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【ショートストーリー】うさぎ組の恋愛事情

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小説とエッセイのはざまのような文章を書いています。恋愛事情をあれやこれやと。
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終わらない距離感を壊したくないから、今日も私たちは日常を過ごす

 朝起きて、まだ寝てるらしい彼の顔を見つめながら、平和な朝を幸せに思った。起こさないように、そっとベッドを抜け出し、シャワーを浴び、昨夜の余韻を洗い流す。  部屋に戻ると彼はまだ目をつぶっていて、もう一度ベッドに戻ろうかちょっと悩んだけど、結局、仕事にいくためのシャツとスカートに着替えた。  「ご飯でも食べようよ」彼からの提案で、私の家に集まったのは、昨夜の21時。私たちの集合時間はたいてい遅い。 「何作る?」  もう夜も更けていくという時間だけれど、テーブルにはまだ、

東京の空

気がつくと私は、いつも R のボタンを押している。 オフィスは7Fにあるのに、そのボタンを素通りして、Rを押すのは、もはや習慣化しているのか、逃避なのかもわからない。 オフィスの入っている古いビルは、屋上がある。それまで、8年の間、このビルで日常のほとんどを過ごしているのに、知っていたのは、自分のオフィスの空間だけだった。 平日の昼間に屋上の鍵が空いていることを偶然知ったのは、確か2年前だ。 Rのランプがついて、開いたエレベーターのドアの先に重い扉を開けると、そこにある

「もしかしたら」を重ねたら

 カキフライが嫌いだ。カキフライと言うよりも、牡蠣に火が通った食べ物が嫌い。 それなのに、今日は、カキフライが無性に食べたい。そんな気分になって、仕事の手をとめた。大体、いつも仕事中に思考の邪魔をするのは、自分の食欲だ。「お腹がすいた。」と言うゴングが静かに鳴らされ、頭の中は、それまで考えていた新規顧客の獲得方法や新しい事業の構想から少しずつ、食べ物に浸食されていく。  しばし、考えた末、頭の中に浮かんでいるのは、恵比寿にある古い定食屋のカキフライだということに気づいた。定

40歳だって恋をする

 寒い夜だから、赤身の肉と相性の良い美味しい赤ワインが飲めたらいいな。そんなことを思いながら、待ち合わせ場所に向かった。  シンプルな薄い黒のニットに、織りが気に入っているロングのスカート。細身のショートブーツ。ノンブランドの小ぶりの茶色いレザーバッグ。アクセサリーはごくシンプルに。リングは、グレーに光る天然石がついた細いゴールドを。コートは極シンプルなオフホワイトを選んだ。持っているアイテムから、なるべく当たり障りのないチョイスをしたのは、知り合ってから初めてのデートだか