより著者が同世代、さらには歳下まで見かけるようになりました。
私も負けじと研究と発信に取り組んでいかないと!と再認識させられました。
#研究の最前線 #島津氏 #朝鮮出兵 #偽使 #セルフプロデュース #読書きろく
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