シロクマの清掃員 第五話

「なるほど・・・。それは確かに心配ですね。」
駅構内の待合室。私は昼間の出来事全てを少年に話した。
「まぁでも、結局俺も部外者だからな・・・。考えたってどうしようもねぇとは分かってんのさ。」
そう言った途端に、私の脳裏を昔の記憶がよぎる。

2015年9月。私はこの日駅での清掃員となった。本職の方はとうに定年を迎え、退職金等々もあって、本来ならもう既に死ぬまで働く必要など無い。毎日食べて寝るだけの生活。初めの方こそ天国であった。しかし、それを続けたある日、私は途端に心が痛んだ。このまま社会に貢献する事もなく、ぶら下がったままでいいのか。
清掃員の業務は単純なもので覚えるのも苦労はな無い。私はその日の内にあらかたの業務を覚え、明日から独り立ちとなった。そんな日の夜。
「いやぁ、それにしても高齢の方って聞いてたからどんな人かと思えば・・・。覚えも早いし、即戦力ですよ〜。」
「いやいや、こんくらいだったらいっつもやってる掃除とあんま変わらないからさ。」
そんな談笑をしながら、私は教育係の青年と共に、1日の締め作業である掃き掃除のためホームへと向かっていた。その時、
「あれ、あの子迷子ですかね・・・。」
そう言いながら青年は背伸びし、視線を遠くへと向ける。釣られるように私も振り返った。そこにはまだ1〜2歳であろうか、歩き始めて間もないような子供がホームの上を徘徊している。
「ほんとだ、え、親とか近くに・・・。」
私は咄嗟に周りを見渡す。そうした次の瞬間、
「あ!おい!危ねぇ!!」
青年が声を荒げた。


制作 東京制作部 田中和真
この度は『シロクマの清掃員』をご拝読頂きまして誠にありがとうございます。こちらのページは毎週土曜日の更新となります。何卒これからもよろしくお願い致します。

今回は満を辞して第五話の方を書かせていただきました。来週に関してのお知らせです。来週から田中は某夜勤のバイトに行くことになってしまいまして・・・。また休んでしまうことがあるかもしれないのですが、できる限り頑張って更新していきますので、どうかよろしくお願いします。もし、この文章が気に入って頂けたのなら、スキやフォローもよろしくお願いしま〜す。


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