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初めての整骨院でえっちな声を出してしまった話

※下品です※

 すばらしい記事を見かけた。

ごきげんよう
私は何年も首凝りに悩まされているにもかかわらず、
整体に行ったことがない者だ
私がなぜ整体に行かないのかと言うと…
オホ声を出してしまいそうで心配だからだ

【検証】重度の首凝りが整体に行ったらオホ声を出してしまうのか!?

 すごい。凝り固まった身体を強引に解きほぐされるのは気持ちがいいが、そこで同人音声めいた下品な嬌声を危惧するのは天才の発想か、あるいはX(Twitter)のやり過ぎのどちらかだ。まぁなんにせよ、オホってしまったか気になる方は、記事本文をお読みいただきたい。

 それはそれとして、私も三年前の今の時期に、人生初の整骨院通いを体験したことがある。朝起きた際に首に違和感があり、寝違えたかな?と首を庇いながら生活していたら業務中に突然痛みが激しくなり、一度横になったらもう起き上がれないくらいに首周りの筋肉が硬直してしまっていた。激痛に次ぐ激痛、首を動かすはおろか上半身もまともに動かせないという、今時の食玩フィギュア以下の可動域にまで追い込まれてしまった私は、業務時間内にもかかわらず、職場から最も近い整骨院に泣きつくことにした。

 午前中の早い時間に電話したのが功を奏したか、今からでも大丈夫ですよと仰っていただき、職場から徒歩5分の院まで歩く。まぁ、通常“徒歩5分”の道のりに2倍近い時間をかけてしまったわけだが、整骨院まで辿り着いたらこっちのもの。清潔感ある受付で予診票を記入、会員証を作り、5分ほど待たされて施術室に呼び出される。

 先生に念入りにチェックされて曰く、私の病原は首ではなく、「右肩」の筋肉が広範囲に硬直してきっており、その異常が首や背中まで達していた、とのこと。これまでの凝り方は珍しいらしく、結構通っていただく必要があるかもしれませんね~、と若い施術士のお兄さん。売上を上げるためのセールストークかもしれないが、こちらはもう痛くて痛くてたまらないので、それから解放されるなら多少の金額と時間も惜しまぬ覚悟。一思いにやってくれぃ!と身体を預けることにした。

 整骨院でお世話になったことがある方ならご存じだと思われるが、施術はわりとハードだ。整骨院の施術士が他の整骨院のお世話になっている、なんて笑い話があるが、大の大人の筋肉が疲労するレベルの力が、自分の身体に加えられる。肩と首の筋肉を解すために、強い指圧が加えられる。最初こそ心地よさが勝ったが、場所によっては激しい痛みが襲うこともあり、いかに自分の身体が凝り固まっているかを実感せずにはいられない。

 5分か10分ほど施術をした後、担当してくれていた施術士のお兄さんが「かなり“キ”てますね……」と渋い顔をしていた。さっきまでびっくりドンキーのハンバーグがどうとか、整骨院に通う小学生たちに『無限列車編』のネタバレをされて観てないのに結末を知っているだの軽快なトークを飛ばしてくれていたお兄さんの顔から、笑みが消えていた。

 「少々お待ちいただけますか」とお兄さん。上半身裸のうつ伏せで待たされる俺。院内には優しいヒーリングミュージックと、隣のベッドでうめき声を挙げる男性。もしかして、処刑を待つ咎人の心境とは、こういうものなのだろうか。というか、隣の施術ハードすぎないだろうか。それと同じ“痛み”を自分も受けるのだろうか。ただでさえ固まった筋肉がさらに強張ってしまう緊張感の中、「お待たせしました~」と声が。ふと頭を上げると、視線の先には先程のお兄さんに加え、もう一人すっっっっっごい美人のお姉さんがいた。

 「彼女は針のスペシャリストでして~」とニコニコ笑顔のお兄さん。なんでも、私の右肩はかなり硬直が進んでいて、人の手を加えるのみでは解きほぐせないという。そのため、まずは極細の針を刺し、そこから電気を流して柔らかくしよう、というものだった。生まれて初めての整骨院にして、生まれて初の針治療を受けるという、初体験の二段重ねがやってきた。

