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第113回 ボスの無理解もチャンスに変えたい

1、トップの不用意な発言から広がる波紋

なにかと話題の東京国立博物館で開催中の縄文展。

そのレセェプションでの宮田文化庁長官のコメントが話題になっています。

個人のブログからの引用で恐縮ですが

地方の資料館では、残念ながら土器がホコリをかぶっている。展示もひどい。今回の展示を参考にしてほしい。

引用元さんもすごく現場をわかってくださっているので、特に繰り返しませんが、

全国から優品美品を集められる日本一の国立博物館と地方の館を比べられても、と文化庁のトップの言葉に私自身は白けたことは記しておきます。

2、事件は現場で起きている

ひどいと言われた地方の展示ですが、近隣の自治体の学芸員が、創意工夫で町の文化財を発信していることを見るにつけ、関心することばかりです。

資料は、どういうアプローチをするかで全く違った魅力を見せてくれます。

少し前の生活を物語る民具をただ置いただけでは、面白くありませんが、実際に使われている映像を出したり、復元的な展示をすることで、今と違う生活をイメージできて、子ども達にも大人気です。

土器を作る体験活動はどこの資料館でもやっていますが、本物志向を極めていけば、地元の粘土を使って、当時と同じように混和物を入れて捏ね、野焼きを行なって製作することになります。

一方で、短い時間で少しでも縄文文化に触れてもらうために、焼かなくても固まる粘土でミニチュアを作るという方法も試みられています。

マニアックな歴史ファンに満足してもらうようにするのか、小学生に歴史に関心をもってもらうためのきっかけづくりに徹するのか。

地元の誇りになるように物語るのか、観客を呼び込めるような発信をするのか。

どこの学芸員さんも試行錯誤しながらいいものを作り出そうと汗をかいています。

大抵その努力を認めないのは現場を知らないお偉いさんです。

3、遠くの文化庁より、近くの協力者を頼ろう

文化行政のトップが言うべきこと、指導するべきことは

地方が個性的な展示ができるような仕組みづくりを後押しすることではないでしょうか。

何度もnoteで書きましたが、国、文化庁は保護一辺倒だった方針を活用へと舵を切り、補助金頼みではなく、自ら稼いで修復や維持管理を行う文化財のあり方を模索しています。

ただ、末端にいる者として感じることはどうも上滑りしているというか、国との距離感が遠くに感じてしまうというか。

ある人には

また東京のコンサルだけが利益を得て地元にはお金が落ちないんでしょ。

と言われてしまいました。

行政的な発想で作られたフレームに現場の実情を無理矢理当てはめても、なかなかほんとうにやりたいこと、現場が求めていることは実現できないと感じることも少なくありません。

批判を恐れずに言えば
行政の仕事は極力減らして、民間に任せていくべきでしょう。

いま構想しているのは、公共の資料館で所蔵している資料を有償で民間施設に貸し出すこと。

ホテルのロビーなどに美術品が飾ってありますよね。縁もゆかりもない芸術家の作品ではなく、すぐそばの遺跡から出土した資料を展示したっていいのではないでしょうか。土産物屋の一角のショーケースの中に資料があってもいいですよね。

もちろん行政ですから公平性を期すため、公募する形で、特定の企業に偏らないようにする必要があろうかと思いますが。

一品単位で、期間も3ヶ月とか短くして、賃借料も安価で提供すれば需要あるのではないでしょうか。

それこそ資料館の倉庫でホコリを被っているよりも、人の目に触れる方がいいと思います。ライトの当て方一つで資料の見栄えは相当違いますし、ストーリー性のある説明を行えば、きっと地域の魅力発信につながると思います。

自治体の資料館は歴史文化の総合窓口として機能して、展示ケースは街中に。

そんな未来を妄想していますが、現状ではもう少し時間がかかりそうです。

#歴史コラム #文化庁長官 #東京国立博物館 #縄文展 #保護から活用へ






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