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【ショートストーリー】うさぎ組の恋愛事情

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小説とエッセイのはざまのような文章を書いています。恋愛事情をあれやこれやと。
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#忘れられない恋

チープなドラマの主人公になった

 1週間前の出来事を思い出してみる。 道端で突然声をかけられた。 「こんにちは。」ショートカットでこざっぱりとした、でもどこかしら気品の漂う妙齢の女性を見つめ返して、どこであったのか頭の中で記憶を探した。「夫がお世話になってます。」笑っているような怒っているような曖昧な表情の女性は、そう言葉を発してから、駅の方へ歩き出した。 心当たりがあるとすれば、「夫」と言っているのが、多分私が付き合っている彼のことだと結論を出すまで、頭の中が混乱して、5分ほどかかった。寝耳に水とはこん

相手に求めても無駄なのです 自分の機嫌は自分で取ろう

 もう2時間にもなる。私の目の前でジョッキのビールを握り締めている友達は、多分3回目であろう同じ話に入りかけている。 「やっぱり、おかしいよね。仕事が不規則だからって、次会う日がわからないとか。この間だってさ、2週間も前から温泉行くって約束してたのに、3日前になって、やっぱり無理だって。私のことなめているとしか思えないよね」彼女は、残りのビールを飲み干し、お代わりを注文した。 「家にだって入れてくれないし」「この前だって、たったの2時間だよ。会ったの。」「いつも私の家にくる

終わらない距離感を壊したくないから、今日も私たちは日常を過ごす

 朝起きて、まだ寝てるらしい彼の顔を見つめながら、平和な朝を幸せに思った。起こさないように、そっとベッドを抜け出し、シャワーを浴び、昨夜の余韻を洗い流す。  部屋に戻ると彼はまだ目をつぶっていて、もう一度ベッドに戻ろうかちょっと悩んだけど、結局、仕事にいくためのシャツとスカートに着替えた。  「ご飯でも食べようよ」彼からの提案で、私の家に集まったのは、昨夜の21時。私たちの集合時間はたいてい遅い。 「何作る?」  もう夜も更けていくという時間だけれど、テーブルにはまだ、

食事をすることとセックスは似てる

(上のショートストーリーもよかったら・・・) 恋愛対象に何を求めるかと言われれば、迷わず「食の好み」と答える。肥満なのか、鍛えているか、薄毛なのか、フサフサなのか、この年になるとそんなことはどうでもいい。ルックスなんて、眼と鼻と口がついていれば、大差ないとさえ思ってしまう。そんなことで条件をつけるぐらいなら、私が見たいのは、生きてきた人生と価値観だ。  20代そこそこは、価値観だってジェットコースターのように変化する年頃で、影響されることも影響を与えることもできる。でも、

東京の空

気がつくと私は、いつも R のボタンを押している。 オフィスは7Fにあるのに、そのボタンを素通りして、Rを押すのは、もはや習慣化しているのか、逃避なのかもわからない。 オフィスの入っている古いビルは、屋上がある。それまで、8年の間、このビルで日常のほとんどを過ごしているのに、知っていたのは、自分のオフィスの空間だけだった。 平日の昼間に屋上の鍵が空いていることを偶然知ったのは、確か2年前だ。 Rのランプがついて、開いたエレベーターのドアの先に重い扉を開けると、そこにある

「もしかしたら」を重ねたら

 カキフライが嫌いだ。カキフライと言うよりも、牡蠣に火が通った食べ物が嫌い。 それなのに、今日は、カキフライが無性に食べたい。そんな気分になって、仕事の手をとめた。大体、いつも仕事中に思考の邪魔をするのは、自分の食欲だ。「お腹がすいた。」と言うゴングが静かに鳴らされ、頭の中は、それまで考えていた新規顧客の獲得方法や新しい事業の構想から少しずつ、食べ物に浸食されていく。  しばし、考えた末、頭の中に浮かんでいるのは、恵比寿にある古い定食屋のカキフライだということに気づいた。定

40歳だって恋をする

 寒い夜だから、赤身の肉と相性の良い美味しい赤ワインが飲めたらいいな。そんなことを思いながら、待ち合わせ場所に向かった。  シンプルな薄い黒のニットに、織りが気に入っているロングのスカート。細身のショートブーツ。ノンブランドの小ぶりの茶色いレザーバッグ。アクセサリーはごくシンプルに。リングは、グレーに光る天然石がついた細いゴールドを。コートは極シンプルなオフホワイトを選んだ。持っているアイテムから、なるべく当たり障りのないチョイスをしたのは、知り合ってから初めてのデートだか

スパイスな夜

 「小説家は、毎日波乱万丈な人生じゃないとやってられないね」唐突にエビアンを飲みながら、彼が呟くので、「そうなのかなぁ」と考えてみる。 考えてみれば、平和で幸せぼけしているときなんて、頭がお花畑のような美味しそうな料理の投稿ばっかりしていて、言葉なんて何も紡げない。  ただただ、「幸せだー」しかなくて、半年くらい前の私の投稿は確かにそうだった。 女子なんて、案外単純なものだと思う。目の前の人が大好きで、目の前の人が大好きでいてくれることを確信できれば、仕事がうまくいってな