 お姉さんの説明を受けながら、ハイ、ハイとただ頷くうつ伏せの成人男性。なにせ痛みに思考を支配されていたので理屈はよくわからなかったが、何にせよ今から背中に針を刺されて電流を流されるということだけを把握し、「なんか最近映画でこういう拷問観たなぁ」とぼんやり思った。隣のベッドでは未だ激しい施術が続いていて、男性の苦悶の声が恐怖を駆り立てる。マジか、刺されるのか、背中。わずかに心拍が跳ね上がるのを感じる。

 そんな状態を悟ったのか、「できるだけリラックスして、身体をだらんとさせるイメージで寝てみてくださいね~」とお姉さんが声をかけてくれた。女性でも、施術士のように体力の要るお仕事をなされているんだ、立派だなぁ、今日お昼何食べようかなぁ。針のことを考えないよう現実逃避を始めた私だが、流石はスペシャリスト、針はいつの間にか刺されていて、その間一切の痛みを感じなかった。元々の痛みでマヒしていたのかもしれないが、それにしても凄いことだ。第一関門突破。

 問題は、電流だ。「微弱である」と説明はされていても、なんだか恐ろしい。初めてだからショックを想像できないし、緊張するなと言われてもどうしても意識してしまう。「これから電流を流していきますので、気持ち悪さを感じたりしたら、仰ってください」とスペシャリスト様。何か装置を動かしている音。来た。ついに来た。気分はジェットコースターが頂点に昇った時のアレである。ここから来る恐怖を受けとめようと、身体につい力が入ってしまう。来るか、来るか……?と思っていると、「ピリッ」と小さく小突かれたようなインパクトが。それが一回、二回と等間隔で訪れて、ちょっとずつその小突きが強くなっていく。あっ、これ、気持ちい

ふっ……♡くぅ……♡ぁあ”ッ……♡

 マジか。よもや20数年生きてきて、こんな声を出す日がくるなんて。身体は未知の快感に震え、サロンシップのCMが如く電流が凝り固まった筋肉に照射されるイメージ映像が脳を駆け巡る。電流による痛みは一切なく、むしろ温泉とかにあるピリピリするお湯の、あのくすぐったさに近い。それが絶妙な感覚で背中に走り、先程までの痛みが嘘のように悦びに変わっていく。

 「大丈夫ですかー?痛くないですかー?」と施術士さん。今は、その優しい声色さえも嬉しい。なにせ電流を受けた私は感度3000倍になってしまったのか、どんな刺激も寿ぎであり、祝福であった。痛みが嘘のように消えていく、不思議体験。時間にして5分と満たない治療だったが、言い表すなら「至福」と表すべき5分間だった。

 治療を終えて身体を起こすと、ピクリとしなかった首が左右に動くようになっていた。まだ右側を向くのがぎこちないが、それでも大きな進歩だ。いつの間にか戻ってきていたお兄さんも私の可動域の復活に驚き、お姉さんはどこか得意げに見えた。すげぇ、針治療、すげぇ。

 完治にはまだまだ回数をこなさなければならず、次はいつ来られますか?と受付で言われたが、私は即座に「明日も来ます!」と宣言した。会社に確認もしていないが、ひとまずは肩の完治が最優先であり、そして何よりあの針治療を受けたくて、反射的にそう言ってしまった(意外なことに上司は快諾してくれた)。

 2回、3回と治療を受け、すでに針治療への恐怖は消え去り、むしろ「早く!早く電流を!!」と最悪の調教が完成していた。そしてそれは効果てきめんだったのか、一週間の治療により私の肩はかつての柔軟さを取り戻し、なんやかんやあって身体全体の疲れも取れ、眠りの質もよくなった。整骨院、最高!!となるには余りある体験だった。

 あれから数年経って、整骨院のお世話になるような深刻な状況には至っていない。幸福なことだし、先のnoteを読むまでそのことを忘れていたため、このことを思い出した際はまさしく「矢木に電流走る―」である。そうそう、えっちな声出したことあります、俺。

 あとまったく関係ないけれど、日ごろお世話になっているDLsiteさんが27周年ということで、まったくめでたい限りである。『【ASMR】針治療でヨガっちゃう!?♡成人男性はじめての嬌声にメロメロ♡【KU100】』みたいな音声があったら間違いなく僕なので、社の総力を挙げて応援してください。同人音声御殿建てたいので。どうぞよろしくお願いいたします。

いただいたサポートは全てエンタメ投資に使わせていただいております。