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第112回 図書館を守るのはだれか

1、3万8千冊の衝撃

高知県立大学の図書館で、移転に伴って蔵書を焼却した、というニュースが話題になっています。

記事によると、複数所蔵しているものを除くと6695冊。この中には郷土史に関わるものや貴重書と見られるものもあるそうです。

基本的な論調は、焼却のほかに手はなかったのか、という批判的なものだと感じました。

2、冷静さがないと見失う実情

報道があってからすぐにニュースは拡散され議論が交わされています。

その中でも閻魔堂さんのnoteが注目を集めています。

古書店に10年以上お勤めの経験を踏まえて、最善ではないがやむを得ないものだと指摘しています。

その論旨は
処分されたものでも、デジタルで公開されている資料や情報が古くて価値が低いものなど一応の代替手段が用意されており、

図書館司書など、適切に優先順位を判断できる人の手が加わった処置であることを冷静に指摘されています。

これを受けて、紙の資料の保存性が高いこと、デジタルデータの再現性が不十分なことをもって批判する意見も少なくありません。

しかし、私自身は閻魔堂さんのnoteにもあるように

メディアが無責任に

だれかがなんとかしろ

と声高に言うことには嫌悪感があるので本件については高知県立大学の手法を批判する気にはなれません。

3、課題解決のための思考実験

それにしても公共図書館の闇は深いと言わざるを得ません。

高度経済成長期とか、バブル期のような余裕はもう当分ないでしょうから、文化行政は右肩下りになってしまうことは疑うべくもありません。もちろん座して受け入れるつもりはありませんが。

どこの図書館も増え続ける蔵書には頭を悩ましているのは同じです。蔵書家が身辺整理で寄贈を望むケースも増えていますが、うちの町でもほぼ断っています。

購入予算も乏しい中、一般市民はベストセラー作品を無料で読みたがるし、一部の郷土史に関心のある層は、地域の図書館の役割として郷土史関連の蔵書が公開されていることを望みます。

今の財政状況では双方の需要を完全に満たすことは不可能でしょう。

それなら棲み分けてはいかがでしょう。

郷土史や学術的な資料は図書館ではなくて、博物館、大学に集約する。学芸員とか大学の研究者であれば、郷土史の資料の価値も正しく評価できますし、彼らの研究にも資することでしょう。
小さな町で博物館に総合的な機能を持たせられないのであれば、近隣の自治体と統合して設置とかできませんかね。

博物館や大学図書館でのレファレンスについて敷居を下げる必要はあるかもしれませんが。

そして、地域に残るのはベストセラーが少し遅れて配架され、無料で読める知的資源に先を争って群がる図書館。

そんなの必要ですか。出版業界の不況に輪をかけてるだけなのでは。

受益者には相応の負担をお願いする。その負担をまかなえるようなセーフティーネットを用意する。その方がよくはないでしょうか。

もしくは図書館の利用について少額でも負担を求めるとか。月100円でも多数
利用することでその額は大きくなり、図書購入費用や環境整備に当てることができます。

だれかなんとかしてくれ、と声高に呟いたところで流れは変わりません。変えたいなら自ら行動しましょう。

文化施策に理解がある政治家を選ぶとか。どうしても選挙では争点にならないんですよね。

だから私は微力ながらも歴史文化が尊重される社会を目指して発信を続けていきます。

#高知県立大学 #蔵書焼却 #図書館司書 #郷土資料 #受益者負担




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