トマトと時間を交換
眺めのいい景色の見える
長めのベンチの端っこに座るわたし
数分後真ん中に座った男性
自然と「どこからきたの」と話が始まった。
昨日、刑務所から出てきたらしい。
昔ニュージーランドやペルーアルゼンチンへ、遠洋漁業に行っていた話。
家を建てた話。
娘さんが私と近い年齢だという話。
今仕事を探していて今日ハローワークに行くという話。
船のエンジン関係のお仕事をしていた話。
飛行機のジェットエンジンの話。
根室や釧路にも漁に出ていた話。
なんで刑務所に行ったのかという話。
飼育員にもなりたかったという話。
動物を守るために取った行動故刑務所に行ってしまった話。
しゃべった後には毎度くしゃっと頬を縮ませ海の方を見て笑う。
なんか、わたしは時々 ‘‘こころが寂しいと‘‘叫んでいるような顔や声をしている人から話しかけられる。(気がする...私が勝手に感じているだけですが…)
今冬は、一人でご飯屋さんに行ったときに食後、 カフェラテ一杯おごるから話を聞いてもらえませんか?と
お母さんより少し上の年の方の「恋」の話を聞いた。いけない関係だというコト。先方には奥さんがいるというコト。先方は若い方だから、若い意見を聞きたかったみたい。人生のことや、わたしの感じたことをただ話し合った。
もう二度と会うことはないと思うが、元気に暮らしているだろうか。
最後には「聞いてくれてありがとう、すっきりしたよ」と
今日会った方も、きっと聞いてほしかったのだろう話したかったのだろう。
ただ、ただ、。
「あ、すみません。そろそろ行きます。」と言うことは簡単だけれども
そうでなく
ただ空気のように、相手が発した言葉に反応する時間がとても心地よい。
思ったこと感じたことに反応する。地平線上にスーーとその人の人生の一部を書き記すようにして想像する。そう生きてきたのね。うんうん。
で、今それを私に話しているのね。
なんとも不思議な気持ちになる。
ただ海を眺めていた時間が、誰かの人生の一部と重なる。そんな感じ。
必然的に作り出したわけでなく、ただふっと現れた時間を忘れないようにここに書いてみた。
最後に
その時間と交換でバックにあった中くらいのサイズのトマトひとつを
刑務所では小さくカットされたトマトしか食べられなかったからうれしい
トマトは逆から呼んでもとまと
と微笑み
さようなら。
どうかよい一日を。
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